手紙:大学の話

拝啓 暖房を入れている室内でもやっぱり寒い今日この頃、そちらはここより少しでも暖かいと良いのですが、如何おすごしでしょう。

偶に煙草が吸いたくなるので、お外寒いのやっぱり困ります。


さて、そういえば例の名古屋の坂の上の大学に行くことにした経緯って話したことありましたっけ。

勿論、先輩の――入間さんの後輩名乗れるようになるからっていうのが大きな理由なんだけど、経緯というかそっちの話ね。


ほんとのところ、けっこうな割合あてつけだったのですよ。当時すごく仲良しだったお友達と喧嘩別れした勢いの。

元々行ってみたいところではあったけど、大学進学自体人生計画に入っていなかったし。


大学に行ったこと自体はそんなに後悔していません。

奨学金の返済めっちゃあるけど、小説に出てきた抄子せんぱいたちや景せんぱいたちのこと身近に思えて嬉しかったし、紆余曲折で休学したりもしたけど、結果的に豆が入学してくる年に卒業できたのも面白かったから。それに、勉強も楽しかったし。まあいいかなって思えているときの方が多いです。

田舎で朽ちていくだけの予定だった人生で思いのほか音楽がやれたのだって、多分名古屋に出て行ったからだと思っていますし。


でも大学に行くって決めたときの意地は今でもよくなかったと思って、すごくすごく後悔しているの。

だって、先輩のことが好きだからそうしたのか、友達にむかついてそうしたのか、自分でもわけわからなくなっちゃったし。

先輩のこと大好きな気持ちを自分で汚してしまったのね。最低だなぁって。

だから、まっすぐただ好きっていられる人のことは、余計にまぶしく思えていました。


……いやぁ、当たり前だけど恥ずかしい話ばかりしてしまいますね!

まだちょっと照れが勝ります。自分のお話をするのに、自分のへたっぴさがどんどんわかるようになってきちゃったし。

その上、最近は昔より社交的な振る舞いをしてみていたから、こう、内向きの……照れとか衒いとか人の目とかの前のそのままの気持ちにチューニングを合わせるのに時間が掛かるというか。

言い訳ばかりで嫌になる前に、感覚くらいは取り戻したいところです。


それでは、今日はこの辺で。

敬具


令和四年二月十八日

片手羽いえな

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