第5話 イラストレーターについて
いよいよ発売まであと一か月と迫り、書影も解禁されたので少しばかり。
まずは、今回素晴らしいイラストを仕上げてくださった ぽりごん。(@poligon046)
にお礼を申し上げたい。
極彩色の耽美なイラストで瀬奈と優真に命を吹き込んでくださりありがとうございます。
元々自分はライトノベルを専門に書いてきたわけでもなく、普段読んでいる本も一般文芸のほうが多いのが実情です。それでもやはりライトノベルを書きたかった理由としては、一番に来るのが『イラストが付く』ということです。
もちろん、原稿を描いている時点でそれなりにイメージしているものはあるわけですが、実際に絵心があるわけでもない自分にとっては抽象的なイメージしかありません。そこにイラストが付くことで自分の描いたキャラクターがぐっと完成形に近づくわけです。
正直に言います。
本作においてイラストが付くのは読者のためではありません。作者のためです。
多分、こんなことを考えている著者だって少なからずいると自分では思っているのですがどうでしょうか?
受賞が決まり、改稿作業が進む中、担当編集からのメールがあります。
イラストレーターの候補として三名が紹介されました。
太い線で躍動感のあるイラストを描く方
ポップなパステルカラーでとてもやさしいイラストを描く方
そして、細めの線で繊細かつ、底抜けに青春的で、光をとてもきれい描くイラストレーターです。
はっきり言って、どの方の絵もとても素晴らしく、三方のTwitter上にあげられている絵をしばらく眺めて回りました。
ライトノベルにとってイラストはとても重要なもので、新シリーズが売れるかどうかはこのイラストにかかっていると言っても過言ではない。という言葉耳にするのでここは慎重に考えなくてはなりません。
担当編集にはしばらく待ってほしいと言いながら……
正直に言います。
実は、自分の心の中ではすぐに決まっていました。三方のイラストを見て回るつもりが、気が付けば特定の方のイラストばかりを眺めていました。
しかし、先にも述べましたがライトノベルにとってイラストはとても重要なもの。そう簡単に決められるはずもなく、ごく親しい友人数名に相談することにしました。
繰り返しになりますが三方ともとても素晴らしいイラストレーターの方ばかりです。当然好みというものもあり、友人数名の意見は割れました。その中で相談しながらも、ほかのイラストレーターを推す友人に対し、必死に別のイラストレーターがいかに素晴らしいかを説得する自分がいました。
その時に私は気づいてしまったのです。
私はすでに、恋に落ちてしまっていたのです…………。答えは、もう出ていました。
数日後。担当編集から ぽりごん。様がイラストを受けてくれるとのこと。
ここに、また一つのラブストーリーが誕生するのです。
スマホの待ち受けとして登録したその姿を眺めながら、踊る胸を押さえながら改稿作業を進める毎日。
まだラフ画に過ぎないはずのそのイラストにはすでに魂がこもっていました。
長年自分の中でおぼろげなままであったはずの瀬奈の印影が、はっきりとした輪郭を形成し、「ししっ」と微笑みかけてくれます。この瞬間に、自分は「ああ、ライトノベルを書いてよかった」と心から思いました。
日を追うごとにあらたに送られてくるイラストを恋文と呼び、そのたびに新しく変わるスマホの待ち受け。パソコンのフォルダには、ラフ画の段階から完成に近づくすべてのイラストが保存され、執筆の合間、疲れた自分を癒してくれます。
なぜに ぽりごん。さんのイラストはこんなにも私の心を打つのだろう?
その答えはとても簡単なことです。それは、この恋が一方的なものではないからです。
言われなくてもわかっています。これらのイラストのすべてには、愛が込められているのです。
自分の書いたストーリーをくまなく読み解き、こちらの描いてほしいものをすべて。いえ、それ以上に描き切っているからなのです。
まだ、詳しくは言えませんが、とあるイラストの背景。それは、自分の知っている風景でした。自分が物語の舞台として設定した岡山のとある有名な場所がそこには描かれています。
それだけではまだまだ汎用と言えるでしょうか。
すごすぎて、とてもこの場では言えません。ですが、このイラストを見た瞬間にわたしは、原稿の方を加筆しなければならないと思いました。
そのカラー付きのイラストは本書の冒頭に掲載されることになるでしょう。
ほとんどの方はそのイラストを、一枚の美しい絵として捉えるにとどまると思います。
しかし、断言します。
本文をすべて読み終わった後、おそらくもう一度その絵を開き、一度目では得られなかった秘密がそこに描かれていることに驚くことになるでしょう。
こんなものを描くことができるのは、〝愛〟以外のなにものでもないでしょう。
ああ、ぽりごん。さんにイラストを担当してもらえてよかったと、心の底から思う今日この頃。
再三にわたり言いますが、ライトノベルにとってイラストはとても重要なもの。本が売れるかどうかはイラストにかかっていると言って過言ではないと耳にしますが、
自分にはもう、「イラストのせいで本が売れなかった」という言い訳ができなくなってしまったのです。
私の理想としていたイラストの、その何倍も上を行くイラストを提供された以上、本が売れないのは自分の筆力以外に何もないのだと認めるほかありません。
だけど、私としてはもっともっと ぽりごん。さんに新しいイラストを描いてほしいのです。
そのために必要なことは明白。
本作がヒットして、2巻、3巻と刊行していけば、必然としてぽりごん。さんに新しいイラストを描いてもらえるのです。
そのためには、まず本作をヒットさせ、引き続き読者を納得させる続巻を書き続けている必要があるわけで、それを肝に銘じて精進する毎日です。
スニーカー大賞受賞から出版までのエピソードとか自分語り 水鏡月 聖 @mikazuki-hiziri
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