327 - 「金色の鷲獅子騎士団3――ゴブリンvs悪魔」


「無茶苦茶だ……」



 アネスティーがぼそりと呟く。


 空飛ぶ船から空へ飛び出し、目を見張るほどの加速力で、標的へ飛んでいくゴブリンたち。


 最弱種族とは思えないほど筋肉質な肉体をもつゴブリンたちの身体は、熱せられた鉄のように赤く輝き、全員が発火していた。


 中級悪魔ミドル・デーモンの群れへ次々に特攻していく様は、それ自体がゴブリンでありながらも、魔法使いソーサラーたちが放った火炎玉ファイアボールだと錯覚させるほどだ。


 だが、相手は中級悪魔ミドル・デーモン


 いくら魔法か何かで強化されたゴブリンだとしても、太刀打ちできる相手ではない。


 そう判断したのは、アネスティーだけではなかった。


 ハッタ・ハット率いる中級悪魔ミドル・デーモンたちが、無謀にも向かってくるゴブリンたちを叩き落とそうと、一斉に迎撃態勢へと移る。



「スギギギ! 所詮、ゴブリンはゴブリンでスね! ただただ突っ込んで来るとは、無能にも程がありまススギギハハッ!!」



 ハッタ・ハットが大笑いする中、一番槍となったゴブリンが中級悪魔ミドル・デーモンへと接近。


 向かってくるゴブリンに対し、中級悪魔ミドル・デーモンも嬉々として太い腕を振り上げて叩き落しにかかる。


 傍から見れば、ゴブリンが単騎で中級悪魔ミドル・デーモンに勝てる訳がないと誰もが嘲笑っただろう。


 次の瞬間までは――。


 中級悪魔ミドル・デーモン目掛けて飛行していたゴブリンが突然眩い光を一瞬放つと、更に加速。


 その結果、一瞬で中級悪魔ミドル・デーモンとの距離が狭まり、ゴブリンは減速することなくそのまま衝突。


 中級悪魔ミドル・デーモン共々、爆炎に包まれた。



「ほほう?」



 ハッタ・ハットの視線が鋭くなる。


 爆発とともに四方八方へ飛び散った肉片が、ゴブリンだけのものではないと気付いたからだ。


 ゴブリンの革命王こと、オラクルが大声で笑う。



「あっはははは! なになに? 最弱種族のゴブリン? そのゴブリンと相打ち? あれ? あれれれ? ってことは、中級悪魔ミドル・デーモンも最弱なんじゃない!? つまり、最終的には数で勝るゴブリンの圧勝ってことぉおおおお!?」



 無言のハッタ・ハット。


 オラクルはハッタ・ハットの反応を少しの間凝視すると、口元の笑みを強くした。



「あれ? あれれ? どうしたの? 急にだんまり? あ、そうか! やっぱり悔しいからかな? 自分が意気揚々と連れてきた手下がゴブリン以下だったんだもんねぇ! それは言葉を失っても仕方ないよねぇええ! あっはははは! ねぇ今どんな気持ち!? どんな気持ちなのぉおおお!? 見下した相手に見下される気持ちはどんな気持ちなのぉおおお!? 教えてよ口の臭いおじさんんんんんッ!?」


「スギギギ……」



 ゴブリンに特攻された中級悪魔ミドル・デーモンが次々に爆散していく中、オラクルの挑発を受けたハッタ・ハットが周囲が歪むほどの殺気を放つ。


 その反応に、オラクルが満足気にほくそ笑む。



「この程度の挑発で顔真っ赤にしちゃってるのぉ? だっさ」



 嘲笑するオラクルへ、鋭い視線を向けるハッタ・ハット。


 その隙を狙うかのようなタイミングで、ハッタ・ハットへ向けて新たなゴブリンが接近。


 僅かに反応が遅れたハッタ・ハットだったが、素早い身のこなしで黒いステッキを振り抜く。


 だが、次の瞬間には特攻してきたゴブリン共々爆炎に包まれた。



「ナイッショッ!!」



 オラクルがガッツポーズをする。


 しかし、ハッタ・ハットもこれだけでは終わらなかった。


 まるで何事もなかったかのように、無傷のハッタ・ハットが、爆炎の中からシルクハットを片手で抑えながら飛び出してくる。


 その視線は殺気に満ち溢れており、まっすぐオラクルを見据えていた。



「この程度では、私を仕留められませんよ?」


「そう簡単に落とせるとは最初から思ってないよ!!」



 オラクルの言葉通り、爆発から抜けてきたハッタ・ハットへ次のゴブリンが強襲。


 始めからそこへ出てくることが分かっていたような絶妙なタイミングでの着弾だった。


 再びハッタ・ハットが爆炎に飲まれる。


 しかし、爆炎から再びハッタ・ハットらしき影が現れ――。


 ハッタ・ハットが姿を見せる前に、オラクルが叫ぶ。



「はいっ! どーーーんッ!」



 ハッタ・ハットが爆炎から再び姿を見せた直後、追加のゴブリンが突っ込んだ。


 そして、爆発。



「さぁじゃんじゃんばりばり行こうッ!!」



 その後も、ハッタ・ハットが爆炎から出ようとする度に、ゴブリンが特攻を繰り返した。


 爆発に次ぐ爆発に、その様子を見守っていたアネスティーも言葉を失う。


 それら全てが闇雲に突撃しているのではなく、ハッタ・ハットが爆炎から姿を見せようとしたタイミングを狙って完璧に合わせた突撃だったからだ。



(私は一体何を見せられているんだ……ゴブリンには、こんな恐ろしい戦術があるのか……?)



 ゴブリンの連続特攻によって、一向に爆炎から出てこれないハッタ・ハット。


 その後も何回かその攻撃が繰り返されると、痺れを切らしたのかハッタ・ハットに変化が起きた。


 爆炎を吹き飛ばすように黒い霧が円状に広がる。


 それを見たオラクルが白い歯を見せて笑う。



「よーし、第二ラウンドだ!!」



 黒い霧の中には、黒い八本の角が生えた巨大な悪魔が浮かんでいた。


 黒い肌に、黒い翼、黒い尻尾。


 右目は赤く、左目は白い宝石のようなものが嵌っている。


 そこに、シルクハットとタキシードを着こなした、以前のハッタ・ハット卿の面影はない。



「あれが……ハッタ・ハットの本来の姿なのか!?」



 アネスティーの言葉に、オラクルが返す。



悪魔デーモンは人に化けるのが得意だからねぇ。でも、あの姿を晒したってことは、もう人に化け続ける余裕がなくなったって証明だよ。馬鹿だねぇ、自分で負けフラグ確定させちゃってさ。本当、見掛け倒しなんだから」


「負けふら……なんだ? それは、どういう……」


「もう、ぼくたちの勝ちは確定したってことだよぉおお! いっけぇえええ! ヘイヤ・ヘイヤゃやあああ!!」


「あひゃひゃひゃ」



 いつの間にかハッタ・ハットとの距離を詰めていたヘイヤ・ヘイヤが、ハッタ・ハットが展開していた黒い霧などお構いなしに突っ込んでいく。



「大丈夫なのか!?」



 あの黒い霧の怖さを身をもって体験した直後だったアネスティーが、思わずと言った形でヘイヤ・ヘイヤを心配するも、オラクルは笑って返した。



「ヘイヤ・ヘイヤも悪魔デーモンだよ? 大丈夫に決まってるじゃん。悪魔デーモンに呪いは効かないって! それにヘイヤ・ヘイヤも最上級悪魔ジェネシス・デーモンだしね!!」


「そ、そうだったな」



 憎きヘイヤ・ヘイヤでも、味方となればこんなにも頼もしく見えるものなのかと、アネスティーが胸の内から込み上げる感情と、ヘイヤ・ヘイヤが犯した罪を許してはいけないと必死に訴えてくる正義感とのせめぎ合いに、ぐっと歯を食いしばる。


 そんなアネスティーの反応を視界の端で捉えていたオラクルが、呆れたように息を吐いた。



「はぁあ、おねえさんも、本当に面倒くさい性格してるよね。素直じゃないというか、頭が硬いというか、柔軟性に欠けるというか」


「なっ!?」



 不意なダメ出しにアネスティーが言葉をつまらせながら驚くも、オラクルは気にした様子もなく、ハッタ・ハットとヘイヤ・ヘイヤの戦いに言及した。

 


「そんなどうでもいいことより、おねえさんあれ見てよ! あのおじさん、あんだけでかい口を叩いておいて、ヘイヤ・ヘイヤに押されてるよ?」



 ふたりの視線の先では、巨大な悪魔デーモン同士が、激しい衝突を繰り返している。


 殴る、蹴る、引っ掻き、体当たり、噛み付きなど、最初こそ原始的な獣同士の戦いから始まるも、どちらも傷が瞬時に回復するため、膠着状態に思えた。


 だが、少しして不利を悟ったのか、ハッタ・ハットが黒い長剣を異空間から取り出すと、ヘイヤ・ヘイヤもそれに応じて黒い槍を取り出し、武器を使った白兵戦へと移行。


 時折、ハッタ・ハットが魔法や異能を行使するも、ヘイヤ・ヘイヤは持ち前の超回復で直ちに復帰し、途切れることなく激しい戦闘が続く。


 序盤こそ、手数の多さでハッタ・ハットがヘイヤ・ヘイヤを退ける場面が多かったが、それでも全く怯まないヘイヤ・ヘイヤに、遂には形勢逆転され始める。


 防御は超回復頼みというほぼノーガード戦法で、怒涛の攻撃を繰り広げるヘイヤ・ヘイヤに、ハッタ・ハット側が押し込まれ始めたのだ。



「所詮、計略戦を主とする頭脳派の悪魔ハッタ・ハットと、肉弾戦を主とする肉体派の悪魔ヘイヤ・ヘイヤじゃ、戦う土俵が違うんだよね。あれはヘイヤ・ヘイヤの土俵。こちらの土俵にあがった時点で、ハッタ・ハットの負け確なんだよ。頭脳派って言っても所詮この程度なんて笑っちゃうね。まっ、本体じゃないから威力偵察のつもりでわざと相手の土俵にあがったのかもしれないけど」


「ちょ、ちょっと待て! 本体じゃない? どういうことだ!?」


「え? 言葉通りの意味だよ? まさか、ハッタ・ハットがあれだけの攻撃を連続で受けたのに、毎回無傷でいられることに、何のからくりもないと思ってたりしないよね?」


「そ、それは……」


「ほら、よーく見てよ。ハッタ・ハットの身体。今度は傷が残ったままだから。きっともう残機ゼロだね」



 聞き慣れない単語に混乱しつつも、オラクルの言いたいことを理解したアネスティーが、恐る恐る聞いた。



「あれが本体じゃないなら……本体はどこに……」


「帝都じゃない? だって今は一番安全なんでしょ? ああいうのは、一番安全な場所に核を隠しておくタイプだね」


「くっ……」



 込み上げる悔しさに歯を食いしばるアネスティーに、オラクルが笑う。



「あっはは。まぁおねえさんが悔しがる気持ちも分かるよ。でも、こっちもあれが本体じゃないことを計算の上で動いてるから安心してよ!」


「何か方法があるのか!?」


「そういうこと! 完全に安全な方法や場所なんて、この世の中にはないんだな〜これが。さっ、飽きてきたから、そろそろ終わりにしよっと」



 まるで遊んでいたおもちゃを片付けるくらいの気軽さで、オラクルが号令をかける。



「クララおねえさま方ー! 手仕舞いですー! 仕上げお願いしまーーーーす!!」


「まだ誰かいるのか……?」



 アネスティーが周囲を見渡すも、気配は感じられなかった。


 だが、オラクルの言葉に応じたのか、突然ハッタ・ハットとヘイヤ・ヘイヤの周囲に白い光の膜が発現した。



「スギギッ!?」



 ハッタ・ハットが、驚きに目を見開く。


 それが危険なものだと、本能で察したのだろう。



「これは不味いでスねぇッ!?」



 ハッタ・ハットが光の膜に向けて黒い剣撃を放つも、光に触れる前に霧散した。



「スギギギ、これは参りましたよ? よもやこの間抜けを囮に私が捕まるとは、間抜け過ぎて笑えまススギギハハッ!!」


「あひゃひゃひゃ」



 分かっているのかいないのか、間抜け呼ばわりされたヘイヤ・ヘイヤは、槍を構えたまま笑っている。


 危機感の見えないハッタ・ハットの様子に、オラクルが口を尖らせた。



「その余裕な感じ、気に入らないなー。ま、余裕でいられるのも今のうちだと思うけど」


「スギギギ、この借りはいずれ返しにいきまスよ」


「あっははは! そうそうそうこなくっちゃ! その言葉を待ってたんだよ!!」



 興奮したオラクルが、灰色の翼竜レネから身を乗り出し気味になりながら声を張り上げた。



「でもざんねぇえええんんん! おじさんの本体は、今のおじさんのせいで道連れになるんだなぁあああ、これがッ!!」



 オラクルの言葉に、ハッタ・ハットの顔が強ばる。



「まさか……」



 その刹那、周囲を囲っていた光が強くなり、白い光の線で構成された魔法陣が、無数に出現。


 空中に浮かんだすべての魔法陣から、白い光がハッタ・ハットへと放出された。



「ぐぁあああああッ!?」



 悲鳴をあげるハッタ・ハット。


 光はハッタ・ハットの悪魔デーモンの身体を蒸発させつつも、1体の巨大な天秤を形取った。


 天秤に吊り下げられたふたつの皿のうち、片方には光に焼かれて悲鳴をあげているハッタ・ハット。


 もう片方の皿には、光によって薄っすらと何かが形取られていくところだった。


 光に焼かれながらも、もう片方の皿の上に形取られていく何かを見たハッタ・ハットが、驚愕の表情で叫んだ。



「あ、あれは――ッ!?」



 光に形取られてできたそれは、ハッタ・ハットと瓜二つの男だった。



「貴方ぁあああッ!? 許しませんよぉおおおッ!!」


「あっはははははは! いいよいいよおじさん! 今最高に面白い顔してるよ!!」


「あっひゃひゃひゃ」



 絶叫をあげるハッタ・ハットを見て爆笑するオラクルに、白い光に自身も身体を蒸発させられているにもかかわらず、一緒に笑っているヘイヤ・ヘイヤ。


 怒涛の展開とカオスな状況に、アネスティーは絶句していた。


 オラクルが楽しそうに声を上げる。



「さぁ仕上げーーーーーー!!」



 オラクルがそう叫ぶと、今度は光の膜の外側に、光でできた巨大な天使が姿を現した。


 それを見たアネスティーが驚きに口を開く。



「なっ!? あ、あれは――大天使ユースティティア!?」



 ユースティティアと呼ばれた巨大な天使は、右手に持っていた光の剣を構えると、そのまま天秤の皿の上で動きを封じられていたハッタ・ハットの胸へと突き刺した。



「ぐぎゃぁァアアアアアアッ!?」



 光の剣に心臓を串刺しにされたハッタ・ハットが、刺された場所から光の粒子となって蒸発していく。


 すると、もう片方の皿に乗っていたハッタ・ハットと思われる人物にも変化が現れた。


 ハッタ・ハットと同じように、胸の内側から光の粒子となって霧散し始めたのだ。



「あっははは! ねぇ今どんな気持ち!? 分身のせいで本体も道連れにされて死ぬのが分かった今って、どんな気持ちなのぉおおおおおお!?」


「おのれぇえええゴブリンンンンンンッ!!」


「あっははははははははは!!」


「ぎぃゃゃやぁあああああああ!?」



 天秤皿の上に乗せられたハッタ・ハットのふたりが、それぞれ断末魔の叫びをあげながら光の粒子となって消え去る。


 ひとりは、最期までオラクルに怨めしい視線を向けながら、もうひとりは訳も分からぬといった表情のまま。


 標的となったハッタ・ハットが消えると、悪魔デーモンの残党も黒い靄となって消え始めた。


 巨大な天使や天秤だけでなく、周囲を囲っていた光の幕も消え、ハッタ・ハットとともに閉じ込められていたヘイヤ・ヘイヤだけが残る。



「終わった、のか……?」


「おねえさん、それ絶対言っちゃ駄目なやつ」


「ど、どうしてだ?」



 アネスティーが焦るも、オラクルは気にせず話を進める。



「でも、今回は大丈夫。これであの帽子悪魔ハッタ・ハットは終わり。討ち漏らしたら厄介なひとりを、序盤に仕留められたのはかなり大きいね! 誰がどう見ても終盤で戦うことになるラスボス級だし。あ、クララおねえさま方、お疲れ様でしたー!!」



 オラクルが手を振ると、先ほどまでは誰もいなかった上空に、淡い光に包まれた女性たちが姿を現した。


 人数は四人。


 全員が金色の刺繍が施された白いフードローブを身に纏っており、そのひとりひとりが司教のような高尚な雰囲気を漂わせていた。


 先頭のひとり、薄卵色の髪をした垂れ目の美女が口を開く。



「無事に計画通り進みましたね。オラクル様も、ここまでお骨折りいただきありがとうございました」


「へへ、こんな重要な局面の序盤で躓くわけいかないからね!」



 薄卵色の髪をした垂れ目の美女は、そのままアネスティーへも声をかけた。



「このような状況でのご挨拶となりましたが、どうかご容赦ください。私は、竜信教ドラストの司教のひとり、クララと申します。こちらの三人も、同じ司教の者たちです。お見知り置きください」


「わ、私は金色の鷲獅子騎士団グライフスヴァルトの第十五部隊隊長……いや、元隊長だった、アネスティー・グラリティだ」



 少し落ち込み気味に挨拶したアネスティーに、クララは柔和な笑みを浮かべて頷いた。



「はい、存じております。さぞ大変だったことでしょう。ですが、これからはセラフ様のご加護があります。決して諦めることなく、この道を信じて邁進いたしましょう。竜信教ドラストの私達とともに」



 アネスティーは、聖女のようなクララの微笑みに圧倒されつつも、なんとか言葉を返す。



「あ、ああ、すまない。頼らせてもらう」


「さっ、挨拶も済んだことだし、クララおねえさん方、このおねえさんをよろしくね」


「はい、かしこまりました」



 オラクルとクララのやり取りを聞いたアネスティーが、少し不安気な様子で聞いた。



「もう別々に行動するのか……?」


「あ、心配なの? 大丈夫大丈夫。おねえさんたちは、ここに向かってきているおにいさまの援軍部隊と合流してもらうから。その後は、また押されつつある西部へ加勢かな」


「お前はどうするつもりだ……?」


「ぼく? ぼくたちは〜」



 オラクルはそこまで言いかけると、アネスティーを見て止めた。



「えへへ、内緒!!」


「……そうだな。重要な局面だ。簡単に言えないこともあるだろう。了解した」


「あれ? やけに素直だね?」


「フッ、私も子供ではない。立場も弁えているつもりだ。窮地を助けてもらったことはとても感謝している。ありがとう」



 そう告げて、アネスティーは深々と頭を下げた。


 アネスティーの行動に、オラクルは少し驚くも、すぐに意地の悪い笑みを浮かべた。



「良いの良いの。でもまだ感謝の言葉は早いんじゃない?」


「ど、どういう意味だ?」



 一転して不安な表情に変わったアネスティーへ、オラクルは無邪気な笑顔で言い放った。



「だって、これからぼくは、おねえさんの元同僚たちを虐殺しに行くんだからさ!!」



――――

▼おまけ


【C】 ゴブリン仕込みの挑発ゴブ・プラヴァケイション、(赤)、「インスタント」、[挑発Lv3]

「奴らから学ぶことだってあるぞ? ゴブリンの挑発ほど、腹の立つものはないからな――ゴブリン狩りの冒険者ハンス」


【C】 ゴブリンの危険な儀式ゴブリン・ファイアプレイ、(赤)、「ソーサリー」、[ゴブリン生贄時:(赤×3)、爆発Lv1、自身に火傷Lv1]

「ゴブリンどものやることに、そもそも危険じゃないものなんてあるのか? いや、ないね――ゴブリン狩りの冒険者ハンス」


【UC】 ユースティティアの抱擁ユースティティアズ・エムブレイス、(白×2)(2)、「エンチャント ― クレリック」、[能力補正+2/+4] [気配察知Lv4] [飛行] [耐久Lv5]

「公平であれと律する強き意思が原動力となり、彼女の抱擁が揺るがぬ信仰心に大いなる力を与える――公平を重んじる大天使の書」


【UR】 大天使ユースティティアの判決の天秤、(白)(4)、「アーティファクト ― 天秤」、[(白)(2):オーナーではない、攻撃してきたモンスターを対象とする。このターン、対象に与えたダメージを、対象と対象のオーナーの両方に与える。このダメージは対象に取ることができず、また、再生や回復、軽減することもできず、なかったことにすることもできない。このダメージで死亡したモンスターを追放する。耐久Lv-1] [耐久Lv3]

「当事者なき決闘は公平ではなく、いついかなる時も、身代わりを立てることは許されない。不公平は罪であり、断罪されるべき愚行である――公平を重んじる大天使の書」




★ 挿絵カード(WEB版オリジナル)、pixivにて公開中 ★

https://www.pixiv.net/users/89005595/artworks


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