第24話 お寺2
二つの井戸を見ながら明日香が蒼汰に説明を始めた。
「神代くん、これが冥土通いの井戸と黄泉がえりの井戸よ。つまり、昔、平安時代に
「
蒼汰は首をかしげた。初めて聞く名前だ。
「そう。
「すると井戸を使って、地獄と現世を行き来していたわけなのか?」
蒼汰は眼の前の井戸を眺めた。井戸の入り口には、人が落ちないように金属製の柵がかぶせてある。柵の隙間から井戸を覗き込むと、はるか下の方で水面が揺れているのが見えた。柵の間から差し込む太陽の光が水面で反射して、きらきらと光っている。あの光っている水面が地獄に当たるのだろうか? そう思うと、蒼汰は何だか身体が井戸の中に引き込まれていくような軽い錯覚を覚えた。蒼汰は思わず背筋を震わせて、明日香を見た。
明日香がそんな蒼汰に構わず話を続けた。
「そうなの。
蒼汰は絶句した。
「あっ、確かに。言われてみれば・・その通りだ。じゃあ、ひょっとして、あの旅館は地獄にあって、僕たちは地獄に行っていて、そして、あの井戸から現世に戻ったというわけなの?」
「あの旅館が地獄にあったとは限らないわ。でも、私たちが旅館から脱出した後で、五条坂で旅館を探したけれど、あの旅館は見つからなかったじゃない。だから、あの旅館はこの世のものではない建物だったのは確かだと思うの。つまり、私たちはこの世でないところに行っていて、偶然、あの井戸からこの世に戻ったということではないかしら・・・それでね、神代くん、
蒼汰は明日香に連れられて、こんどは千本通りを北へ向かった。千本通りに面した上千本商店街の緑色のアーケードが途切れるところに、千本通りから西へ入る路地がある。路地を抜けると、左手にあるのが
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