第87話 侍3
そのとき、琴音の声が廊下にひびいた。
「ネグリジェ蒼汰。弓よ。弓を射なさい」
赤いネグリジェを着たネグリジェ蒼汰がゆっくりと前に出た。ネグリジェ蒼汰が歩くと、透けた赤いネグリジェのフリルが揺れた。ネグリジェのすそが、ひざの位置で舞った。
ネグリジェ蒼汰が弓に矢をつがえる。侍に狙いを定めて・・・矢を放った。侍が刀を一閃させて、いとも簡単に矢を切り捨てた。
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〔侍サイド〕
敵の
その人物はいびつに湾曲した不思議なものを持っていた。その湾曲したものを侍に向けると、おもむろに棒のようなものを当てがった。侍は、先ほどの
何の気配も前触れもなく突然、矢が侍に向かって飛んできた。恐ろしい相手だった。これほどまでに気配を消せる相手には、侍はいままで遭遇したことがなかった。
「でやあああ」
気合とともに侍は矢を切って捨てた。ギリギリのタイミングだった。侍の額から汗がしたたり落ちた。
〔侍サイド終了〕
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「下手ねえ。何をやってるの、ネグリジェ蒼汰は。下手くそ。こらあ、ダメ蒼汰。しっかりしろ」
琴音の叱責が廊下に飛んだ。
「パンスト蒼汰。あんた、そこで何やってんの。ボーと突っ立ってたらダメでしょう。さっさと剣で切りかかりなさい」
同時に明日香が怒声を送る。
パンスト蒼汰がいやいやという感じで侍の後ろにまわった。ネグリジェ蒼汰が新たな矢を弓につがえる。
蒼汰は二人の女性から自分が責められているように感じた。胃が痛くなった。思わず胃を押さえた。侍がこちらをチラリと見た。
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〔侍サイド〕
敵の二人の
また、何の気配も前触れもなく矢が飛んでくるはずだ。侍には次の矢を避ける自信がまるでなかった。いつ、矢が飛んでくるのか? 侍の緊張が頂点に達した。すると、黒い南蛮の僧服に頭にヒラヒラした鉢巻を巻いた人物が腹に手を当てて、こちらを見ている。南蛮の呪術にちがいない。
おのれ、卑怯な!
〔侍サイド終了〕
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