3 入間人間のむかしの評判

 入間人間のことが本気で好きだった頃のわたしにとって特につらかったのは、入間人間周りの評判には誤解と呼べるものが多かったことだ。

 そして『ライトノベル作家』という立ち位置もあり、変に下に見られることが多かった。

 二十歳前後の女の子だったわたしには結構真剣に嫌なことで…………いやごめん嘘ついた性格上そういうのいくつになってもキレる方。


 『ファン』の立ち位置でよく見ずバカにしているような子にも遭遇した。

 個人的な経験から引っ張ってくることしかできないが、最初にクロスオーバーを出した『茸姫』『携帯電波』『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん8巻』の関係について話したときのことはよく覚えている。

「入間さんですよ? どうせキャラ出してみただけですって、そんなちゃんとした繋がりあるわけないじゃないですかw」(大意)

 …………こいつホントにファンだったんだろうか。思い出したら疑問に思えてきた。


 勿論わたしだってつまらなければつまらねえって言うし、おかしな部分は普通におかしいと思うし言う。

 たとえば入間人間は基本的に取材をしない男なので、そういう点。カラオケ屋の機械すらうろ覚えで意味不明な仕様に書いていたときは突っ込んだし、某ミラノ風ドリアにチーズが使われているような記述をしていたときもしっかりしてくれと思った。確かにサイゼのチーズ美味いけど普通のには入ってないよバカ。

 だけど読めばわかる部分にさえ盲目に、闇雲に「脚本の人そこまで考えてないと思うよ」するのだけは違うだろう。


 やはりというか、そういう見方で雑に断じるのは自称ファンだけではなかった。

 メディア化に際してはそんな機会も増えていって、わたしも色々な場面で違和感もごもご抱えたり、時によってははっきりと嫌なものを見たりしてきた。

 ソースをなくしてしまって、記憶違いがあっては中傷になってしまうので、具体的には言えないことばかりだけど。

(ここでオチを言っておくと、この辺を具体的に語れない時点でこの3は殆ど意味なし記事です)


 雑に断じられがちだった理由は、誰かのパクりだと言われていることだったり、つまらない感傷だと笑われてしまうようなことを、これまた中二っぽいと笑ってしまう人がいる物語の上でまじめに考える子たちを書いていたことだったり、少なくとも高尚な書き口は選んでいなかったり……色々あっただろう。

 わたしはそんなふうに言われても香り立つ彼らしさを愛していたし、つまらない感傷だと笑うような書き方をしないことや、柔らかい書き口を愛していた。


 わたしが愛していた部分の中には、当人がとっくに否定してしまった価値もあるだろう。なんとなくと、あとは書いてきているもので、わかる。

 『僕の小規模な奇跡』の“主人公”である彼の述懐が、文庫化に際して大部分違う肌触りになってしまった辺りからショックなら何度か受けている。

 人は変わっていくのが自然だってことも知っているし、それを受け入れられないわけでもない。

 でもそうやって変わっていった一因がとやかく言われすぎたことだったとしたら、わたしは間違ったことを言ってきた人たちを誰一人として許せそうにない(※正しい内容ならどれだけ言ってもいいと思っている)。


 ただの読者に、ましてやわたしのように不器用で抜けてて直情的なやつにできることなどはひとつもなかった。

 『いくらなんでも』な誤謬かつ手が届く範囲の者の発言であったとしても、上手く誤解を解けたことはほとんどなかったはずだ。


 指摘してみてはねつけられたことで一番驚いたのは、『バカが全裸でやってくる』について「京都の大学生」と書いていた奴に「名古屋です」と指摘したときだろうか。

 記憶違いでなければなんだかとても自信ありげに突っぱねられてしまったのだが、あの人はどこを見て京都だと思ったのだろう。やはり『ハイハイ京都京都』とロクに見ずに決めつけていたのだろうか。

 もっともこれは雑な断定ではあっても、入間人間自身については下にも上にも見ていない記述だったが。

 入間人間は基本的に取材をしない男なので(二度目)大学を出すときはほとんど自分の出身大学がモデルで、たまに違うときもあまり具体的に書いていないときくらいだった。今は引っ越したから少し変わったが、住んでいた岐阜や大学のあった名古屋の描写ばかり繰り返すような奴だったのだ。

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