想いはモノに宿る 4
久遠は歩いている看護師を呼び止めた。
「あの、すみません。自分警察関係者の者でしてちょっとお聞きしたいことがあるんですけど。」
看護師は立ち止まると振り返った。
「あぁ、川畑さんのこと?」
「まぁ、そんな感じです。それとは別に気になったことがありまして…。
ここの看護師や医者はみんな時計を持ち歩いてるんですか?」
「え?時計?懐中時計や腕時計のこと?」
久遠はコクコクと頷く。
「そうですよ?基本的には私たち看護師は腕時計とかは手洗いの関係で腕につけちゃダメなんただよね
だから腕時計はチェーンとかに付けてる人もいるとは思うけど大体はチェーンがついてる懐中時計とかを使ってるんだよ。
先生たちはみんな手術じゃない限り腕時計着けてる人の方が多い気がする。」
「そうなんですね。教えてくださり、ありがとうございます。」
「いえいえ、どうか早く川畑さんを見つけてください。」
看護師がぺこりとお辞儀をすると久遠も軽く会釈をして雄大の所へ向かった。
「おかえり、どうだった?」
雄大は缶コーヒーを開けて運転席で寛いでいた。助手席に久遠は座り考えたことを話し始めた。
「全部説明する。まず俺が見たものから。
感情色は前に説明したから色だけ言うからな?
黄色が先に出てきた、そこから青と紫と赤が見えた。青と赤が近くにあり紫はその2色から少し離れていたんだ。経験からするとあれは誰か2人の感情だ。悲しみと怒る誰かといるのはその相手を嫌悪している人物の可能性だ。
その後見えてきたのは、おそらく誰かが看護師に懐中時計を送っていたと思われるビジョン。
ここまでは分かった?」
「要約すると?」
「懐中時計の持ち主はあの医者では無いはず。本来所有すべき人間の手元になぜないのか?」
「なるほど?」
「雄大…また分かってないな?」
「ご名答〜」
へらっと笑う雄大に久遠は大きくため息を漏らした。そんな久遠に雄大はさっき買った缶コーヒーをわたす。
「今はホットが飲みたい気分」
じとりと横目で雄大を執拗に見つめる。
「さっきまでは温かかったぞ。」
久遠は仕方なく缶コーヒーを受け取り開けるとごくんと飲み始めた。
「なんだよ、飲むんじゃねぇか。」
「貰えるものは貰わなきゃな。送ってくれた人に失礼だろ?」
「けっ…言うじゃねえか。」
雄大はニヤリと笑って車を走らせた。
「そういえば薬物が検出されたって言ってたけど何が検出されたんだ?」
「大麻。微量だったがな。」
「大麻…?」
「詳しいことは分かってねぇんだよ。
あーそれと末期ガンだったってのは上がってる。おおかた癌になって自暴自棄になったとか?」
「……。被害者のその氷室の住んでいた場所に向かえるか?」
「言うと思った。安心しろ今、向かってるとこだ。」
信号が赤になり車が止まる。
ゆっくりと雄大の運転する車が止まった。
久遠は飲みかけのコーヒーをグッと飲み干した。
「何を考えてるんだ?」
雄大は横目で久遠をチラッと確認する。そんな本人は窓の外を眺めていた。
「……」
聞こえていなかったのか返事がなかった。
雄大は仕方なしに息を漏らし運転に集中した。
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