7 入間人間が書く百合とか、モヤつきだとか

注意 ※毎日更新でもしないと書き進めないのでこれで投稿してしまおうと腹はくくったはいいものの、ここまでの章以上に内容の正確性に保証がありません。妄言と思って読んでください。



 入間人間のデビュー作『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』の元となった応募原稿『幸せの背景は不幸』では、主人公だけ性別が女の子だった。

 つまりあれは元々女の子同士のお話だったのだ。それも含めての文章のしかけというだけかもしれないけれど。


 元原稿を抜きにしても、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』にはちょっと強めの女同士の関係が含まれているイメージがある。

 恋日と奈月の関係もそれなりに(いや、あれそれなりでいいのかな)濃かったし、八事と河名の関係も色々な意味で強かったし、主人公の写し鏡である湯女も妹の茜を大切にしているのが印象深い。


 しかしデビューから五年ほどの中で、作品・シリーズの主たる部分に女同士の深い関係性を持ってくることは、短編を含めてもほとんどなかったはずだ。

 恐らく『売れ線』とは程遠かったからだろう。担当編集だった人の本の試し読み(個人的に趣味が合わない人なのわかっていたのでその本は買っていない)からの推測も含めてそう思う。


 百合が増えてきたのは、担当編集の方の提案で百合作品を参考に『安達としまむら』を書いてヒットして以降。

 特に、並行して色々と出していたシリーズの中で『安達としまむら』だけが生き残ってから顕著だ。


 そして、今まで中心に据えずにきたのが嘘だったかのように、入間人間は立派な“百合作家”になった。

 というか、『百合』ばっか書くようになってきた。

 男の子と女の子を主役にした作品は、ここ数年では『海のカナリア』くらいだったんじゃないだろうか。

(※『海のカナリア』自体は電撃文庫MAGAZINEで第一話だけ読んだけれど、違ったらごめんね)


 ただの傾倒とか、好みとかだって感じられれば気にもならなかっただろう。

 しかし、引っ掛かる部分を覚えてモヤついてしまうのだ。


 たとえば、極端な世界観のBLみたいに異性が関わらない範囲でしか深い好意が行き交わなくなったり。

 たとえば、初出のシリーズではそもそも他人への反応が薄かった女性に、学生時代女の子の友達にキスされた過去が生えてきたり。


 以前までの入間人間の小説には、女同士のものも含め色々な関係性が出てきた。

 それが一気に偏ったのだ。


 以前だって需要を鑑みたような配置(所謂ハーレム系の構図などのもの)はあったのだから、今はそれが百合だっただけかもしれない。


 けどこれまでの経緯を踏まえて、わたしは、どうしてもバカみたいな疑いを晴らせずにいる。


『ねえ、あなたもしかして、男性主人公が女性に好かれるというのを“都合が良い”と切って捨てたままでも“想い合う物語”を書くための逃げ道として百合を使ってない?』と。

『ねえ、女同士なら、好かれる“主体”が女性なら書けるだなんてばかなこと考えてないわよね』と。


 どうしてもうたがってしまうのだ。

 そのせいで、女同士至上主義すぎて神各化している百合厨(※)に対してもいつも思っている「それって結局ぼくらのことばかにしてません?」が頭をチラついて仕方がなくなる。


 こんな風に言われたってただのイチャモンでしかないだろう。

 きっと、世間の風潮的に同性が好きなだけのことを変に持ち上げられる空気を感じることがあるとか、社会的に立場を良くしたい人たちがマイノリティを無理やり御輿に乗っけて担ごうとしている流れを感じることがあるとか、そういう居心地の悪さとごっちゃになっているに決まっている。


 でも、だけど、もしわたしの感覚が合っていたとしたら「よりによってあんたが」と思ってしまうのも事実なのだ。


(※百合厨・・・厨というのはそのジャンルについて行き過ぎた振る舞いをする愛好家につける蔑称。つまり百合ジャンルについてのそういう奴)

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