一章『異界① 過去の夢』

 十崎裕人とざきゆうとは少し昔の夢を見ていた。

 今でこそ平穏を望む少年だったが、当時は不良ワルガキで同年代はおろか大人でさえ手を焼くような少年だった。

 別に体格は良いわけではない。

 一対一なら勝てる喧嘩も相手が二人なら辛うじて。

 大勢ならば素直に撤退するにげるのが十崎裕人と言う少年だった。

 そんな荒れた思春期の頃、誰も止められない少年を少女がいた。

 地味で、周りからも浮いていて、でも自分を偽ること無く真っ直ぐな少女に告げられた。



 ―――――命短し恋せよ乙女ってね。わたしね、実は



 少女は何と言っていただろうか。

 それを思い出せないまま彼の意識は深い底から浮き上がってくる。

 ただ覚えていること、

 それは―――――――――――――――――――。

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