第3話

手術が終わって、エレベーターでベットに寝たまま運ばれてきた。

麻酔からはもう覚めたと、看護師さんは言っていたが、まだ静かに目を開けたまま、息子はこっちを見ていた。

怖がりの息子はなかなか先生が、声出してみようと言っても、出さずに、口の中に溜まった薄い血の色の唾をティッシュに、静かに吐いていた。

多分それが怖くて、喋りもしなかったのだろう。

その日は、そのまま時々唾をティッシュに吐きながら、寝たり起きたりだった。

あまり寝られなかっただろうが、朝には、流動食の水の様なお粥と味噌汁の病院食だった。

お腹が空いたのか、全部食べてまた眠り始めた。

昼間は看護師さんが見てくれるので。

私は家のことが心配で一度家に帰り洗濯や下の子と旦那の洗濯やご飯の用意をして、夜ご飯を食べさせて、下の2人を寝かせて、また病院へ戻るを繰り返した。

朝も一度家に帰って下の2人を出したら、病院に戻ってという感じだ。

旦那は仕事に行く以外は、ビールを飲んで、パチンコかテレビゲームしか出来ないのだというか、しないのだ。

私も、そこは心配だし不安だったので、頼みもしないし、怒らないよう、何もいつもと変わらぬ様に、やっていた。

長女は1番面倒見が良いし、次女も長女の言うことは聞いてくれたので、子供達に色々お願いしていた。

茶碗洗いも、洗濯畳も、お風呂洗いも何でも私と子供達とやっていたから、留守番は意外と大丈夫だった。日頃から、何もしない旦那だから、子供達はとても成長した。

もちろん、幼稚園を入る前から自分の物を片付ける事や、服を脱ぎ着する事、洗濯物は脱ぎっぱなしにせずに、きちんと汚れた洗濯物のカゴに入れるなど、普通に出来る様にしていたので、慌てる事はなかった。

1番心配だったのは、旦那が一人で出来ない事があった時に子供達に八つ当たりや、発狂や、2人を置いて実家に帰ってしまわないかが1番心配だった。

扁桃腺を取って10日紫斑などが出なければ、完治で退院だった。

息子は、最後の日はもう走り出しそうなくらい元気で退院出来た。

それからは、紫斑は出なくなった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る