第14話

 (※リズ視点)


 さて、ポーションを作るわよ……。


 幸いこの店には、ポーションを製造するための器具が揃っている。

 材料も、棚に分けて入れられている。

 よくわからないけれど、たぶん材料だろう……。

 器具もあって材料もあるなら、何とか作れそうだ。


 少しはお姉さまと作るものとの差異があっても、それは誤差というもの。

 材料が同じなら、お腹の中に入れば、同じ効果が得られるはず。

 私はさっそく、ポーション作りに取り掛かった。


 器具の量もそれほど多いわけではなく、使い方も、わからないこともない。

 最初は綺麗な液体にならず、粘性のあるものになっていたけれど、何度か繰り返すうちに、一つ、それらしいものができた。

 

「これなら、いけそうね……」


 お姉さまが作った物よりも、多少色が濁っているように、見えなくもない。

 でも、サラサラの液体になっている。

 それに、使っている材料は同じだから、お腹の中に入れば効果は同じはずだ。

 私は同じ方法で、何個も何個もポーションを作った。


 その間、販売はお父様たちに任せておいた。

 ここでも、お姉さまとの勝負の時に学んだ、役割分担が役に立ったというわけだ。

 そしてついに、私が作ったポーションを、店の陳列棚に並べる時が来た。


 これで、在庫切れの心配もない。

 問題はすべて、解決したというわけだ。


「私だって、やればできるのよ……」


 残念だったわね、お姉さま。

 私が馬鹿で何もできない無能だと思ったら、大間違いよ。

 これで、あと一、二年の間商売を続ければ、私たちが十分に暮らしていけるお金を得ることができる。


 私が作った方のポーションも、そこそこの数が売れた。

 客が何度か、少し濁っているように見える気がすると言っていたが、問題ないと答えておいた。

 材料は同じなのだから、当然である。


 お姉さまの方は、契約に従って、宣伝の看板を出すことは禁止されているから、立地も悪いし、あまり客も寄り付かない。

 立ち寄りやすい私の店の方に、客は集中しているようだ。


 あぁ……、お姉さま抜きでもできるともっと早く分かっていれば、もっと追放の時期も早めていたのに……。


 まあ、いいわ。

 問題を解決できたのだから、それで良しとしましょう。

 その日はいつも通り営業を終了した。

 そして、翌日になった。


 私は店を開ける前に、床の掃除をしていた。

 開店の時間まで、まだもう少しある。

 お姉さまとの勝負の期間は特に客が多く来ていたので、床にたくさんの足跡がついていた。

 だから私はこうして、かなり早めに店に来て、掃除をしているというわけだ。


 ……なんだろう?


 少し、外が騒がしい。

 窓から覗いてみると、店の外には既に人だかりができていた。

 あぁ……、開店前からこんなにたくさんの客がいるなんて、今日はたくさん売れそうね……。


 私は思わず笑顔になっていた。

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