第4話 久しぶりの再会
久しぶりに弟、アダムズに会ったウィリアムだが、自分を襲撃者だと勘違いした弟の顔を見て、再開早々大爆笑をしていた。
「ッフ、ッハハハハハハハハハハ!!」
「あっ、兄上!!」
「アッハッハハハハハハ!!」
「ど、どうしてここに?誰かにばれたらまずいですよ!!」
「ッフ、ッハハハハ、、、い、今の、、か、お、、お、面白すぎ、、ッフッハハハハ!!」
「兄上!!聞いていますか!!!いい加減にしてください!!!」
「ッハハハハッハハハハ!!」
その後もウィリアムは笑い続ける。
「———っもういいですっ!!」
笑い続けるウィリアムにしばらく抵抗していたアダムズだが、あまりにもウィリアムが笑いすぎるため、アダムズはだんだん機嫌を損ねていた。
それに気づかずウィリアムは笑い続けていたのだが、さすがに怒って部屋から出ていこうとするアダムズには気が付いて、からかいすぎたな、と一人反省しアダムズに声をかける。
「すまんすまん、あまりにもアダムズが必死だったから、、ついな……」
「ついな…じゃないですよ!!もういいです!!兄上なんて知りませんっ!!」
「…まぁまぁ、落ち着けって、、何もお前を揶揄うためにわざわざこんなところに来たわけではないんだから。」
ウィリアムがそう言うと、アダムズはドアに向かう足を止めて振り返る。
話を聞く気になったと判断したウィリアムは続ける。
「フィリップ兄上が心配なんだろ?
そして、お前は助けたいと思っているけど、何をすればいいかもわからないし、他の兄上たちは使い物にならない。それで途方に暮れている。そんなところだろ?」
「……………………………………」
「まぁ、兄上たちが碌でもないのは今に始まったことではないし、頼るのは諦めろ。ていうかそもそも、この国の上層部に碌な人間なんて皆無だからな、ッハハハハ」
「笑い事じゃないですよ!!!」
そうやって真剣に怒るアダムズだが、ウィリアムが言ったことは否定できない。
それは常々アダムズも感じていたことだったからだ。
しかしそれを直接口に出して、もし誰かに聞かれようものなら命がいくつあっても足りない。そんなことを大声でウィリアムは言い切ったのだ。
アダムズからしたら命知らずとしか言えない。
にもかかわらず、ウィリアムはさも当然のような顔で皇族を批判する。
「そもそも、皇帝である父上があんなんだからこの国は終わってるんだよ。まあ、今となっては俺が自由を手に入れられるきっかけを作ってくれたからある意味では感謝しているがな。」
「あ、、兄上、その辺にしないと、、」
あまりに堂々と反逆罪レベルの暴言を吐き続ける兄にさすがのアダムズも心配になって制止する。
すると、ウィリアムも、やってしまった、みたいな顔をして切り替える。
「そうだった、そうだった。今日はこの国の文句を言いに来たんじゃなかったな。
アダムズの願いを叶えに来たんだったな。文句を言うのは今度にしよう。」
そうではないのだが……、とアダムズは思っていたが、それをいちいち指摘していては話が進まない。そのため、ウィリアムに今後どうするつもりなのか尋ねることにした。
「ウィリアム兄上は、フィリップ兄上を助けることはできるんですか?」「知らん。」
即答だった。
ここまで来たからには何か策でもあるのかと思っていたアダムズは絶望する。
それが顔に出ていたのか、さすがに知らんの一言ではかわいそうだと思ったのか、ウィリアムは続けて言う。
「今はまだ何も知らないから何とも言えんが、何とかなるだろうよ。お前にはまだ言ったことがなかったかもしれないが、俺は優秀なんだ。事件のひとつや二つ解決してみせるよ。」
「ほっ、本当ですか?」
先程までの暗い顔から一転、満面の笑みを浮かべ、一縷の望みにかける思いで尋ねるアダムズ。
それを見て、ウィリアムは、
――—我が弟は相変わらず可愛い。やはり、子供は難しいことを考えず、ずっと笑って楽しく生きているべきだな。この子供らしい笑顔は無敵だ。こんな顔をされてはどんな願いも叶えたくなってしまう。———
などと考えていた。
「ウィリアム様もまだ十分子供でございますよ。」
相変わらずのブラコンのウィリアムに、先ほどから気配の全くなかったクロウが突然声をかける。
それを聞いたウィリアムは不服そうに、クロウの言葉に応える。
と、同時にアダムズも声を上げる。
「だからクロウ、ナチュラルに心を読むのはやめろ。」
「!!!…くっ、、ク、クロウさんっっ!?いつからそこに!?」
「最初からおりましたが?」
クロウの唐突な登場にアダムズが幽霊でも見たような驚き方をする。慣れていない人ならこうなるのは仕方がない。
それほどクロウのステルス性はすごいのだ。ウィリアムでもいまだに驚く時がある。
アダムズの問いに真顔で答えるクロウだったが、気配が全く察知できていなかったアダムズは衝撃を隠せない。
そのまま、クロウに質問を続けるアダムズを見ながらウィリアムは明日の朝に予定があることを思い出し、そんなに時間がないことに気づく。
現在の時刻は17時。
クロウを質問攻めにしているアダムズにウィリアムは、今後の予定を話す。
「アダムズ、悪いが俺は朝には帰らないといけないんだ。」
「………………では、すぐに解決できるわけではないのですか?」
ウィリアムの話を聞いてこの世の終わりのような顔をするアダムズ。表情がコロコロ変わって面白いとウィリアムは思うが、可哀想なので早めに安心させる言葉をかける。
「そうではない、今晩中に解決してやると言っているのだ。」
「!!!そんなことができるのですか?!」
「まあな、、ところでフィリップ兄上を助けたらどうすればいい?ここに連れて来ればいいの………」
そこまで言ってウィリアムは背後に何か嫌な予感を感じる。
―――この感じ………間違いない………まずいな、早く逃げるしかあるまい……———
「あっ、アダムズ、兄上を助けたらここに連れてくるから、後はなんとかしてくれ。あとここに俺がいたことは絶対誰にも言うなよ!ではな!」
そこまで一息で言うとウィリアムはクロウとともにアダムズの部屋から忽然と姿を消した。
――――――――――――――――――――
ウィリアムがいなくなった後のアダムズの部屋にて――
「バァーーーーン!!」
と音を鳴らしながら勢いよく扉を開けて部屋に飛び込んできた、美しい烏の濡れ羽色の長い髪に、吸い込まれるようなネイビーブルーの瞳。見た目は20代と言われても誰も疑わないような美女――ウィリアムとアダムズの母親、マリーナ・ロレーヌ・ロイエンタール
彼女は部屋に入ってくるなり部屋中を歩き回りながら匂いを嗅ぎ、しまいには唐突にアダムズの肩を掴み、激しく揺すりながら
「今!!ここに!!私の愛しの愛しの!!ウィリアムがいたでしょ!!どこにいったの?!!!」
と、アダムズを問い正し始めた。
アダムズは、なんの前触れもなく部屋に訪れたのがウィリアムだとわかるまで直接会った自分ですら時間が掛かったのに、なぜ直接会ってもいないマリーナがウィリアムの訪問を知っているのか驚きを隠せず、危うく口を滑らせそうになった。
しかし、アダムズは今から兄に助けてもらう立場。兄との約束を破るわけにはいかない。
かといってこのまま何も言わなくては、自分の首が折れてしまう。
せめてもの抵抗でマリーナに話しかけるが、
「は、母上。離してください。。。首が、……首が、、折れて、、、」
「そんなことより、どうなの?!
ウィリアムが今!ここにいたの?!居なかったの?!」
―――だめだ、、、この人には今『はい』以外の何を言っても無駄だ―――
そうアダムズが悟り、兄には申し訳ないが真実を言おうと思ったところで意識が遠のいてきた。
そのとき丁度、部屋の扉が開き、メイドが息を切らして入ってきた。
「マリーナ様!!どうなさったのですか?!ひとりで走っ…………て……って、アダムズ様!?
マリーナ様!!そんなに激しく揺すってはアダムズ様が死んでしまいます!!」
「えっっ?!………っあ!、ごめんなさい、アダムズ。私としたことが、我を失っていましたわ。
って!アダムズ!しっかりして!!アダムズ!!」
「アダムズ様!!しっかりしてください!!」
「「アダムズ様!!!アダム………!………ズさ………ま……!……………」」
幸い自分は助かったようだと悟ったアダムズは周りの焦った呼びかけを聞きながら、そのまま気を失っていったのであった。
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