第22話

 (※クレイグ視点)


「なあ、リズ、今日僕はずっと、君たちと一緒にいたよな?」


 僕は助けを求める視線で彼女を見つめた。

 彼女もそのことには気付いたはずだ。

 アリバイを証明してくれたら、まだ助かるかもしれない。


 いや、しかし、指紋は決定的な証拠だ。

 そこに僕がいたことが証明されてしまう。

 いや、テープについていた指紋だから、盗んだことの証拠にもなる。

 助けてくれ、リズ……。


「いいえ、今日は彼はずっと見ていませんでした。先ほど家に帰ってくるまで、彼には会っていなかったので、どこで何をしていたかはわかりません」


「……はあ?」


 憲兵たちに証言するリズの姿を見て、僕は落胆していた。

 そんな、この僕を、見捨てるのか?

 あれは全部、僕たち全員の計画だったじゃないか……。

 ここは、協力し合うべき場面ではないのか?


「ああ、私も見ていないな」


「ええ、私も見ていません」


 そんな……、お義父さま、お義母様……、あなたたちまで、僕を見捨てるのか?

 そもそもお義父様……、あなたに頼まれたから、僕はあの店で盗みを働いたんだぞ……。


「ふぜけるな! どうして嘘をつくんだ! 僕たちは、ずっと一緒にいただろう!?」


 僕は必死に叫んだが、憲兵に取り押さえられた。

 

「みんなの計画だったはずだ! どうして僕だけが、こんな目に遭うんだ! 憲兵の皆さん! この人たちは、僕が盗みをすることを知っていました! 計画に加担していたのです! 全員逮捕してください!」


「計画? 君は、何を言っているんだ? そんな証拠はないし、そもそもそんな計画など存在しない。どうやら彼は気が動転しているようだ。憲兵さん、早く連れて行ってください」


 お義父様の言葉を聞いて、僕は憲兵に連行された。


「ふざけるな! 僕を裏切ったな! このままただで済むと──」


 僕は必死に叫んでいたが、憲兵に口を縛られ、何も話せなくなった。


 どうして、こんなことに……。

 この僕だけ売って、自分たちは助かろうとするなんて……。

 指紋という決定的な証拠が出た以上、下手に庇ってぼろを出すことを避けたのか……。

 なんて薄情な奴らだ……。

 家族のような物だと思っていたのに、裏切るなんて、許せない。


 リズの店を出ようとしたあの時、嫌な予感がしていたんだ。

 まさかその予感が、的中するなんて……。

 みんなのことを、信じていたのに……。

 僕が裏切られるなんて、あり得ないと思っていた。


 ありえないと思っていたが、もしもの時のための準備はしていた。


 この僕を裏切って、ただで済むと思うなよ……。

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