第4話

そのキスの後、あたしは彼からの誘いを断り続けた。


怖かったからだ。


あんなに『友情だ』と思っていたはずなのに、次に会ったら自分が崩れてしまいそうで。

次に会ったらどうなるのかわからなくて。


友情だろうが恋情だろうが、あたしはまるで自分の半身のような彼を好きだったんだ。


だけど。

あたしと彼には、恋情としての『その先』は無い。


でももう、友情だけの二人には戻れないだろう。


あんなに居心地のいい二人だったのに。





彼と会わないまま、彼の式が一週間後に迫った金曜の夜のこと。

もう来週末には結婚式を挙げて新婚旅行に発つんだなあ、などと考えていた時、彼から電話がきた。


「最後にもう一度ちゃんと会いたい」と。


迷ったけれど、あたしもあのままになってしまうのは嫌だったので会うことを了承した。




思えば、その時の彼は確信犯だった。

あたしが彼の車に乗ると、そのまま高速道路を走って。

何処へ行くのか何も聞かされないまま、四時間ほど。

高速を下りたのは金沢だった。


「一度、遠出をしてみたかったんだ」と、子供のように笑う彼に少し呆れたけれど。

せっかくなら良い形で終わらせたいと思っていたあたしは、黙って彼に従った。



朝を迎えると、前日の雪で白く飾られた兼六園はとてもきれいだった。



でも、雪のある所に行くとは思ってもいなかったあたしは、軽装だったためか風邪をひいて熱を出してしまったのだ。


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