第3話 ダンジョンから帰還と祖父の謎
無事に穴を脱出した2人を、隣に住む山田さんが待ち受けた。どうやら、他の人は家に帰ったらしい。
「2人とも大丈夫だったかい⁉︎」
「今、戻ったよ。心配かけてすまんかったなぁ。」
「山田さん、ごめんなさい。話し聞かずに飛び出して。」
「気にしないで、怪我がないなら良かったよ。じゃあ、2人の無事も確認できたし、家に帰るよ。穴・の・話・し・は、後で聞かせておくれ。」
山田さんは、そう言うと隣の自宅へと帰っていった。
「心配かけたみたいだし、後でお礼言いに行かないと。」
「わしも一緒に行こう。」
そんなことを2人は話しながら家に入る。
家の中を見るとは地震のせいで荒れに荒れていた。
「うわー、酷いことになってるね。」
「穴ができたせいで、わしも片付ける暇がなかったからのぉ。」
「とりあえず、今日は祝日で学校休みでよかったよ。時間を気にせず、片付けができるね。」
「窓が割れてなくて助かったな。3月とはいえまだ寒いからなぁ。」
そう言いながら二人は家に入り、片付け始めた。
幸いにも棚や家具は固定していたもあって倒れていなかったが、食器類や本などが散乱していた。
時間こそかかったが、何とか元に戻すことができた。
そして昼食後の休憩のときに、俺は祖父に魔物やあの穴についての経験を話すことにした。
二人はちゃぶ台の境に座布団に座った。
まず、俺はランニング中に魔物にあったこと、レベルが上がりステータスを手に入れたこと、そして穴の中で魔物と戦ったことを説明した。
信じてもらえないのではないかという思いもあったがすべて正直に伝えた。
どれだけレベルや魔物のことが理解してもらえたか分からないが、じいちゃんは俺の話しを最後まで黙って静かに聞いてくれた。すると、ゆっくりと俺の方を見て口を開いた。
「よく頑張ったな、真一。本当におまえが無事でよかった。」
あぁ、、、何故だろう理由がないのに涙が溢れたこぼれた。
そんな俺の頭をじいちゃんはただ黙って優しく撫でてくれた。
「落ち着いたか?」
「うん。ありがとう。」
俺はティッシュで涙を拭ながら、そう言った。
「おう、若いのが気にするな。ところで、真一。おまえはこれからどうしたい?」
じいちゃんは、いきなり真剣な目をして俺に問いかけてきた。
「どうしたいってどういうこと?」
俺は、突然の質問に困惑しながら聞き返した。
すると、じいちゃんは息を一つ吐くと目を瞑ってつむってもう一度言った。
「今なら、この後起きるであろうことに関わらないで今までと変わらない生活を過ごすことができるかもしれぬぞ。」
「もう一度聞こう。真一、おまえはどうしたい?」
「もしかして、じいちゃんは何か知ってるの?それなら、教えてくれ。俺は知りたい。今、何が起きているのか。俺は今日、魔物を倒した。例え、これから黙って普通の生活を送ったとしても今まで通りなんて無理だよ‼︎」
俺の気持ちを正直に伝えた。
しばらく無言の時間が過ぎた。
じいちゃんは目を閉じて、何やら深く考え込んでいる。
そんな姿に見て真一も思わず唾を飲み込んだ。
「おまえの覚悟はわかった。じゃが、話しの前に山田さんのとこに行くぞ。」
そう言い、じいちゃんは席を立つと玄関に歩いていった。
俺は黙ってそれに従うと二人で隣の山田さんの家へ向かった。
となりの家に着くと、山田さんは俺の方を向き少し驚いた表情を浮かべたが、俺たちを心良く家に迎えてくれた。
「おっ、真一くん、よく来たね。」
「山田さん。さっきは、ご心配をおかけしました。」
俺は改めて頭を下げた。
「気にしないで良いよ。年寄りのお節介だからさ。さぁ、二人とも寒いだろ中に入って。」
じいちゃんと俺は進められるがままに中に入った。
通されたのは、庭のよく見える和室の部屋だ。
炬燵に入り、冷えた足を温める。そして、ふと辺りを見回した。何故だろう、何度も来たことがある部屋なのはずなのに、その日は何故か不思議な感じを覚えた。
「どうぞ。」
山田さんは、俺たちにお茶を出してくれた。
それを一口飲むと、じいちゃんは俺に魔物や穴での出来事をもう一度説明するように言った。俺は少し躊躇ったが、言われるがままに山田さんへ説明した。
俺の説明が終わるとじいちゃんが話し出した。
「やはり、あの穴はダンジョンでしたか。」
「あぁ、やはりあの穴はダンジョンじゃったよ。」
なんだか、二人は納得したように話しているがこっちは何がなんだか分からなかった。
「じいちゃん、ダンジョンってなんだよ‼︎」
俺は思わず声を上げた。
すると、じいちゃんはダンジョンについて話してくれた。
「ダンジョンとはな。魔物や罠が溢れる洞窟のことじゃ。奥には宝が用意されておる場所のことであるの。」
「正確に言うと、洞窟や森といった自然だけでなく、古代の遺跡や塔といった形のダンジョンも存在するよ。また、魔物や罠はダンジョンに眠る宝を奪いきたものを拒むためのもので、特に魔物は入ってきた者を容赦なく襲う習性があるんだ。」
「そして、庭に開いたあの穴はな。どうやら、そのダンジョンのようじゃ。」
俺は、まずゲームやマンガを見たことがなくテレビもニュース以外あまり見ないじいちゃんの口から「ダンジョン」なんていうワードがでてきたことに驚いた。
そして、同時に1つの疑問を抱いた。
なんで、じいちゃんたちはダンジョンにこんなに詳しいのだろう。
「何でじいちゃんたちは、ダンジョンに詳しいの?」
すると、じいちゃんたちは黙り込んだ。
しばらくすると、山田さんは俺にゆっくりと教えてくれた。
「真一くん。君は異世界って聞いたことがあるかい?」
「それは、知ってるよ。異世界って、こことは違うもう一つの世界のことだよね。」
「そうじゃ。じいちゃんたちは、異世界であるラオリディアと呼ばれるところからこの世界地球に来たんじゃ。」
「えっ、、、」
想像していない答えだった。まさか、うちのじいちゃんと山田さんが異世界人だったなんて思わなかった。まだ、うちの家系が陰陽師で世間で妖怪と呼ばれる魔物と戦ってたとかの方が信じることができる。
しかし、真実は異世界人であった。
「じいちゃんと山田さんは、異世界人なの?」
「正確には君のじいちゃんである景さんじいちゃんと僕たち夫婦だけどね。」
山田さん夫婦ということはつまり、9年前に亡くなった山田のおばあちゃん(京子さん)も本当は異世界人だったのだ。
「えっと。じいちゃんは、何でこの世界に来たの?」
当然の疑問である。なぜ、異世界からこっちに来たのか。
「それはな、、、」
そう言って、じいちゃんはわけを話しだした。
どうやらじいちゃんたちは、ある国で5本の指に入るほどの冒険者をしていたらしい。じいちゃんが前衛の槍を、山田さんが中衛で魔法を奥さんの京子さんは後衛で回復を担当していたらしい。そんなある日のこと、とある貴族の依頼で古代の遺跡の調査に赴おもむくことになったそうだ。後になって、その遺跡がどうやらダンジョンであることが分かったのだが、そのときは誰も気づかなかったそうだ。
そこがダンジョンだとは知らないじいちゃんたちは、3人でどんどん奥に進んでいったそうだ。ダンジョンの中には強い魔物や凶悪な罠が待ち構えていたが、3人は問題なかった。
ようやく奥にたどり着くとそこには、扉があったそうだ。罠がないことを確認しつつ、ゆっくりと扉を開けてみると急に光に包まれた。そのまま、3人は意識を失ったそうだ。
そして気がつくとどうやら、こちらの世界に来てしまったらしい。目を覚ました3人が辺りを探索すると山の中に一つの村を発見した。そして、道を聞くためにとある家を訪れた。
「その家がおまえのおばあちゃん、幸子の家じゃった。」
「君のおばあちゃん、幸子さんはね。言葉も通じない怪しい格好の僕たちを受け入れてくれただけでなく、居場所も用意してくれてね。あのときは、どうして助けてくれるのかと不思議だったよ。」
その後に分かったことだが、どうやら俺のおばあちゃんは初めて会った外国人のじいちゃんに一目惚れしたらしい。その結果、いろいろお節介をやいたて最終的に結婚したんだそうだ。
「まぁ、そんなこんなあって今僕たちはここにいるんだ。」
「そ、そうだったんだ。」
じいちゃんたちの秘密には驚かされたが、何故か、俺は意外とすんなり受・け・入・れ・る・ことができた。
「ところで何で、この世界にダンジョンができたの?」
「原因は、わしたちにも分からん。じゃが、あれがあっちと変わらないダンジョンであることと、魔物がダンジョンの外に出てきていることがわかった。」
「そこでね。真一くん、君には魔物と戦えるようにダンジョンに入って鍛えてもらおうと思ってるよ。」
「………。えっ、えーーーー‼︎‼︎」
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