230 - 「アカガメ討伐の報酬」
黒く焼け焦げた船の残骸が波に揺られ、ゆっくりと仄暗い海の底へと沈んでいく。
沈まずに浮いているのは、浮力の高い羽を身に纏った鳥人の死体くらいだ。
だがその死体も、一人、また一人と海中へ引きずり込まれていった。
時より刺々しい背ビレや、凶悪な牙が並んだ口が海面に見えるため、それがモンスターの仕業であることは分かっていた。
(濃厚な血の臭いに誘われて、海の肉食モンスターが集まってきたのか…… 空にいる限りは危険はないと思いたいが…… 大丈夫だよな?)
様子の分からない海中に一抹の不気味さを覚えるも、飛んでいれば危険はないはずだと、マサトは紅く染まった海から舞い上がる無数の光の粒子を回収し続けた。
(よし、一通り回収が終わった)
周囲に光の粒子がなくなったことを確認した後、ステータスを表示して保有マナ数を確認。
結果は――
(白×3)(赤×2)(緑×12)(青×1256)(黒×4)(9)。
十分な成果だが、過去に戻る前提で考えるとまだまだ足りない。
(先は長いな…… とは言え、青マナが潤沢になったのは大きい。後はカードドロップがどうなるか……)
アカガメ程度の敵を殲滅するだけであれば、
転移してきた当初と比べれば、かなり戦闘慣れしたマサトだったが、それだけに、いざという時の備えがあるかないかで、敗北リスクは大幅に変わるという実感も強くなっていた。
(例え弱いカードでも、手持ちは増やしておきたい。カードドロップがあるなら、そろそろメッセージが表示されても良いはずだが……)
マナを回収し終えてから少しの間があった後、マサトの期待した通り、目の前にカード獲得を告げるシステムメッセージが表示された。
(きた……!!)
『飛び立つ
『飛び立つ
『飛び立つ
最初に表示されたのは、飛び立つ
(あのアヒル、
具現化してみると、カードには先ほどのアヒルが飛び立つイラストが描かれていた。
[C] 飛び立つ
[飛行]
(1/2の飛行モンスターか…… 小物だが、飛行持ちで、武器を扱える人型なら使い道はありそうだな)
人手となるカードはそれだけで有用だ。
自身の目の届かない場所でも、念話による意識共有ができる支配下モンスターは、監視役や伝令としてかなり優れている。
更に武器や
マサトが軽く用途をイメージしていると、獲得メッセージが別のものに切り替わった。
『ダック・ガルダンの戦士カードを獲得しました』
『ダック・ガルダンの戦士カードを獲得しました』
(次は戦士か)
あまり期待せずに具現化する。
[C] ダック・ガルダンの戦士 2/2 (青)(2)
[飛行]
(パワーが2になっただけのアヒル…… いや、同じ小物でも、飛び立つ
仮に、飛び立つ
数値だけで見ると一見弱そうに見えるカードでも、召喚してみたら戦いに関して玄人だったという話は、隠しパラメータが存在しているMEでは良くある話だ。
(今回の回収で青マナは潤沢になった。例え召喚コストが重くても、能力の高いカードの方が頼りになるな)
そう考えるも、倒した敵のカード化である為、想定を超える強さのモンスターがカード化されることはない。
当然、その事はマサトも把握しており、次の獲得メッセージで、それは頷きに変わった。
『
『
『
(やっぱりそうなるか…… 少しあからさまなカード名ではあるが……)
具現化してカードを見る。
縁の色は茶色。
イラストは手足や首を鎖に繋がれた、衰弱した奴隷が描かれている。
[C]
[攻撃不可]
[防御不可]
([攻撃不可]に[防御不可]まであると、強化しても戦闘には使えないな……)
MEではコンボのキーとしてよく使用する生贄以外の利用方法を考えようとするも、次の獲得メッセージが視界に入り、思考が強制的に切り替わる。
『上質な羽毛カードを獲得しました』
『上質な羽毛カードを獲得しました』
『上質な羽毛カードを獲得しました』……
(羽毛……? 何だこれ…… まさかアヒルの羽毛?)
能力が想像できず、すぐさま具現化して能力を確認する。
[C] 上質な羽毛 (0)
[素材]
だが、ただの素材カードだった。
(そのままか。何かのコンボカードだろうが、これだけじゃ何に使うか分からないな。コンボを無視して羽毛布団は作れそうだが……)
不意打ち気味の羽毛獲得に可笑しくなり、口元が緩む。
だが、トレンならこれにいくらの値をつけるだろうとか、レイアにプレゼントしたら喜ぶだろうと考えたところで、気持ちが一気に沈んだ。
(こんな事で浮かれるな…… 俺にはやらないといけないことがあるんだ……)
気を引き締め直し、メッセージに集中する。
次は――
『憐れな魂の結晶カードを獲得しました』
[UC] 憐れな魂の結晶 (2)
[マナ生成:(1)]
[マナ生成限界10]
淡い光を中心に宿した、どこか哀愁漂う青紫色の結晶が描かれた
(これは…… 大勢の奴隷も一緒に始末したからか……? まさか、紋章レベルが上がったことでドロップ内容にも変化が……?)
もしそうであれば…… と、一瞬危険な考えが頭を過るも、さすがに見境がなくなると頭を振って危険な思考を散らす。
すると次の獲得メッセージがすぐに表示された。
『空への羨望カードを獲得しました』
[UC] 空への羨望 (青)(2)
[支配下モンスター一時能力付与 飛行]
支配下モンスター全体を強化できる
一日だけの限定であるものの、支配下モンスター全員を空へ飛ばせる能力は強力で、使い方によってはエンドカードになり得る。
複数欲しいところだったが、どうやら獲得は一枚だけだったらしく、すぐ次の獲得メッセージに切り替わってしまった。
『ダック・ガルダンの風魔導士カードを獲得しました』
[UC] ダック・ガルダンの風魔導士 1/2 (青)(2)
[飛行]
[風魔法攻撃Lv1]
[(青):一時能力付与 飛行速度強化Lv1]
(空への羨望は一枚か。でもこの風魔導士…… こいつは使えそうだ)
例えLv1でも、魔法攻撃などの遠距離攻撃手段を保有しているモンスターは貴重だ。
マサト自身が
(飛行速度強化があるってことは、飛行モンスターには隠しパラメータとして速度の概念があるってことか。確かに、
パラメータ自体は、1/2と小物だが、利用価値の高いモンスターとして確かな手応えを感じていると、次の獲得メッセージが流れた。
『アカガメ魔砲隊の召集カードを獲得しました』
(魔砲隊の召集…… もしや、集合体カードか!?)
名前からして、ドロップカードが重なることで「カード自体がランクアップする」という現象が起きた結果のカードではないかと期待が高まる。
すかさずカードを具現化すると――
[R] アカガメ魔砲隊の召集 (青×5)(X)(X)
[X:ダック・ガルダンの魔砲士の召喚X。ダック・ガルダンの魔砲士は、[飛行][魔銃攻撃Lv1] をもつ 1/2 の鳥人として扱う]
銃をもった複数のアヒルが、空を羽ばたいているイラストのカードは、マサトが期待した通りのX呪文カードだった。
(よし! 呪文コストは重いが、青マナは潤沢にある。問題はない)
このカードも複数欲しいところだったが、残念ながら獲得メッセージは一つのみ。
メッセージは、次の獲得メッセージへと切り替わる。
『奴隷船アカガメカードを獲得しました』
『奴隷船アカガメカードを獲得しました』
『奴隷船アカガメカードを獲得しました』……
(なっ…… アカガメ!? 船が!?)
驚きつつも具現化すると、確かに先ほど焼き払ったばかりの奴隷船という名の海賊船が描かれていた。
[R] 奴隷船アカガメ 3/5 (青)(4)
[移動条件:海]
[大砲攻撃Lv1]
(想定外の青のモンスターカード。能力的には中堅どころだが、恐らくこのカードは乗り物として乗れる)
パラメータとしての価値よりも、乗り物としての価値があるカードだとマサトは判断する。
残念ながら、アカガメの獲得メッセージの後に続く表示はなかったが、マサトはそこそこの収穫はあったと概ね満足していた。
アカガメ掃討戦でのカード獲得一覧――
[C] 飛び立つ
[C] ダック・ガルダンの戦士 2/2 (青)(2) 2枚
[C]
[C] 上質な羽毛 (0) 24枚
[UC] 憐れな魂の結晶 (2) 1枚
[UC] 空への羨望 (青)(2) 1枚
[UC] ダック・ガルダンの風魔導士 1/2 (青)(2) 1枚
[R] アカガメ魔砲隊の召集 (青×5)(X)(X) 1枚
[R] 奴隷船アカガメ 3/5 (青)(4) 5枚
――――――――――――――――――――
▼おまけ
【UC】 空への羨望、(青)(2)、「インスタント」、[支配下モンスター一時能力付与 飛行]
「ダック・ガルダンが空を飛べない人族を見下してるって? 何で? 彼奴らだって満足に飛べてないだろ?――プロトステガの家禽商人」
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