何かが足りない、それが何かは分からない
「「パンダ、おかえり!」」
最終日、うさぎとくまが出迎えてくれる中パンダは得意げだった。
パンダは巻き寿司の作り方を大まかにではあるが、口頭で教えて貰ったのだ。
一週間人間と過ごしたパンダはパンダとしてのレベルが確実にアップしていた。
この経験を糧に絶対美味しい巻き寿司を作るのだとパンダは激しく意気込んでいた。
「まず、ご飯が温かいうちに酢を入れて混ぜるんだぞー!」
「「はーい!!」」
「お姉さんの為に美味しい巻き寿司を作るぞー!」
「「おー!!!」」
「巻き寿司というものは、ご飯に寿司酢を混ぜ、具材を巻くのです。」
「「はい!」」
「寿司酢ってなあに?」
「寿司酢とは、酢と砂糖を混ぜた甘い酢のことです。」
数時間後、、、、、
「うーん、。」
「だよねえ。」
「うーむ。」
3人は考えこんでいた。
作ったのだ。それを作ったけど、何かが足りない。何か味がピンとこない。それだけは分かるのだ。
結婚式まで準備できる時間はもう残り僅かだ。
「「うさぎ!!」」
うさぎがガクンと膝から崩れ落ちた。
「私、、。もうだめよ。サトシは結婚してしまうし、巻き寿司も、、私には何をやったら美味しくなるのか分からないの。」
くまとパンダはうさぎになんと声をかけて良いのか分からない。
自分達には料理の知識など無いし、サトシの結婚など到底止める事は出来ない。
「、、、ほら、お姉さんは分かってくれるよ。巻き寿司は無くてもうさぎは美味しいご飯を沢山用意してる。お姉さんを想う気持ちは伝わる筈だよ。」
「僕、もう一回人間になって巻き寿司のコツを聞いてくるよ!!」
くまとパンダの提案にもうさぎはビクともしない。
「ずっと、考えないようにしてたの。サトシが結婚してしまって、私の夢は無くなってしまったの。私、サトシと結婚する事が夢だったのに。お姉ちゃんの巻き寿司が上手く作れなくて、、もう嫌。もう嫌、、、。」
「「うさぎ、、、!」」
うさぎはとぼとぼと1人歩いて家に帰ってしまった。
連日の準備での疲れもあるのだろう。うさぎはどんよりとしている。くまとパンダはそれ以上声をかける事が出来なかった。
「何が足りないんだろうな?」
「ご飯が、何かピンとこないよね。」
「これでも美味しいけど、うさぎが求めてる味じゃないって事は分かるよね。」
「うーん、でもこれでも充分美味しいんじゃないかな?」
「そうだよね、、。でも、うさぎは納得するかなあ。」
「よし!やっぱり僕、もう一回人間になってくるね!」
「待つのじゃ。」
「「狸千人!!」」
狸千人がくまとパンダの前に立ちはだかる。
「パンダ、今日で全てが解決する。そのまま時を待て。ジッとしとれ。今日は物凄く良い事がおこるのじゃ。」
「「本当ですか!どんな事がおこるのですか?!」」
「それは秘密じゃ。だからうさぎも大丈夫じゃ。心配するな。」
狸千人が言うことは間違いない。くまとパンダはホット胸を撫で下ろし、家に帰ったのだった。
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