第9話
私が営業時間を変更した次の日、リズの店に動きがあった。
彼女の店は、夕方頃には営業時間が終了する。
今までは、そうだった。
しかし、夜になっても、彼女の店は営業していた。
最初は、営業時間を伸ばしたのか、私の店の営業時間に合わせて来たのかと思っていたけれど、そうではないことが、翌日にわかった。
彼女の店は、二十四時間営業になっていたのだ。
そのことを宣伝する看板も出されていた。
あちらの店には、リズ、お母様、お父様、クレイグの四人がいる。
だから、分担して、二十四時間営業が可能というわけね……。
一方こちらは、私一人しかいない。
時々ルーカスさんが手伝ってくれていたけれど、彼は正規の従業員ではない。
それに、今はジャッジをする立場だから、彼の助けは期待できない。
それなら、勝負の期間だけ、誰か従業員を雇う?
いや、それはあまりいい手ではない。
教育している時間はないから、雇うとしたら、接客経験のある人が望ましい。
しかも、雇う期間はたったの二週間程度だ。
だから、募集しても、人が来る可能性は低いだろう。
来るかもわからない人を待っていても仕方がない。
それなら、私一人でやる方がいい。
それに、後々のことを考えたら、ここは私一人が必死にリズに抵抗する方が、都合がいいと思う。
私は、二十四時間働く決心をした。
*
(※リズ視点)
私は奥の手である、二十四時間営業を始めた。
このことで、売れ行きはますます良くなった。
ポーションは、どんどん売れていく。
しかし、なんとお姉さまも、私の真似をして、二十四時間営業を始めたのである。
これには驚いた。
まさか、そんなことをするなんて思わなかった。
だって、そんなことしても、無駄だから……。
私は笑みを浮かべた。
向こうは、お姉さま一人だけ。
いつまでも二十四時間営業を続けられるはずがない。
それに比べて、こちらは四人もいるから、勝負の期間中は、二十四時間営業をするつもりだ。
こちらの店と、あちらの店では、そもそも条件が全然違う。
勝負をする前に、立地条件も人員も、こちらの方が上回っていることに気付かなかったのが、お姉さまの敗因よ……。
そして翌日、私にとって、嬉しい出来事が起きた。
お姉さまのお店は、営業が休みになっていた。
理由は、店員が体調を崩したためだそうだ。
案の定、お姉さま一人だけでは、二十四時間営業なんて無理だった。
無理がたたって、倒れることくらい、やる前から分からなかったのかしら?
あぁ……、もう少し張り合いのある勝負を期待していたのだけれど、拍子抜けだわ。
多分お姉さまは、私がここまでできるとは思っていなかったのだろう。
私の方が無能で、お姉さまの方が有能だと思って、驕っていたのだ。
だから、私に負けるのよ。
真に有能だったのは、私だったみたいね。
翌日になって、お姉さまのお店は営業を再開した。
しかし、営業時間は元通りになっていた。
これは、当然である。
一人で二十四時間営業なんて、無理なのだから。
そして、客の数も、圧倒的にこちらの方が多かった。
こちらは立地もいいし、二十四時間営業である。
それに比べてお姉さまのお店は、立地も悪いし、営業時間は限られている。
勝負の期間が終わるまで、残り二週間。
このままいけば、私たちの圧勝である。
やけになって、こちらの真似をして二十四時間営業をしていたくらいだから、もうお姉さまに残された手はないのだろう。
もし手があるのなら、倒れるほど無理をするはずがない。
だから今頃、お姉さまは慌てふためいて、必死に策を考えているはずだ。
しかし、この状況を逆転できる手段なんて、あるはずがない。
「この勝負、絶対に勝てるわ……」
お姉さま、負けた時の言い訳は、そろそろ考えたかしら?
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