第23話
(※クレイグ視点)
僕は憲兵に連行されることになった。
家から外に出た僕は立ち止まって、リズたちがいる家を見た。
僕だけ切り捨てて、自分たちだけ助かろうとするなんて、許せない。
この裏切りの代償は、高くつくぞ。
「おい、さっさと歩け」
僕を拘束している憲兵は、歩くように促してきた。
地面を見ながら、僕は歩いていた。
まさか、こんなことになるなんて……。
僕はもう、お終いだ。
ここから僕が助かる道なんてない。
それくらいのことはわかっている。
だからせめて、あいつらだけは道連れにしないと、僕の気が収まらない。
この僕を切り捨てたこと、後悔させてやる。
先に裏切ったのは、お前たちの方だ。
恨むのなら、自分たちの薄情さを恨め……。
「何もかも、白状するよ」
僕はそう呟いた。
「やっと観念したか」
憲兵がため息をつきながら言った。
「盗んだものの在り処を教える。だから、一つだけ、僕の頼みを聞いてくれないか?」
「お前の頼みを聞く義理などない」
僕を拘束している兵は、吐き捨てるように言った。
しかし……。
「まあ、盗んだものを探す手間が省けるのならいいだろう。もちろん、その頼みごとによるが……」
リーダーのような人物は、僕の頼みに応じてくれそうだった。
「簡単な頼み事です。盗んだものの在り処を教えるので、今からその場所に行きましょう。そしてそこに、リズたちを呼んでほしいのです」
*
(※リズ視点)
あぁ、危なかった……。
もう少しで、私たちまで捕まるところだった。
指紋を残していた以上、クレイグはどうやっても助からなかった。
下手にこちらが話を合わせても、ろくなことはない。
彼を見捨てるのが、あの場における最善の手段だった。
彼のことは愛していたけれど、一番愛しているのは、自分自身である。
そんなの当然のことだ。
誰だって、自分が一番である。
それにまさか、私たちが計画に加担していることをバラすなんて……。
どれだけ口が軽いのよ
正直彼には、失望していた。
まあ、彼が何と言おうが、証拠がない以上、ただの戯言である。
また、憲兵がやってきた。
さっき見た顔である。
証拠がない以上、私たちを逮捕するというのはありえない。
いったい、何の用だろうと思っていると、彼は私たちに言った。
「あの、少しあなたたちのお店に来ていただけませんか? そこで、伺いたいことがあるのです。べつに断られてもいのですが、うしろめたいことがなければ、断る理由はありませんよね?」
なんだか、嫌な予感がした。
これからいったい、何が始まろうとしているの?
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