307 - 「黄金のガチョウのダンジョン21―黄昏のサヤ」
「う、うそ……メストまで!?」
第一班隊長のケイ・チャムに続き、第二班隊長のメストまでもが敵に追い詰められていく中、第五班隊長であるサヤは、負傷した傷を応急処置で回復させつつ、部下たちの洗脳を解くべく詠唱を開始していた。
(お願い! 間に合って!!)
普段であれば、詠唱中の無防備な状態を護衛する者が少なくとも存在するが、今回は非常事態。
メストが敵を引き付けているうちに詠唱を終わらせる必要があったが、そのメストも敵に圧倒され、十分な時間を稼ぐこともできずに倒されてしまう。
幸い、メストが命を賭けて派手に動いてくれたことと、第三班隊長のリュウ・オウが
(後少し……!!)
長い詠唱が終わりに差し掛かると、白い魔法陣が空中に幾重にも発現していく。
(これで……一時的にでも皆の洗脳を解ければ!!)
サヤが祈るように結んだ両手を広げ、締めの呪文を口にする。
「
だが、それと同時にどこからか聞き慣れた声があがった。
「
「え……」
発現していた白い魔法陣が、突如現れた青い光に侵食され、掻き消されていく。
それは、対象の魔法を打ち消すことができる魔法だった。
そして、それを行使したのは――。
「ユージッ!? なぜなのッ!?」
サヤが声がした方角に振り向くと、そこには真っ黒に染まった瞳の男――第四班隊長であるユージが、こちらに短杖を向けてた。
「あの眼……まさかユージまで!? そんな……」
呆然と佇む。
洗脳を解くための
残された手段は、周囲の洗脳を解く
それなのに、よりによって
ユージが相手では、
護衛が1人もいない状況では尚更だ。
「はぁぅッ!?」
胸を貫く衝撃に、サヤが突然声をあげて仰け反った。
そして、遅れてやってくる鋭い痛み。
サヤはその痛みと悔しさで顔を顰めた。
(こんな……ところで……)
視界に写ったのは、胸から生えた2本の透明な刃。
ユージが率いる第四班が主に扱う武器――真空の刃だ。
気が付けば、ユージの部隊に周囲を囲まれていた。
マサトや
「うぐ……」
胃を逆流してきた血が、口端から零れ、顎を伝って流れ落ちていく。
「やっぱり、こうなったじゃない……」
唐突に愚痴を口にしたサヤが、首をひねって誰かを探す。
「あの人の側を離れるのは、だから反対だったのよ……あの人の側以外に、安全な場所なんてないのに……」
そして、一際強い光を発しながら移動してくる人物を見つけると、ほっとしたような表情に戻った。
「すみません、
直後、黒い影が勢いよく迫り、サヤの美しい
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▼おまけ
【C】
「え? 黄昏のサヤを口説きたいの? うーん、あなたじゃ無理じゃないかなぁ? あ、別にあなたの容姿が問題とかじゃなくて、年齢が……だって、彼女は枯れ専だって有名だから――冒険者ギルド受付嬢オミオ」
【UR】 苦言のユージ、2/2、(青×3)、「モンスター ― 人族、ヴィリングハウゼン組合員」、[妨害魔法Lv5] [精神攻撃魔法Lv3] [(青):一時飛行付与] [飛行]
「ヴィリングハウゼン組合のご意見番。第四班隊長。とにかく小言や忠告が多いため、苦言のユージと呼ばれている。否定的な言動が目立つものの、物事の道理や議論の筋道はしっかりしているため、仲間内での信頼は厚いのだとか。頭の回転が速く、妨害系の魔法が得意。私は彼が隠れ構ってちゃんだと思っている――冒険者ギルド受付嬢オミオの手帳」
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これからも更新続けていきますので、よろしければ「いいね」「ブクマ」「評価」のほど、よろしくお願いいたします。
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