第64話 折檻2

 明日香は蒼汰の尻に指の跡がアザとなって残っていると言った。しかし、そう言った後で、明日香は何故か蒼汰の背中から降りてくれなかった。蒼汰の背中に馬乗りになって、蒼汰の尻を眺めたままだ。蒼汰はソファにうつ伏せになっているので、明日香が何をしているのか分からなかった。


 山之内さんは何をしているんだろう。いつまで、僕はお尻を丸出しにした格好をさせられるんだろう・・


 蒼汰の背中に明日香の体重がズシリと重くのしかかってきた。蒼汰はたまらず声を出した。


 「山之内さん。重いよ。もう、背中から降りてよ」


 明日香は動かなかった。蒼汰の懇願にもかかわらず、明日香は蒼汰の尻をじっと見つめたままだ。


 ふと、明日香がきょろきょろと周りを見わたした。何かを探している様子だ。明日香の眼がソファの一点に止まった。そこには紙袋が大きなバインダークリップで留めて置いてあった。京都大学を訪問したときに倉掛教授が渡してくれた「謎を探る 京都の地名」の本と京都市内の地図を一緒に入れた紙袋だった。


 明日香は蒼汰の背中に馬乗りになったまま、手を伸ばしてその紙袋をつかんだ。そして、紙袋の口を止めている大型のバインダークリップを外した。次に、そのバインダークリップを蒼汰の尻に持ってきて尻の皮膚に押し当てた。クリップの口を広げた。そうして、なんと蒼汰の尻の皮膚と筋肉の中間部分をクリップで挟み込んだのだ。その上で、今度はクリップを親指と人差し指で強く挟みつけた。


 いきなり、蒼汰の尻に激痛が走った。思わず蒼汰の口から悲鳴が飛んだ。


 「うぎゃあああああ」


 突然始まった明日香の折檻に蒼汰は狼狽した。


 や、山之内さん。な、何をするの? ぼ、僕が一体何をしたって言うの?・・


 蒼汰は明日香に懇願した。


 「や、山之内さん。な、何を、す、するの? やめてよ。許して。許してよ」


 しかし、蒼汰はそれ以上声に出すことができなかった。明日香が、これでもかとばかりに力を込めてクリップを押さえつけた状態で、今度は蒼汰の尻をはさんだクリップを思い切り右に回転させた。尻を大型クリップでつねったのだ。この世のものとは思えない激しい痛みが蒼汰をとらえた。尻の肉が引きちぎられたように感じた。


 「ひいいいいいいい」


 言葉は出てこない。あまりの激痛に蒼汰の口からは悲鳴しか出てこなかった。蒼汰の眼に涙が一気にあふれてきて頬を濡らした。あえぐ蒼汰の口の端から、唾液が一筋こぼれて落ちた。しかし、激痛に蒼汰は口を拭く余裕もなかった。明日香の眼の前では、皮膚のつねられた跡がみるみる赤くはれていって、蒼汰の白い尻に赤い点をつくっている。

 

 蒼汰は心の中でさらに懇願した。


 許して・・お願いだから許して・・

 

 だが、明日香は許してくれなかった。今度は尻の違うところをクリップでつまんだ。そして、そのクリップをまた親指と人差し指で強くはさみつけた。蒼汰の尻の先ほどとは違う箇所に激痛が走った。蒼汰はたまらずまた悲鳴を上げた。


「うぎゃあああああ」


 そして、明日香は先ほどと同様に、その大型クリップを思い切り力をこめて右に回転させたのだ。蒼汰の首がソファの上で後ろに大きく跳ね上がった。眼から涙の液滴が飛んで、リビングの照明に光りながら床に落下した。一拍おいて、蒼汰の口から悲鳴が飛んでリビングに響き渡った。


 「ひいいいいいいい」


 あまりの激痛に悲鳴しか出てこない・・・


 明日香は大型クリップの折檻を何度も何度も蒼汰の尻に繰り返した。深夜の明日香のマンションのリビングに蒼汰の悲鳴が何度も響き渡った。


 「うぎゃあああああ」


 「ひいいいいいいい」


 「うぎゃあああああ」


 「ひいいいいいいい」


 ・・・・・・・・・・


 明日香の突然の折檻はしばらく続いた。蒼汰は泣きながら悲鳴を上げ続けた。あまりの激痛に悲鳴以外はとても口に出すことができない。蒼汰は心の中で「やめて」・・「許して」・・と明日香に懇願した。しかし、明日香は折檻をやめてくれなかった。涙で蒼汰の顔とソファは、ぐしゃぐしゃになった。悲鳴を上げ続けて、蒼汰の喉はカラカラになった。


 折檻は続いた・・・


 20分ぐらいたったときだ。突然、明日香の折檻が終わった。ようやく明日香が許してくれたのだ。


 折檻が終わると、明日香は「はい、おしまい。神代くん、もう、終わったよ」と言って蒼汰のむき出しの尻を軽く平手でぴしゃりと叩いた。その痛みでビクッと蒼汰のあごがまたソファから持ち上がった。いくつか涙の粒が飛んで放物線を描きながらソファの横に落ちていった。蒼汰の「ううっ」といううめき声と、明日香の手のぴしゃりという乾いた音が同時にリビングの中に大きく響き渡った。


 そうして、明日香が馬乗りにまたがっていた蒼汰の背中からやっと降りてくれた。蒼汰はショーツとネグリジェを直して、ようやくソファから立ち上がることができたのだ。


「いたたたた」


 立ち上がると同時に明日香に折檻された尻が激しく痛んだ。激痛に蒼汰は思わす両手を尻にまわして、その場で飛び上がってしまった。

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