カンパネラを鳴らして3
雄大は検死官から渡された資料を眺めながらため息を漏らす。
二階堂弥生、DNA鑑定の結果不一致と書かれていたからだ。じゃあ、あの死体は誰なのだ?二階堂弥生はどこへ?
事故か事件かもまだ判明していないこの一件。闇が深そうだと雄大は悟った。
「永安、タバコに行かねぇか?
俺、頭使いすぎて疲れちまったよ。」
雄大に声をかけたのは同僚の鈴田だった。
鈴田も雄大と同様、その一件の捜査に関わっている。
「……そうだな。」
鈴田に同意した雄大は立ち上がり喫煙所に向かった。
「どう思う?今回のそれ。俺は事故と思えねぇんだよなぁ。」
鈴田はかちっと100円ショップで買ったライターでタバコに火を付ける。
鈴田のライターから雄大も火を貰いタバコから煙が出た。
「さっき検視官から預かった資料を見たんだが二階堂弥生さんのDNA鑑定が不一致だった。
小夜さんに聞いてもあの場にいたのは自分ら家族4人だけだと言っているし。
その仏さんは一体誰なんだ?って話だし、弥生さんは一体どこへ?って疑問も生まれている。
俺も引っかかることが多すぎて。」
すぅっとタバコの煙を胸いっぱいに吸った。
こんな時、久遠だったらどうするのだろうか?と考える。
しかし、今回の件は久遠に頼ることが難しい。
なんせトラウマがトラウマだからだ。
それにいつも手伝ってくれていたから忘れがちになるが、久遠はつい一年前に大学を卒業したばかりの一般人である。
「今回は久遠さん?手伝ってくれないのか?」
雄大は黙り込んだ。何も言わない雄大に鈴田は不思議に思った。
彼ならすぐに手伝ってくれると思っていたからだ。久遠、あの人が手伝ってくれたらと思ったが鈴田はその考えを振り払った。
一般人に捜査の協力とか頼ってはいけない。
ましてや事件に全くもって関係の無い人間だ。
鈴田の吸っていたぽとりとタバコの吸殻が落ちる。
雄大は1本吸い終わると灰皿に吸殻を捨て、グッと背伸びをした。
「さて、また調査やらなんやらやりますか…」
鈴田も吸殻をポケット灰皿に入れて先に歩き出した雄大の隣に並んだ。
「これからどうするんだ?どこから洗うんだ?」
「そうだなぁ…正直俺もどこから何をすればいいか分からねぇんだ。」
雄大はため息をついた。
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