250 - 「プロトステガ攻城戦9―集結」
光の粒子の奔流と化した
懐に入られた巨人達は、その大きな腕で
躍起になった
混戦の中で放たれた熱光線は、
味方の熱光線に焼かれ、呻きをあげて転倒した巨人達を背に、
実体のない粒子の身体から光輝く爪を具現化させると、すれ違いざまに
その大きな瞳は、
たった一つしかない眼を失った巨人は、その場でのたうち回るだけの木偶の坊と化した。
彼らは特段、聴覚や臭覚が優れている訳ではないのだ。
これが街中だった場合、無暗に暴れ回られるだけで被害が増えただろう。
だが、今は敵陣の中。
眼を失ったことで錯乱した巨人は、その場で暴れ回り、周囲の巨人達へ攻撃するという混乱を引き起こした。
その状況に、漆黒の
「一体で街を崩壊させるほどの強大な巨人も、攻め方が分かれば他愛もない。せめて
巨人達は熱光線を放って焼き払い、近くに接近してきたファージには、巨大な手を振り回して叩き落としたりと対抗したが、羽虫の如く次から次へと眼目掛けて飛び込んでくるファージの群れに、巨人達は一人、また一人と無力化されていった。
一方で、
ファージ達のような玉砕覚悟での特攻もできず、
地上へ向かった二頭は、港都市コーカスへと向かう
黒い煙を舞い上げながらその場で燃え続けるブレスの残り火は、さながら都市を守るように構築された炎の壁のようだ。
火を嫌った
これでは、ただの時間稼ぎに過ぎないのだ。
野原を埋め尽くすほどの
帝国の民や街がどうなろうが、
「チッ、ヘイヤ・ヘイヤめ。最期に鬱陶しい置き土産を」
コーカスの先、暗闇に染まった大海原の空を見つめ、
「コーカスは帝都を落とすのに必要な補給拠点だ。無傷で手に入れろ。いいな?」
その視線の先には、闇夜に隠れた巨大な何かが、ゆっくりと近付いてきていた。
◇◇◇
「
マサトの見張り役として残った
巨人の強さを知っている彼女達にとって、目の前の出来事は衝撃だった。
弱点が眼だと知っていても、
遠方への圧倒的な攻撃力を誇る熱光線に、鍛えられた剣をも弾く強固な皮膚。
近付く敵に振り下ろされる腕は大木よりも太く、叩き落とされれば
玉砕覚悟で眼に特攻するなど、精神操作された狂人か何かでない限りできない芸当だからだ。
「炎の男も異常だ…… 一人で巨人達を圧倒している…… 一体何者なのだ…… あの黒い
その独り言には、隣にいた女騎士が答えた。
「奴らが西の空からやってきたのを見たぞ」
「西から? 西といえば、フレイム・ハート・フラミンゴ公の治めるハート領だろう。今はフログガーデンへの侵攻拠点として警備は手厚いはず。そこにあの量の
ファージ達の襲撃により、既にハート領は火の海と化していたが、独立遊軍としての色合いの濃い十五番隊は、本来の指揮系統から少し外れていた。
その為、西部侵略に対する緊急の召集命令を受けていないのだ。
「それより、私達はこのまま戦況を見守っているだけで本当に良いのか? あの炎の翼を生やした男はこちらの味方と聞いた。空では
「加勢に出たところで、我らに何ができる。ここに残された戦力では、見守る以外に逃げることしかできないだろう。我々が受けた任務は、この戦況の監視だ。このままここで待機し、アネスティー隊長の命令を待つ」
「……了解した」
そう渋々了承した女騎士が、コーカスへ迫る
「理不尽な暴力から民を守るため
「歯痒い気持ちは分かる。だが、任務が最優先だ」
「承知している……」
彼女らが
「ど、どうした!? お、落ち着け!!」
「あ、あれを――!!」
皆が
それも、一つではなく、無数に。
「な、なんだ!? 何だあれは!?」
「モンスター!?」
「いや、違う…… あれは……」
雲から零れ出た月明りに照らされ、その巨大な何かが姿を現す。
それは船のような、それでいて白鯨のような見た目をしていた。
夜空を悠然と進むそれは、魔導大国の英知を極めたハインリヒ公国の王――ハインリヒ三世と、その弟子のルミアが、マサトが過去に購入した
「船…… なのか……?」
「空飛ぶ…… 船……」
巨大な一隻の船を先頭に、中小様々な船が続く。
次第に大きくなる翅の振動音とその迫力に、騎士達の顔が恐怖で染まる。
「た、退避! 一旦ここから離脱する!!」
「い、急げ!!」
危機を感じた
その様子を、先頭を走る大型の
「ふふ、ようやく…… ようやくお父様に逢える日がやってきたのね。早くお母様の宿題片付けて、お父様にいっぱい、いーっぱい抱き締めて貰わなきゃ!!」
――――――――――――――――――――
▼おまけ
【UR】 白群色の大型飛空艇 リヴァイアス号、5/10、(15)、「モンスター ― 飛空艇」、[魔法無敵] [飛行] [海神砲Lv10] [大型魔導砲Lv3] [小型魔導式ガトリング砲Lv1]
「王…… ついに王の悲願だった大型飛空艇が完成しましたよ。ちゃんと見えていますか? もう少しだけ、王が好きだったこの空を飛行しますね――ハインリヒ三世の三番弟子ルミア」
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