序章『都市伝説⑥ 日常の終わり』
電車に揺られながら裕人は窓の外を眺めている。
いつもの景色、変わらない光景。
その中に一際異質な
「電車からならよく見えますね、『シュライン』」
密音が声を漏らした。
街を上げて建設された複合商業施設の名称で建物内には大小併せて五十程の店舗を内包している。
設立されまだ日も浅く、街では一種の観光地として売り出していた。
「あぁ、結構目立つ位置にあるから目に入るもんな」
今では若者が集まる場所になっている。
ポロン―――――。
電車で小さくも軽快な音が鳴る。
「ん?」
その音で裕人は昨夜、眠りにつく前の事を思い出す。
「(そう言えば……)」
今まで忘れていたが、夜中にLINKにメッセージが届いていたことを思い出した。
時間が時間だったので春陽の返信だと思い無視をしていた。
ふとスマホを手に取ると、
ポロン、ポロン―――――。
と、またもや通知の着信が車内に響く。
一瞬自分かと思ったが、通知は来ていない。
同時に隣でも密音がスマホを手にし確認を取っている。
ポロン、ポロン、ポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポロンポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポロン―――――。
電車内全体に響き始めた異常なほどの通知音に思わず裕人は耳を塞ぐ。
同じく隣でも密音が耳を塞いでいた。
「(が、ああっ―――――何だよッッッ!! 頭が……痛ェ)」
意識が遠退く中、どこかで声が聞こえたような気がした。
その声は愉しげであり、悲しげでもあり、焦っているようにも怒気も孕んでいる―――――そんな矛盾した声。
黎明学園では期末テストを目前に控えたこの日、奇妙な事件が起きた。
それは通学途中の生徒数名が登校をしてこず、連絡も取れなかったという事だった。
それと同時に同様の事件がここ『
行方不明者は確認されただけでも十二名。
その中には十崎裕人、不来方密音の二人の名前もあった。
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