序章『都市伝説④ LINK』
深夜、裕人は一人寝転がりながらスマホの液晶画面を眺めていた。
画面には『LINK』が開かれており春陽とのやり取りが表示されていた。
LINK―――――利用者が相互にこのアプリをスマホにインストールしておけば、通信キャリアや端末を問わずに複数人のグループ通話を含む音声通話やチャットが可能な優れモノで今はメッセージのやり取りをするのに必要不可欠なものだ。
無理矢理に春陽がインストールしなければ一生裕人のスマホには無かった機能だろう。
LINKの友達一覧には春陽ともう一人『
あれから、何か進展があったら連絡を取り合うと言うことで半ば強制的に春陽が連絡をゲットしたのだ。
「不来方か……」
改めて同じクラスの少女を思い浮かべる。
いつも教室の端で大人しくしている彼女は目立った事はしないが、違う意味で目立っていた。
可憐、というより美人な彼女は〝深窓の令嬢〟と言う表現が一番合っていた。
物静かで成績優秀、教師陣からの信頼も篤いので高嶺の花だった。
そんな彼女も色々とあるんだなぁと呑気に考えていたのだが、そんな裕人の思考を遮るかのように軽快な音と共にLINKにメッセージが届いた。
表示された名前は『神代春陽』と出ていた。
『不来方さんから送ってもらったサイトにアクセスしたんだけどどうしてもエラーがでちゃうょ、ないわー』
と、絵文字やら少し理解が追い付かない文章が羅列していた。
少し間を空けて裕人は文字を打ち込む。
『やっぱりガセなんじゃね? 不来方の兄貴は別件で厄介事に巻き込まれてるとか』
そう送った後間髪いれずすぐに返事が帰ってきた。
『でもさぁ、ホントならスゴイ発見なんだよねぇ』
確かに春陽の言う通りだった。
テレビや動画系、ネットニュースもあまり見ない裕人でさえこの『異界渡り《ドリフトドライブ》』という都市伝説は知っている。
あらゆるメディアがこの謎を解き明かすのに莫大な資金や時間を使っているのは有名だった。
「(確かどっかの資産家が謎を解き明かしたヤツに賞金もかけてたっけ)」
最早ブームと化したこの現象に裕人は少し気味の悪さを感じる。
だが、所詮一般人に過ぎない彼にとってそこまで考えても仕方がないと思ってしまう。
そう、春陽がこれ以上場を乱さなければ。
ふと時間を見るとそろそろ二時を越えようとしていたので、簡単にお休みとメッセージを春陽に送りそのまま目を閉じた。
意識が遠退く中、耳にピコンとメッセージが届く音がしたような気がしたが深く考える間もなく裕人は深い眠りについた。
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