13 -「ゴブリンvs剣牙獣」

 こちらの戦力は以下だ。



< 攻撃戦力 >

* 木偶ゴブ 6/4(木の棍棒 +1/+0、ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* 戦長ゴブ 3/3(ゴブリン持続強化+1/+1)

* 見ゴブ1 3/2(木の槍 +1/+0、ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* ゴブ1 3/2(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* ゴブ2 3/2(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* ゴブ3 3/2(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)



 総勢6体のゴブリンによる総攻撃!


 首長ゴブから離れることで、持続強化が消えないか心配だったが、どうやら問題ないみたいだ。



 森の中をゴブリンと獣の咆哮がぶつかり合う。


 そんな中、マサトは召喚者として、召喚したゴブリンとの繋がりを強く感じていた。



(ゴブリン達の強い意志が流れ込んでくるみたいだ……)



 次々にゴブリン達が大牙獣との戦闘に入ったことが、なんとなく分かった。


 感じることができた。


 そして、そこには行方不明だった案内ゴブの繋がりも感じることができた。


 ……と言うことは、以下のゴブリンを追加して総勢7体の総攻撃ということになる。



*案内ゴブ 4/3(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)



 これにはマサトも興奮した。


 戦いの熱にあてられて高揚しているだけかもしれないが、死への恐怖など微塵も感じていなかった。



(案内ゴブやっぱり生きてたか!

 今なら何でもできる気がする!

 大牙獣を前にしても、一切の恐怖を感じない!

やってやる!

 殺ってやるぞ!)



 横の茂みから現れた大牙獣の牙を飛び越えるように側宙で躱し、大牙獣の首の付け根目掛けて木の槍を全力で突き刺す!


 大牙獣は首を貫かれ、苦しそうによろける。


 俺は大牙獣の首を貫通している木の槍を両手で持ち、頭と胴体に足をかけ、勢いよく槍を引き抜いた。


 同時に首から噴き出す鮮血。


 その鮮血を浴びないように反転してその場から立ち去る。



 目の前で大牙獣が宙に舞う。


 木偶ゴブが弱った大牙獣を持ち上げて、他の大牙獣に投げつけたのだ。



(あいつ…… 木の棍棒どうしたんだよ……)



 だが、こちらの被害も増えてきた。


 見ゴブ1とゴブ2がやられたのだ。


 周囲を見渡すと、四方から光の粒子が飛んでくるのが見える。


 光の粒子は胸の紋章へ吸い込まれ、紋章の解放を告げるメッセージが表示された。



《 マナ喰らいの紋章 Lv3 解放 》



<ステータス>

 紋章Lv2 → 3

 ライフ 40/40

 攻撃力 2 → 3

 防御力 2 → 3

 マナ : (赤x2)、(緑x6)

 加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護

 装備:なし

 補正:自身の初期ライフ2倍

    +1/+1の修整

    召喚マナ限界突破5



 Lvが上がって、攻撃と防御が1ずつ増えた。


 マナも増えたことで、少し余裕ができたのも嬉しい。



(しかし…… こんな恐竜みたいな奴が群れている場所で、呑気に寝泊まりしていたと思うと、正直背筋が寒くなるな…… って、大牙獣は後何体いるんだよ…… 女の人、無事だといいけど…… あっ)



 思念により、案内ゴブが人を守っていることを感じ取ることができたため、俺は案内ゴブのところへ急いだ。




◇◇◇




 目的の場所に到着すると、案内ゴブの後方に、長い銀髪の美しい女性がいるのが見えた。


 俺はこの世界にきて初めて人に出会えたことよりも、その人物が綺麗なダークエルフだったことの方に衝撃を受けていた。


 その女性も、俺を見て驚いているようだった。


 目を見開いて、口をあわあわさせている。



「怪我はないですか?」


「……え?」


「これ、言葉通じるのか……? 俺の言ってること、分かります?」


「あ、え? あ、ああ…… わ、分かる」


「良かった。じゃあもう少しの辛抱です。必ず助けますから」



 彼女は大口を開けたまま黙ってしまった。


 また何か声を掛けようとして止めた。


 ゴブ3との思念の繋がりが切れたからだ。


 そして新たにマナの粒子が流れてきた。



<ステータス>

 紋章Lv3

 ライフ 40/40

 攻撃力 3

 防御力 3

 マナ : (赤x3)、(緑x10)

 加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護

 装備:なし

 補正:自身の初期ライフ2倍

    +1/+1の修整

    召喚マナ限界突破5



(2体倒して1体やられたか……)



 残りの戦力は以下だ。



< 攻撃戦力 >

* 木偶ゴブ 6/4(木の棍棒 +1/+0、ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* 戦長ゴブ 3/3(ゴブリン持続強化+1/+1)

* 案内ゴブ 4/3(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* ゴブ1 3/2(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)



 案内ゴブが合流したとはいえ、4体まで減ってしまった。


 思念で集合をかけると、すぐさま周囲に集まってきた。



(……思念便利だな)



 ゴブリン達は、俺とダークエルフを守るように陣形を組み、大牙獣達はその更に外側を取り囲むように集まってきている。


 敵は確認できるだけでも6体。


 こちらは配下のゴブリンが4体。



(さて、どうするか)



 手持ちは13マナもある。


 木偶ゴブくらいの中型モンスターと、やはり数が欲しい。



(となるとこれか……)



「ゴブリンの参謀長官、召喚!」



[R] ゴブリンの参謀長官 3/3 (赤)(4)

召喚時:ゴブリン1/1 召喚4



 今までの召喚と異なり、粒子の輝きが強く、マナの放流が激しい。



(これが5マナ召喚か!)



 ということは、それ以上の大型召喚は一体どうなってしまうんだろうか……


 粒子の霧散とともに、襟元の縁が金色でデザインされた紅色の上等なマントを纏った、姿勢の正しいゴブリンが具現化した。


 頭には金の簡易的なデザインのサークレットをしており、どこか威厳のようなものも感じる。



 こいつの呼び名は参謀ゴブにする。


 参謀ゴブの召喚が終わると、周囲に淡い色をした光の粒子が集まりだし、4体のゴブリンが次々と具現化されていった。


 その光景を、ダークエルフが今にも気絶しそうな表情で見ていた。



(あの驚き様…… 一体どういうことだろうか…… まぁ後で聞けばいいか)



 追加された戦力は以下だ。


* 参謀ゴブ 5/4(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)

* ゴブリン 3/2(ゴブリン持続強化+1/+1、ゴブリン一時強化+1/+0)×4体



(見た目が同じゴブリンに名前を付けるの面倒になってきた……

 そのままでもいいかな……)



 これでこちらの戦力は配下9体。


 形勢逆転。


 大牙獣達が怯んだのが、なんとなくだが分かった。


 きっと本能的に勝てないことを感じ取ったんだろう。


 だが貴重なマナ資源だ。


 可能な限り狩っておこう。



「お前ら! 全員生きて返すなよ! 狩り尽くせぇええ!!」



ーーウガァアアア!!!!



 ゴブリン達が、大牙獣達へ次々と襲い掛かる。


 牙を振り上げ反撃する大牙獣。


 しかし、数で勝るゴブリン達に次々と狩られていく。



《 マナ喰らいの紋章 Lv4 解放 》



<ステータス>

 紋章Lv3 → 4

 ライフ 40/40

 攻撃力 3

 防御力 3

 マナ : (赤×3)(緑×18)

 加護:マナ喰らいの紋章「心臓」の加護

 装備:なし

 補正:自身の初期ライフ2倍

    +1/+1の修整

    召喚マナ限界突破5 → 6



 大牙獣を6体倒し、こちらの被害はゴブリン2体だ。


 被害は出たが、個々の戦力的にはもっと被害が出てもおかしくなかったはず。


 善戦した方だろう。


 計14マナ獲得したお陰でLvも上がり、召喚マナ限界突破が6となった。


 これで手持ちのカードはほぼ召喚できる。


 だが、まずはこの後始末と情報収集が優先だ。



 俺は複数の死体が転がっている光景を見て、深く溜め息をついた。


 もともとグロ系のFPSゲームが好きなこともあって、グロい光景には抵抗はなかったが、ここ一帯に充満した血の臭いには頭が痛くなった。


 視覚と聴覚だけで体感するゲームと、全ての感覚で体感している現状とでは、似て非なるものだと今更ながら痛感する。



「この血の臭いに誘われて大型のモンスターがやってきたりとか…… しないですよね?」



 隣で茫然自失していたダークエルフへ顔を向けながら、ふと気になった疑問を口に出した。


 すると、彼女はその言葉に飛び跳ねるように反応し、すぐさま木の影へ移動した。


 何やら空を警戒している。



「濃い血の臭い…… ま、まずい……」



 彼女は、全くこちらを見ずに、うわ言のように呟いた。



「空?」



 まさかなと背中にヒヤリとしたものを感じながら、俺も空を見上げる。


 すると――突如上空を通過する巨大な黒い影。



 いち、に、さん……



(あれは…… ドラゴン? いやワイバーン?)



 木の影で震えながらへたり込むダークエルフ。



「そ、そんな…… 既に捕捉されてる!?」



 これは…… 迎撃しないといけない流れだろうか?


 さすがにあの巨体だと、木々が邪魔してここら辺には着地できないと思うんだけど……



「あれはドラゴンですか? それともワイバーン?」



 俺がそう尋ねると、彼女は一瞬何を聞かれたのか分からなかったような表情をした後、すぐさま怪訝な表情に変えてこう言った。



「ワイバーンに決まっている! ドラゴンは群れないだろ! それに、ドラゴンがハイエナのように、血の臭いを嗅ぎつけて寄ってくると本気で思っているのか!?」


「え、あ、そうでしたか。なるほど。確かにドラゴンには群れるイメージ少ないですね…… 群れる奴もいると思いますが」


「……貴様、何を知っている。いや、一体何が目的で……」



ーーーギャァオオオン!!



 ワイバーンの咆哮が地面を揺らし、その場にいる者の筋肉を硬直させた。


 直後、枝葉を折りながら強引にこちらへ突っ込んでくる巨体の翼竜。



標的は……



(げっ、俺か!?)

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