第2話 祖父 発見⁉︎

 真一は、早速称号の意味を考えていた。ステータスの【先駆者】を集中して見ていると、突然その思いに反応するかのように、称号の詳細が分かるようになった。


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称号

【先駆者】


 地上に出現した魔物を初めて討伐した者に与えられる


 効果として称号所有者のこれまでの経験からボーナス

 として適切なスキルが与えられる


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 俺は、驚きながらもそれを読んだ。


「やはり、「適応」を除いたスキルは俺のこれまで経験からくるものか。それにしても、あれは魔物か。何にせよ、倒せて本当に良かった。」


 真一は、改めて自らの幸運に感謝した。

 そして一通りステータスの確認が終わると、ふと辺りを見回した。先程のゴブリンが残した赤い石と手にナイフがあった。


 ひとまず、それを手に取ってみる。

 赤い石の方は、何に使うもののかも分からない。

 特に何も起きないし、後回しにしておこう。


 一方、ナイフの方は先程の戦闘の影響か少し歪んでいた。品質はあまり良くなさそうなことが分かった。しかし、今は非常事態である。武器が手元にあるだけで少し安心できる。


 真一は、ナイフのついでに赤い石も取り敢えず捨てずに持って帰ることを決めた。


 取り敢えず、気になることは調べ終わった。

 一息ついたところで俺は今、家に帰る途中であったことを思い出した。急いで帰らないとじいちゃんが心配だ。先程の地震もそうだが、特に魔物のことが不安だ。


 俺は、ゴブリンから奪った剥き身のナイフをもっていたタオルに包み手に持って走り出した。



・・・・・・



 しばらくして、家に着くとそこには何やら人集り《ひとだかり》ができていた。恐る恐る近づくとなんと近所の人が集まっているようだった。


 人混みをかけ分けて近づいて初めてそれに気付いた。

 そこには、なんと大きな穴が開いていた。土・だ・ら・け・のうちの庭にあんな穴が開くような地下空間はない。真一は、嫌な予感がした。もしかして、あれはマンガや小説で良くあるダンジョンなのではないか。先程の魔物はここから出てきたのではないかという思いが過ったよぎった。


 しかし、まずは姿の見えないじいちゃんの安否を確認することが先である。そのため、うちの隣に住む山田のじいちゃんに話しを聞いてみた。山田さんは、本名を山田 勝さんと言ってじいちゃんの古くからの親友である。


「ねぇ、山田さん。俺、今ランニングから帰って来たばかりなんだけど、何があったの?」


「おお、真一くんかい。大丈夫だったかい?さっきの地震でせいか、真一くんの家の庭がすごく光っててね。今は光も収まったみたいだけど、気になってみんなで君の家の様子を見に来たんだよ。そしたら、庭にこんな穴が開いているからどうしようかみんなと話してたんだ。」


「そうなんだ。ところで、家のじいちゃん見てない?」


「景さんじいちゃんかい?それならさっき、中家の中に入って行ったよ。わしが確認してかるからみんなは心配しないで帰れって言ってね。私は危ないから他のみんなが入らないように見張っているんだ。」


「っ、、、‼︎‼︎ 山田のじいちゃん、他の人は絶対に入って来ないように言っておいて‼︎俺、助けに行ってくる‼︎」


「おい⁉︎真一くん待ちなさい‼︎‼︎」


 俺は、話しを聞くや否や山田のじいちゃんの静止を振り切って、急いでじいちゃんのあとを追って穴に入った。じいちゃんは、まだ魔物が出てくるかもしれないということを知らない。いくら自分より強く武術に長けてたけている祖父であっても危険が無いわけではない。


「行っちゃったよ。まずいな。本当に、最近の子は最後まで話を聞かないんだから。まだ景さん、中に入るための準備しに家にいるっていうのに。」




・・・・・


 穴の中に入って見ると急に外の光が遮られ、薄暗くなった。しかし、何故か不思議と灯りをつけなきても中を見ることが出来た。さらにそこは、異常な程に静かな空間が広がっていた。


 自然にできたにしては、不自然な程に広くまた壁や床、天井は硬・い・石・で出来ているようである。


 真一は、ここがダンジョンではないかという思いが強くなった。不安を感じながらも、祖父を救出するため先を急いだ。


「じいちゃんなら大丈夫だ。早く合流しよう。」


 落ち着くためにも必死に自分に言い聞かせた。


 しばらく道なりに進むと、道が分岐していた。

 壁に印をつけて迷わないようにしつつ、道をできる限り暗記していった。


 すると、先の方からピタピタと水の音のような音がして来た。念のため警戒しながら、近づいてみるとそこにはアメーバ状のスライムようなものがいた。


「どうするか?」


 彼は迷っていた。戦うか、それとも逃げるか。

 迷った末に彼は、直・感・にしたがって戦うことに決めた。

 そのためにも、まずは相手を観察することにした。


 ゆっくり動くスライムを警戒しながら、真一は慎重に十分な距離を取りながらそれの動きをみた。


 魔物であることは、確かであるがそれ以外ないも分からない。動きはゆっくりであり、素早くない。


 とりあえず、アニメやマンガのスライムが持っていそう消化の効果が無いか確認することにした。すぐに逃げることを視野に入れつつ、ズボンに入れたポケットティッシュをスライムに投げてみた。


 すると、スライムはポケットティッシュを取り込んで少しずつ溶かし出した。どうやら、スライムは消化の力をもつようだ。しかし、その消化速度は非常にゆっくりであった。


 消化がこの速度であるならスライムに勝てるかもしれない。真一は、ナイフを取り出して念のために包んでいたタオルを手に巻いた。少しでも防御力を上げるためである。


 そして、素早くスライムに近づいてナイフで斬りつけた。すぐに距離をとり、スライムの様子を確認した。どうやら効果はあるようで、少しだけ体積が減っていた。


「ダメージが入った。」


 安心したのも束の間、スライムは突然丸くなりだした。

 警戒を強める真一、すると次の瞬間スライムから水の球が飛んできた。咄嗟のことでかわしきることがてきずにタオルを巻いた手に当たってしまった。


「くそ‼︎」


 思わず、声をあげながらタオルをとり投げる。

 タオルをよく見ると、どうやら少し穴が開いていた。

 スライムはものを消化する力をもった水球を飛ばすことで遠距離攻撃ができるようである。


「マジかよ。」


 その後、真一はスライムの水球を回避することに専念した。しばらくすると、スライムは水球をつくる際にしばらくの間丸くなる必要があることを見抜いた。

 この瞬間なら攻撃できる。また、水球を飛ばすときはスライムの表面が波打つが分かった。


「反撃の時間だ。」


 真一は覚悟を決めた。

 そして唯一の攻撃手段であるナイフを使ってスライムの隙をつき、ヒットアンドアウェイで攻撃する。そのまま、順調に攻撃を続けた。


 しばらくするとスライムは動かなくなり、そして光を放って消えた。後には、ゴブリンと同様に真っ赤な魔石が残っていた。


「ふー、危なかった。」



 無事、スライムに勝利することができた。

 無傷なことに安堵しつつ、スライムの動きと対処法を頭に入れた。


 その後、溶けているだろうナイフの状態を確認した。すると不思議なことにナイフは、あんなにスライムに攻撃したにも関わらず少しも溶けていなかった。


「何で?」


 念のため、先程投げ捨てたタオルを見る。

 確かに穴が空き、溶けている。


 ステータスが関係しているのではないかと思い開いて見る。


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個体名  上杉 真一

種族   人

年齢   15歳

性別   男

職業   学生

レベル  1

状態   正常

HP    95/100

MP    40/40


スキル  適応

     槍術

     体術

     馬術


称号   先駆者


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 少しHPが減っていること以外におかしいところは見当たらない。原因はよくわからないままだった。

 しばらく考えていると後ろの方から音がする。


「おーい‼︎|真一、どこにおる‼︎返信をせい‼︎」


 祖父の声が聞こえてきた。

 何故入り口の方から声がするのかと驚きながらも俺は返事をした。


「じいちゃん、こっちにいるよ‼︎」


 合流するため、来た道を戻るとそこにはしっかりと装備をつけて槍を持った祖父がいた。


「良かった。じいちゃん、無事だったんだ。」


「無事も何も、わしは大丈夫じゃ。けれど、おまえは何で穴に入ったんじゃ?」


「じいちゃんが心配だったからだよ‼︎」


「わしが心配?」


 その後、帰りながら話しを聞いてみると、どうやら俺が勘違いして穴に入ったのを、山田さんから話しを聞いた祖父が急いで追いかけてくれたようだった。


「なんだ、勘違いだったのか。」


 思わず、ホッとして力が抜ける。


「真一、まだ気を引き締めよ。この穴はいろいろおかしいぞ。その上、異様な気配を感じるのぉ。急いで出るのじゃ。」


「わかったよ、じいちゃん。」


 そういうと、2人は急いで穴から脱出した。

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