2 入間人間と西尾維新
入間人間は、何かと西尾維新とくらべられてきた作家だ。
入間人間を好きになりつつあった最初の頃、わたしはネットの海に飛び込んでグーグル検索の底の底まで全ての感想を漁った。
冗談抜きで本当に全部読んだ。
当時のグーグル先生は今ほどバカ向けではなかったので、表記揺れも別途検索し直して、とにかく全部だ。
僥倖なことに、当時のグーグル先生はいけずでもなくSEO対策優先の資本主義の犬でもなかったので、底の底に沈みこんだ個人ブログの感想までまっすぐ潜れた(検索避けされているページはbaiduの世話になった)し、ブログ検索などというブログ記事専用の検索ツール(日付順のソートまで出来た)まであった。
勿論、感想漁りは他の人の作品でもしていた。自分の目から見たものだけじゃ足りなくなっちゃう強欲さが昔からあったので。
元々感想を読み漁るのが好きすぎて2ちゃんねる(週刊少年漫画板)に辿り着いてしまうタイプだったし。
そこで何度も目にした名前が、西尾維新だった。
わたしに言わせればお好み焼きともんじゃ焼きくらい違う作風の作家たちなのだが、一部の西尾維新のファン――言ってしまえば信者からしたらかなりそっくり(?)のようだった。
奴らはよく言ったものだ。
『入間の作るお好み焼きはふっくらしていない』と。
バカ舌。
西尾維新の言葉遊びは完全にラップだし、入間人間の言葉づかいは遊びが多いがラップの世界観だけで出来ているのではなかったので、文体は元々結構違っていたのだ。
影響を受けた作家として答えたことがあるのは本当だ。
エクス・ポ4号にて、メールインタビューのインタビュアーが、西尾維新や佐藤祐也の名前を挙げた長文で好きな作家を質問した際に、受けた影響が強い作家として挙げられていたのだ。
挙げられた名前は、西尾維新と、乙一と、米澤穂信。
よく覚えている。だって一通り全員読んだもの。
(何なら他のときに挙がっていた上遠野浩平や伊坂幸太郎も読んだしタイトルのパロディ出てきたって理由で舞城王太郎も読んだしジョジョネタ多かったから以下略)
だから、確かに入間人間は西尾維新の小説を読んだことがあり、影響も受けてはいたのだろう。
わたしが読んでみても、影響元かなと思えるところは三者ともに見受けられた。
しかし入間人間は一度も西尾維新を「尊敬している」と形容したことはないし「真似して練習した」と言ったこともないし、「弟子入りしていた」事実もない。
何故か「そうらしいよー」という話がTwitterで出回っているのは見た。しかもリプライで。ソースと知性はなくてもお友達と口は利けるのだ。
入間人間の小説にもこのような台詞がある。
“世間の評判や噂なんてアテにするなよ。尊敬するなんて一度も言ったことがない作家を世間では尊敬していることになったり、いい加減なものだよ”
(入間人間著『エウロパの底から』P131 L6~7より引用)
偶然なのか、入間人間がエゴサを嗜んで(お父さまがエゴサを嗜んでらしたので、聞いて)参考にしたのか、それとも直接言いに行ってしまったおバカさんがいたのかは定かではないし、邪推は止すようにと、我々読者はあの小説を書いた誰かに止められているけど。
ちなみにわたしは、西尾信者たちの言葉を確認するために戯言シリーズを全巻読み切っている。
わたしが好きな小説のことを『エピゴーネン』とか『劣化コピー』とか散々な口を叩く人がたくさんいるのだから、面白くはなくても発見はあるのではないかと、最初はそれなりに真面目に期待して読んだ(勿論「はーさぞ名作なのでしょうねえ?」という気持ちもあった。そりゃあ大いに。むかつくもの)。
結局面白みは感じても記号的な書き方はなんだか居心地が悪くて、発見も特になく……あと結構違うところが多くて、なのに信者たちはやっぱり上記のように振る舞ってはばからないしで、わたしは西尾維新が嫌いになった。
西尾さんはわたしが嫌いな小説書いただけだったけどそれだけでも大嫌いになれてしまうのがわたしだし、その上信者がアレ。一時期は名前も見たくはなかった。
(『パーカー着てるキャラはカゲプロのパクり』とかと同じでいつの時代もそういう子供はいるってだけの話なんだろうけど眼球舐めまで西尾のパクリ扱い等はやっぱりちょっと引くし……)
今にして思えば、当時真面目くさって話すのが流行だっただけで、現代オタクがやるパワーワードの応酬やクソデカ構文みたいなものだったのかもしれないね。
ちなみに影響元として明言されている中でわたしが一番好きなのは米澤穂信である。小鳩くんの一人称の文体かわいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます