第88話 侍4
琴音がヒステリックに叫んだ。
「ワンピ水着蒼汰。あんた、何やってんの。あんたも参加しなさい」
赤いワンピースの水着を着た、ワンピ水着蒼汰が盾を構えて、ゆっくりと侍の前に立った。ワンピ水着蒼汰が動くと、水着の胸や肩ひものフリルが大きく揺れた。赤い水着から伸びた白い手足がまぶしく光った。
三人の蒼汰人形が持った弓、盾、剣が廊下の明かりに鈍く反射した。琴音が作った弓、盾、剣のいびつな形そのままに光が動く。ワンピ水着蒼汰の動きに合わせて、刀を正眼に構えた侍がゆっくりと後ずさった。リズムを取るように刀の先をゆっくり震わせていた。刀を打ち込むために、周囲との間合いを測っているのだ。
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〔侍サイド〕
すると、その人物が侍に向けて板を突き出した。奇妙な形の板だった。あの板は? 南蛮の板か。
そうだ。拙者が命を落とした去る天正3年の長篠の合戦で鉄砲よけに使われていた板に似ている。奇妙な形になっているのは、きっと板の隙間から鉄砲が打てるようにするために違いない。そうか、敵はあの奇妙な鉄砲よけの板の隙間から鉄砲で拙者を狙っていのだ。
くそぉ、飛び道具とは卑怯な!
侍はいつの間にか敵に囲まれていることを悟った。
後ろには、あの裸体の剣のおそろしい使い手がいる。前には、気配を完全に消して南蛮の弓を射ることができる、真っ赤な甲冑を着た人物が弓を構えている。横には、真っ赤な胴丸を着込んだ人物が鉄砲よけを侍に向けながら、ひそかに鉄砲で侍を狙っている。向こう側には、黒い南蛮の僧服を着て頭にヒラヒラした鉢巻を巻いた人物が、侍に呪術をかけている。
敵の武器が廊下の明かりに光った。いびつな形をした武器ばかりだった。侍は敵のいびつな形をした武器にあらためて眼を見張った。どれも初めて見る奇妙な形をしていた。恐ろしい南蛮の武器だった。恐怖を感じた。
いままで出会ったことのない恐ろしい敵だった。侍は敵の圧力に押された。刀を正眼に構えたままで少しずつ後ずさりした。
侍は荒い息を吐いた。脂汗が額に浮かんだ。そして、一筋の線となって、頬を伝って床に落ちていった。侍は脂汗を
侍は追い込まれた。
あまりの恐怖に正眼に構えた刀の先が震え出した。
〔侍サイド終了〕
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