8 入間人間といもーとらいふ
2022/09/11 この章の最後で『この本ですら本棚にある』と述懐していた本がありましたが、普通に悩んだ末に手放していたので、最後数行を大きく改稿しています。
わたしが入間人間の大ファンでいるのをやめよう、少しでも距離を取ろうと決めたのは2016年秋・9月のことだった。
直接の原因はシリーズ物の乱発や百合への偏り方ではない。少なくとも百合についてはまだ楽しみに読めていた頃のことだ。
わたしに距離を置く決意をさせたのは、『いもーとらいふ〈下〉』だった。
勿論、それまでだってシリーズ乱発打ち切り連発に振り回されたり、時には自分の気持ちに振り回されたりとだいぶグロッキーで、嫌気がさすのも時間の問題だったのかもしれないけれど。
それでもあんなことになったのが別の小説がであれば、それはもっと先延ばしになっていたのではないかと思う。
なにせわたしは『いもーとらいふ』という小説が大好きだったのだ。
入間人間の『いもーとらいふ』という作品は電撃文庫MAGAZINE Vol.42から数話連載されて、その後例の如く音沙汰が途切れていた小説だった。
そして、当時わたしが一番期待していた小説でもある。
『いもーとらいふ』の第1話はほんとうに、ほんとうに気持ちが悪かった。
その文章を気に入って壁に貼っているという文章をTwitterで見たときだって、「確かにそれだけ気に入る人がいてもおかしくないかも」と最終的には納得した覚えがある。
それだけの存在感を持った文章で、小説だったのだ。
何より印象的だったのは最後のこの数行だった。
“ これは俺と妹の物語だ。
俺にとって妹は最愛であり恋人であり妻であり、そして、やっぱり妹だった。
巡り巡ってそうやって悟るまでの、気持ち悪くもありふれた物語だ。”
(電撃文庫MAGAZINE Vol.42 P534『いもーとらいふ 0歳~15歳』より)
どんなお話を聞かせてくれるのか、わたし、本当に楽しみにしていたの。
絶対傑作が出てくるに決まってるだろうと確信があった。いや、今だって最初の章を読み返せばそういう気持ちにさせられるだろう。
だから上下巻の刊行予定が出たときは飛び上がるほど嬉しかった。
フライさんの描く『妹』そのものの表紙も素晴らしく、早く手元に置きたくて仕方がなかった。
小学生がサンタクロースを待つくらいには楽しみにしていた気がする。
上記で引用した最高に気持ちの悪い表現が削除された〈上〉を読んだときだって、別に中身の質が下がるだとか、そんな心配はしていなかった。
むしろ帯に『一生涯』と明言されたことにわくわくしていたし、なんなら消えていた下りも〈下〉のどこかに使われるかもしれないし、使われてほしいなあと思っていたくらいだ。
まさか妹の年齢を章題にしたその小説が『0~15歳』『16~18歳』『19~20歳』『21歳』……と続いた先で『30歳』の次にほんの数行しかない『87歳』が書かれるなんて。
雑誌で読んで楽しみにしていたものとは随分と違ってしまっていた『いもーとらいふ〈下〉』、しかもあとがきを見れば章題が飛んだのは当初の予定とは違ったということが明言されている。
わたしは心底、失望した。
明言されている分、引導の渡し方としては優しいものだったのかもしれない。
こんな言い方は露悪が過ぎるかもしれないが……わたしは「大手を振って」、ずっと追いかけ続けるのを辞める決意をした。
元々舵が切られる方向に首をかしげることはあった。今まで致命傷にはならなかっただけで。
『電波女と青春男』の最終巻が雑誌掲載のあらすじと方向を異にしたときも残念に思ったし、アニメ的な表現に挑戦しようと思い立ったのか
“がしぃと頭を掴まれた。「うきー」と腕を上下にぶんぶん振ってみるけど効果なし。”
(引用元:電撃文庫MAGAZINE Vol.15 P53『電波女と青春男 丹羽真の◯◯◯記念日』内『リュウシさん、実る』)
などと書いたときは頭が悪い文章に本気で頭を抱えた。
これが、普段の描写が地に足ついている分信じられないほど浮いているのだ。
だけど『電波女と青春男』は最初からそれなりにライトノベルらしい読み口で、雑誌掲載版『いもーとらいふ』のぬるりとした文章ほどには心を掴まれることはなかったのもあり、失望するほどではなかった(◯◯◯記念日のときはアニメ化を前にしてこいつ死ぬんかなと思ったけど)。
結局、2016年までの入間人間の小説やインタビューやエッセイ等でわたしの家の本棚から欠かれているのは、元々手に入らなかった5M と、失望のあまり処分した数冊だけだ。
手放したのは『いもーとらいふ〈下〉』『安達としまむら6』『安達としまむら7』、それといつの間にか手放していた(?)『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11』。
逆に言えばそれ以外は全部持っている。ほとんど、ぜんぶ。
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