『ウォッカで汚れた創作ノート』(夕喰に昏い百合を28品目)

 このお話しはたくさんの仕掛けが隠されていて、読み終わったあともう一度視点を変えて読みたくなります。


 舞台は今まさに戦闘中の国の最前線に近い地方都市のようです。

先ず、冒頭で「軍事衝突で破壊された、■■女子中学校の敷地内に落ちていたノートの内容である」と、但し書きが書かれます。

これは第一の仕掛けです。

この文章、読み進めていくとすっかり忘れてしまうのですが、とても重要な一文でした。


 「ノート」の持ち主は「スニェーク」という名の少女です。

厳しい統制の中でも読書をやめられない「スニェーク」は、「創作物検閲官のラヴーシュカ」と名乗る女性軍人に指導を受けつつある「小説」を書き始めます。

「ノート」はその前後の出来事を含めた日記形式になっています。

これが第二の仕掛けです。


 「ラヴーシュカ」の指導で「スニェーク」は「小説」を書く上でのいくつかのテクニックを教わります。

そして教わった通りに修正した「小説」は確かに「面白くなっていた」のです。

「ラヴーシュカ」に教わるテクニック、これが第三の仕掛け。


 日記の最後の日。

学校に出向いた「スニェーク」に恐ろしい悲劇が襲い掛かります。

彼女は最後の力で、それを書き留めるのです。

ここに書かれる事柄が、第四の仕掛けになります。


 そして、この「ノート」を「発見」した「国境なき記者団所属のジャーナリスト」により仕掛けの意味と明かされるまさかの真実が示されるのです。

構成も、ストーリーも、メッセージ性も、素晴らしいと思いました。


 実はこのお話し、募集要項の「6000字以内」をオーバーしているのです。

が、小烏が我が本棚にどうしても収蔵したくてご紹介の運びとなりました。

読者を引き込む力のあるお話しだと思います。



*******************


広河長綺様

『ウォッカで汚れた創作ノート』(夕喰に昏い百合を28品目)より

第1話

https://kakuyomu.jp/works/16816927860928843996


興味を持たれた方は、こちらにもどうぞ。

ダーク百合短編集『夕喰に昏い百合を添えて』

https://kakuyomu.jp/works/1177354055066605666

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