第13話

 (※リズ視点)


 私は、さっき気付いたことを、みんなに話した。


 私の話を聞いていたみんなは、段々と顔色が暗くなっていた。

 お姉さまに勝った喜びなど、軽く吹き飛ぶくらいに……。


「つまりマーガレットは、君との勝負など、最初から眼中になかったということか?」


「小賢しい真似をして……。リズを……、私たちを騙すなんて、なんて性悪なのかしら!」


「あいつがここまですべて計算していたのか? ありえない! きっとこれは、何かの偶然だ!」


「狙っていたのか、たまたまなのか、それはわからないけれど……、現状、在庫が少なくなっているのは確かなことよ。売れた在庫の大半は、割引セールをしていた間に売れた。だから、たくさんの数は売れたけれど、利益はかなり少ない。このままじゃ、まずいわ……。在庫を全て定価で売って利益が出ても、私たちが暮らせるほどの利益にはならない。在庫が減っても、増えることはないわ……。私たちは、ポーションを作ることができないのだから……」


 私が現状をまとめると、部屋には沈黙が流れた。

 私たちは、勝負に勝った。

 でも、その勝負に勝っても、何の意味もなかった。

 私たちは勝負には勝ったけれど、そのせいで窮地に立たされていた。


 そもそもの問題は、私たちがポーションを作れないことにある。


 私たちは昔、お姉さまにお店を手伝ってと、何度も言われた。

 材料がどこにあるのか、そしてどうやって取るのかなどの知識、そして、成分を抽出する方法などの技術を、お姉さまは私たちに教えると言った。


 でも、私たちはそれを断った。

 お姉さまにすべてを押し付け、私たちは何もせず、楽に暮らしていた。

 そのツケが、ここで回ってくるなんて……。


 こんなことになるくらいなら、あの時お姉さまに教わっておけばよかった。


 私は皆の顔を見回した。

 たぶん、みんなも私と同じことを思っているのだろう。

 でも、今更教えてくれとか、戻ってきてくれなんて、口が裂けても言えない。

 そんなことは、プライドが許さない。

 それはみんなも、同じくそう思っている。


「何か、いい手はないかしら……」


 私は呟いた。


「定価で売るのではなく、値段を倍にして売るというのはどうだ?」


 お父様が提案した。

 しかし、私はそれを否定する。


「お父様、それではだめよ。お姉さまの店はもう復帰したの。お姉さまが定価のままで売れば、値段が倍もするうちでは誰も買ってくれないわ。そんなことしたら、客はみんなお姉さまの方に流れてしまう……」


「た、確かにそうだな……」


 お父様は小さな声で言った。

 私は、みんなの顔を見た。

 みんなは、私に期待の表情を向けている。

 もう、私が何か策を考えるしかない……。


「こうなったら、私がポーションを作るしかないようね……。お姉さまにだってできたのよ。この私に、できないはずがないわ!」


 お姉さまだって、素人の状態からポーションを作ったのよ。

 同じことが、私にだって、きっとできるはずだわ。

 我ながら、いいアイディアだと思った。

 もしポーションを作ることができれば、問題は何もかも解決する。

 お姉さまは私たちを潰したつもりになっているのかもしれないけれど、思い通りにはさせないわ。

 いい気になっていられるのも、今のうちだけ……。


 さて、ここから、反撃開始よ!

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