『食欲を飽く』
こちらはショートショートのちょっと謎かけ風味の作品です。
ある日
『──なんで食欲の秋って言うんだろうね?』
なぁんて「突然」「キッチン」の「妻が」「聞いてきた」ら、あなたはなんと答えますか?
「私」の「美味しいものがいっぱい出てくるから」という「平凡な答え」に、「妻」は「食べることを楽しむ最後の季節だから」と答えます。
「私」は「冬だって楽しめるだろう? 正月やクリスマスがあるし」と反論しますが、「妻」は「違うの。そういうことじゃな」いと言います。
そうして「申し訳なさそうな顔」で「栗の甘い匂い」の「マロンケーキ」を運んでくるのです。
さあ、この謎かけのような会話。
新婚さんではこうはいきませんね。
「食べることを楽しむ最後の季節だから」という言葉と運んできた「マロンケーキ」を見て「実に妻らしい答え」と感じる「私」は、「妻」の遠回な言葉の意味を理解しています。
長年連れ添った夫婦ならではの理解と呼吸。
二人の会話から醸し出される空気感。
「妻」の焼いた「甘い匂い」の「マロンケーキ」に穏やかな午後の光がさし、窓辺のカーテンは風にそよいでいる。
テーブルにはこの後何か飲み物が用意されるのではないでしょうか。
そんな様子まで想像できます。
そこにはゆったりとした時間が流れているように思えます。
さて、あなたは「食べることを楽しむ最後の季節だから」という言葉の意味、想像がつきますか?
ぜひ作品をお読みになってみてください。
可愛い奥様の言い訳にクスっとなることでしょう。
このお話しは自主企画のために書き下ろしてくださいました。
ありがとうございました。
◇ ◇ ◇
わこり様作
『食欲を飽く』
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