28 -「三葉虫(トリロバイト)」
わたし達は、Cランクパーティの「
8等級魔法は、別名中級魔法とも呼ばれていて、ある程度熟練しなければ使えない魔法です。
わたしは回復の専門職ですが、8等級までの回復魔法しか使えません……
だから、レンジャー職で8等級魔法が使えるこの3人は、本当に凄腕なんだと思います。
正直ちょっぴり嫉妬したりしました。
本人達は、その分使える回数が少ないから、本当に困ったときの切り札でしかないと謙遜していましたが……
あれ?
謙遜じゃなかったのかな?
前衛のセファロさんは火魔法を使っての殲滅、中衛のラックスさんは水魔法を使っての防衛、そして後衛のジディさんは回復魔法による支援というフォーメーションで、いつも動いているらしいです。
あくまでも、安全第一での昆虫採集がモットーと言ってました。
ジディさんとは、使用可能な回復魔法について既に打ち合わせしてあるので、連携はちゃんとできるはずです。
ジディさんは緑色の髪を左右で三つ編みにした女性で、前髪は目までかかっているせいで表情が読みにくかったりします。
そばかすがチャーミングな彼女ですが、虫の話題になると変な笑い方をします……
その笑い方だけはちょっと苦手だったりします。
ジディさんはレンジャーだけあって、状態異常回復系の魔法は一通り習得されてました。
本当に凄いです。
世の中不公平だと思います。
わたしは僧侶なのに、習得できなかった魔法がちらほら……
ただ、傷を癒す系統の魔法は上手く習得できなかったみたいで、かすり傷を治すくらいしかできないと言っていました。
その言葉に少しホッとしてしまった自分が情けないです……
わたしは僧侶なので、大きな裂傷とかまでならなんとか治せます。
部分欠損とかは、さすがに7等級以上じゃないと無理ですが……
わたしが使えるのは8等級までなので……
「そろそろ森に入るぞ〜。警戒しろ〜」
ワーグさんが、いつもの間延びした声で警戒を促しました。
「あいよ〜」「うい〜」「は〜い」
それに答える返事も間延びしていて、なんだか緊張感がありません。
でも、わたしはこのやりとりが大好きです。
なんだかほっこりします。
「は〜い!」
遅れてわたしも返事をしました。
中衛に僧侶のわたしと狩人のラアナさん。
後衛に魔法戦士のマーレさんというフォーメーションです。
シーフのフェイスさんは斥候や遊撃を行うために明確なポジションはありません。
わたし達が森の中へ入ってから数分。
問題が発生しました。
「うひょぁああ! み、見ろラックス! 蜘蛛とヤドカリを混ぜたような虫がいるぞ!?」
「ひょぇええ! 蜘蛛と貝の混種なら焼いたら美味いんじゃね? 食す? 食す?」
「おひょひょ! 旨そすなぁ旨そすなぁ! じゅるり」
虫食愛好家の皆さんが、虫を見つけては嬉々として立ち止まるので、一向に先へ進まない問題がおきました。
ジディさんも、虫が関わると言葉遣いが変になります。
涎を垂らしながら「旨そすなぁ」と言ってる姿は、なんだか別人のようでちょっと怖いです。
「ったく、あんたらいい加減にしなっ! 今回は共同任務なんだ! 契約違反で訴えられたいのかい!?」
マーレさんの怒号に、
「ラックス…… 後ろで
「セファロ殿、聞こえるでござるよ…あれは山猿の間違いでござろう?」
2人はマーレさんの怒号にも委縮せず、むしろこそこそと何やらマーレさんを挑発しています。
ワーグさんとフェイスさんが頭を抱えたのが見えました。
凄い勢いで
「うぐっ!?」「んがっ!?」「ぎゃっ!?」
ゴツンという音と共に悲鳴を上げる3人。
わたしも一度マーレさんにやられたことがありますが、あれ本当に痛いんですよね……
「また殴られたくなかったらちゃんと依頼を守るんだよっ! 分かったかいっ!?」
巨大な胸を抱えるように腕を組み、蹲る3人に言い放つマーレさん。
3人は蹲りながらも、まだ何かブツブツ言ってます。
「返事はっ!? もう1回殴られたいのかいっ!?」
「は、はぃっ!!」
マーレさんが再度拳を振り上げると、すかさず3人は背筋を正して立ち上がりました。
そこから3人は大人しくなりましたが、流石に可哀想だと思ったので、マーレさんにはわたしからお願いしてみました。
小まめに休憩をとって、その休憩時だけは昆虫採集を許してはどうかと。
誰に反対されることなく、わたしの要望は採用されましたが、休憩の度に彼らから感謝の印として虫をプレゼントされるのだけは本当に嫌でした。
道中、切り裂きトンボや噛み付き蜘蛛の襲撃がありましたが、
この人達は、昆虫に関しては本当に凄いんだなと皆で感心したりしながら、道無き道を進んで行きます。
そしてついに見つけたのです。
わたし達、
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