第63話 折檻1

 「えっ、お尻?」


 「そう、お尻よ。ここでショーツを降ろして、あなたのお尻を見せなさい」


 明日香のとんでもない命令に蒼汰は飛び上がった。


 「えっ、お、お尻? ど、どうして? そんなのいやだよ。恥ずかしいよ」


 蒼汰はソファから立ち上がって、あわてて両手を後ろにまわしてネグリジェの上から尻を押さえた。明日香が蒼汰の退路をふさぐように立ち上がる。そして、怖い顔をして蒼汰に迫った。


 「神代くん。お尻を見せなさい。これは上司命令よ」


 蒼汰は明日香の勢いに押されて、両手で尻を押さえたまま思わず一、二歩後ずさった。


 「いやだよ。いくら、上司の山之内さんの指示でも・・お尻を見せるなんて・・そ、そんな恥ずかしいことはできないよ」


 明日香が蒼汰の前に立って、両手で蒼汰の肩を押さえた。


 「あなた、私の言うことが聞けないの」


 蒼汰は明日香の迫力にたじたじとなった。思わず、自分の肩にまわした明日香の両手を振り払った。そして、明日香に背中を見せて逃げ出そうとした。その背中に明日香が飛びついた。


 「いいから、あなたのお尻を出しなさい」


 そう言うと、明日香はそのまま背中から蒼汰をソファの上にうつ伏せに押し倒してしまった。蒼汰はソファのクッションに顔を突っ込んだ。息ができない。たまらず、顔をソファの背もたれに沿って持ち上げた。蒼汰はソファの背もたれ側に顔を、ソファの足を延ばす側に自分の下半身を置いた格好になった。両手は胸の下に折りたたまれた状態だ。ちょうどソファの上に四つん這いになって、ソファから下半身を突き出した格好だ。


 明日香がすばやく、蒼汰の尻が自分の正面にくるように蒼汰の背中に馬乗りになった。そして、両足で蒼汰の身体を締め付けた。蒼汰の背中に乗った明日香の眼の前には、四つん這いになった蒼汰の丸い尻が真っ赤なネグリジェに包まれてソファから突き出ている。


 明日香の全体重が蒼汰の背中に掛った。


 お、重い! 


 蒼汰は明日香を振り払おうと抵抗したが、どうにも身動きが取れなかった。たまらず、蒼汰の口から声が出た。


 「やめてよ。山之内さん。やめてよ。お願いだから。やめて」


 明日香は許してくれなかった。


 蒼汰は大声で叫びながら、何とか明日香から逃れようと手足を激しく動かした。しかし、背中に馬乗りになった明日香がさらに両足で蒼汰の身体を強く締め付けるので、いくら手足をバタバタさせても明日香から逃れることができなかった。明日香の眼の前には、四つん這いになってソファから突き出た蒼汰の尻がある。蒼汰が暴れるのに合わせて、明日香の眼の前の蒼汰の尻が左右に大きく揺れた。ネグリジェから飛びだした蒼汰の足のひざから先だけが、ドタバタと後ろ向きにむなしく宙を蹴っている。


 「ドタバタしないの。じっとしていなさい」


 明日香が怒鳴った。


 「いくわよ」


 明日香は蒼汰の背中の上で前に身体を倒した。明日香の身体が傾いて床と水平になり、蒼汰の背中に密着していく。明日香の豊かな胸が蒼汰の背中に押し当てられた。明日香の眼のすぐ先に、赤いネグリジェに包まれた蒼汰の丸い尻が大きく浮き上がった。明日香は両手を床に目一杯伸ばして蒼汰のネグリジェのすそをつかんだ。そして、そのまま、蒼汰のネグリジェを大きくめくり上げた。


 明日香の鼻先に蒼汰のはいている白い女性もののショーツが現われた。ショーツの白がリビングの照明に反射している。明日香は今度は鼻先にある蒼汰のショーツを両手でつかむと一気に押し下げた。


 明日香の眼の前に蒼汰のむきだしの白い尻があらわになった。明日香の頬が蒼汰の尻に触れた。風呂上がりの石鹸の甘い匂いが明日香の鼻を刺激した。


 尻に明日香の呼吸と肌のぬくもりを感じて、蒼汰が声にならない悲鳴を上げた。丸出しの尻を明日香に見られている・・蒼汰は恥ずかしさで真っ赤になった。思わず、また声が出た。


 「ああっ。山之内さん。やめてよ。見ないで・・」


 次の瞬間、明日香が息を飲むのが分かった。明日香はじっと蒼汰の尻を見つめたまま身動きもしなかった。それを感じて、蒼汰も思わず動きを止めた。明日香は押し黙ったままだ。

 

 「・・・・・」


 「山之内さん。どうかしたの? 何かあるの?」


 ソファに四つん這いにうつ伏せになったままで蒼汰が聞いた。明日香は返事をしない。じっと蒼汰の尻を見つめたままだ。明日香の体重が蒼汰の背中に掛って、蒼汰は身体がソファの中に少しずつ沈んでいくような不思議な感覚にとらわれた。明日香は黙っている。


 「・・・・・」


 蒼汰は不安に駆られた。


 「どうしたの? 僕のお尻がどうかしたの? お尻はどうなってるの?」 


 しばらくして明日香が静かに答えた。


 「神代くん。あなたの左右のお尻には指の跡がはっきりと残っているわ。赤いアザになってね・・」


 指の跡、アザ・・蒼汰は頭にショックを感じた。まるで、頭を大きな木槌で殴られたようだ。ソファの上で四つん這いになった姿勢のまま、蒼汰の口から絞り出すような声が出た。


 「あの指の跡だ!」


 蒼汰の脳裏に夢の中で便器の中の手に思い切り尻の肉をつかまれたことがよみがえった。あのときの指の跡だ。夢の中の指の跡が実際に尻に残っているなんて! あの夢はただの夢じゃなくて特別な夢だったんだ。

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