第7話
「お店同士で、ある勝負をしませんか?」
私は提案した。
「勝負だと?」
「ええ、そうです。私もあなたたちも、お互いが宣伝の看板が邪魔だと思っていますよね? 私は、あなたたちの宣伝に負けないように対抗して、ルールぎりぎりの場所に看板を置いた。そして、あなたたちは私のお店の乗り込んでくるほど、その宣伝が気に入らないようです。だから、勝負をして、負けた方は、今後一切、宣伝の看板を置かないというのは、どうです? 負けた方は、宣伝ができなくなるわけですから、ライバルに圧倒的な差をつけられますよ?」
「なるほど、面白そうだな。しかも、宣伝の看板を失うことのデメリットは、立地の悪いお前の店の方が大きい。私たちが勝てば、お前の店は客足も遠のいて、いずれ潰れるだろうな」
「ええ、そうですね。まあ、それはあなたたちが勝てればの話ですけれど」
「ふん、私たちが、負けるはずがない」
「それで、その勝負というのは、何をするの?」
リズが、私に尋ねてきた。
その表情からは、負ける気などしないと思っているのがみてとれる。
ほかにも色々と作戦を考えていたけれど、まさか、こんな一番安い挑発に乗ってくるなんて、拍子抜けだわ。
「勝負は、一か月間で、どれだけポーションを売ることができるか、という勝負にしましょう。あ、私の方はポーショソですね。売り上げ金額ではなく、売れた数での勝負です」
「へえ、面白そうね」
「当然、瓶を小分けにして売るというのは、なしですよ。今のものを使ってください。そちらのものは、もともと私のものだったので、瓶の大きさは私の店と同じものです。これなら、公平でしょう? 勝負の間は、宣伝の看板を出してもいいことにしましょう。念のためにもう一度確認ですが、売上金額ではなく、売れた数での勝負ですよ?」
「ええ、わかってるわ。ただ、負けた方が宣伝禁止だけだと、つまらないわ。負けた方は、一か月間営業禁止というのも、ルールに加えましょう? そちらの方が、面白いわ。お姉さまが負けた時のショックが、さらに大きくなるから」
「へえ、勝てるつもりでいるのですか? そんなルールを加えたら、あなたが負けた時は、大泣きしてしまうわよ」
「舐めないで! お姉さまこそ、私に勝てるなんて、甘い考えだわ! 勝負は、明日から。これでいいでしょう!?」
「ええ、もちろん。あ、口約束だけでは信じられませんからね。契約書にサインしてもらいます。もちろん、私もサインしますよ」
「ええ、いいわ。お姉さま、これで負けた時は、言い訳なんてできないわよ!」
「それはお互い様ですね」
こんなに思い通りに事が運ぶとは思わなかった。
なんてあっけないのかしら……。
ほかにもいろいろと準備していたけれど、無駄だったわね。
拍子抜けするほどあっさりと乗ってきたから、何かリズたちの罠があるかもしれないと考えたけれど、たぶん、それもないでしょうね……。
表情から察するに、お父様もリズも、何も考えてなさそうだわ……。
既に勝負にも勝てる気でいる様子だし、完全に油断している。
この勝負を受けた時点で、既にあなたたちの負けはほぼ決定していることにも、気付いていないのでしょうね……。
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