第4話 近況報告 受賞の電話が来るまで2
最終選考は敗者復活の関係もあり期間はかなり長く、母の葬儀やその上仕事の方もとても忙しい期間で(普段、フランス料理と洋菓子のお店を経営している)、コロナで少し落ち着いているとはいえあわただしい毎日。
当然クリスマスの24日が一番忙しい日なのですが、準備の23日も当然相当に忙しい。
そんな最中の23日の夜に1通のメールが届きました。
当然、受賞しただなんて話ではない。最終選考に際してのヒアリングがあるとの某編集者様からの連絡。都合のよい時間を教えてほしいということなので27日を指定しました。
母の四十九日のため仕事の方は休業日にしていたので夕方以降は手が空きます。
昼、法事で兄妹がそろっているときにはじめて自分が小説を書いていることを兄弟に話しました。
それまでほかの新人賞で最終選考に残ったことも何度かあったけれど、これまで秘密にしていたのは受賞するまではだれにも言わないでおこうと思っていたのですが、あえてここで言ったのはそれなりの覚悟みたいなものがあったからだと思います。
たぶんそれは兄弟に対してではなく、母に対して自分の覚悟を言いたかったのだと思います。
今度こそ絶対に受賞して見せると
年が明け、母の供養にひと段落つき始め、普段の通りの生活を取り戻しつつあった1月12日。夕方にふと見ると携帯に着信履歴がありました。
先日ヒアリングで連絡をいただいた編集の方からの番号です。
仕事中ではありましたが、とても仕事は手につかず、携帯を握りしめてトイレにダッシュ。
『――銀賞を受賞しました』
「……」
本当に、言葉にならないとはこういうことなんですね。しばらく、無言になってしまいました。心臓はバクバク脈打ち、膝はガクガク震えていました。
「……ありがとうございます」
ようやく吐き出した言葉は、編集者さんと、母に向けた言葉です。
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