22-3 孫の顔を見るまでは

 その後も毎日、魔神の封印場所を探し歩いたが、一向に見付からない。

 そりゃそうだ。

 魔狼より遥かに強烈な魔獣がここにいます、なんてわかるくらいなら、誰だって近寄らない。

 五角形の魔法陣にしても、内側の五角形にしても、特に変化はない。

 もう10日にもなるが、毎日家に帰れるくらいしか取り柄のない仕事だ。

 何の役にも立ってないみたいなのに、きっちり金が入るのはいいことなのかもしれないが。


 結婚して以来、セシリアは毎晩俺の部屋に来るようになった。


 「ちゃんと眠れないと困りますから」


と言って、3日に2日は自分の部屋に寝に帰るが、正直、毎晩しなくてもいいんじゃねぇかと思ってる。

 ガキ作ろうってわけじゃないんだし、つうか、しばらくはガキは作らねぇって話もしたはずなんだが、セシリアが何考えてんのかわからねぇ。

 そりゃ、仕事で何日か家を空けるってんなら、その前後で来んのもわかるが、ちゃんと毎日帰ってきてんのに寂しいとかねぇだろう。

 ことの最中に、「私だけ…」とか「目移りしちゃ嫌です」とか、妙に独占欲を覗かせることがあるが、俺が浮気するとか心配してんのか? 心配になるようなことした覚えはないんだがなぁ。


 そんな話をレイルに投げてみた。もちろん、言葉の方は言わずに、俺が浮気しそうに見えるかってだけ。

 レイルからは、


 「僕が見る限り、君に浮気するような甲斐性なんかあるとは思えないけどね」


と、ありがたいんだかありがたくないんだかわからない答えが返ってきた。


 「じゃあ、なんであんなに心配されるんだ?」


 「そりゃ、君のこと好きだからだろ。

  元々、一緒に住むって時も“二度と娼館になんか行かないでください”とか約束させられてたじゃない。

  結婚したから、正当な独占欲を主張してるだけじゃないの?

  君だって、セシリアがほかの男とよろしくやってたら嫌なんじゃない? おんなじことだと思うけど」


 まぁ、そう言われりゃそうなのかもしれないが。


 「ああ、あとさ、君が無事に帰ってきてるのが嬉しいんじゃないの?

  魔神なんて、僕らが絶対勝てないような奴を探してるわけだし」


 「封印されてる魔神を見付けたって、戦うことにゃならんだろう」


 「もしもってこともあるし、わからないよ」


 「冗談じゃねぇ。

  俺はまだ死にたくねぇぞ」


 「孫の顔を見るまでは、だっけ?」


 レイルに茶化されて、その話は終わった。





 その夜、セシリアが部屋に戻った後、ふと喉が渇いて部屋を出ると、レイルの部屋の前で妙な魔力の気配を感じた。

 なにごとかと思って魔素を探るが、特に動いてない。

 何があったんだ?

 ドアを開けて覗いてみると、レイルがセシリアを抱き締めていた。

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