怜奈の予感
「そーね。一年間に満たない付き合いだったけど、ケンジが私を含めて別れた女性たちに感謝しているのなら、その女性を教えてあげてもいいわよ」
「もちろん七人の女性全員に感謝している。僕にとってその期間は、人生の宝物としてここに残っているからね」
賢士は自分と怜奈の左胸を指差し、細くて長い指を小さな胸に向けられた怜奈は『キュン』として、心に点った火種を慌てて吹き消した。
「クールなケンジが逢うの嫌がるの知ってたけどさ。桜の花びらが空から舞い降りて、ケンジと話す勇気をもらったの」
怜奈はほてった頬を膨らませ、唇を突き出して親指を下に向け、散った筈の桜の花びらが風に吹かれて円を描き、艶やかなピンクの絨毯を敷き詰めるのを披露した。
『春の風に歓迎されたか?』
賢士は東急ストアのカフェの屋根から天使が飛び立つのを視界の端に捉え、怜奈が時の流れを変えていると感じた。
「レイナ、誰なんだ?その気になる女性とは?」
怜奈は冬になって賢士が病的に落ち込むのを見て、自分が哀しみを抱え込ませていると別れたが、『恋のリベンジ』サイトに誘われて入会し、他にも六人の女性が春に賢士と出逢い、クリスマスの頃に別れた事を知った。
メンバーの女性たちは恋の悲しみと恨みを募らせ、賢士への愛しさと優しさも忘れていない。
『これは絶好のチャンスだ』
賢士は真剣な表情で怜奈にフォーカスしてお告げを待ち望み、まるで桜の花びらの上に立つ女神を崇めているみたいで、こんな愉快なことがあるだろうかと怜奈が微笑む。
「至急、恋のリベンジサイトのメンバーを招集して相談します。そしてケンジの理想の恋人と思われる女性と逢わせるかは、私たちで決めさせてもらうわ」
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