『夕紅とレモン味』
このお話しは、初秋の夕暮れの「カフェ」での出来事です。
「カフェ」にいるのは、「ショコラティエの匠」と「ピアニストの響子」の二人。
二人の名前がそれぞれの生業を連想させて素敵です。
さて、「匠の店が開店一周年を迎えるに当たって、店に併設のカフェでプチ・コンサートを開く」のだそうです。
「たくちゃんのショコラに負けないような質で、それでいてどの年代のお客さんも楽しめそうな」「演奏会のプログラム」を作ろうと「響子」が頭を悩ましています。
その隣で「匠は自分も作業台の上」で何やら作業をしています。
作業台での「匠」の「ショコラティエ」としての実に美味しそうで丁寧な仕事の描写を横糸に、「テーブル」であれこれと曲のタイトルをあげながら「プログラム」を練る「響子」の描写を縦糸にして一枚のタペストリーを織るように物語が進みます。
途中「響子」の「音大の同期」の「ヴァイオリニスト」「圭くん」の名前があがったり、「匠」が「高校時代に短い間付き合っていたしほ」さんの名前があがったり、少しばかりの不協和音の気配もしますが、さてどうなりますか。
「響子」の候補としてあげる数々の曲名からはもちろんピアノの音を連想するのですが、「匠」の作業の描写にも香りよりもむしろ作業の音を連想します。
香り、味を最も強く感じさせるのは、後半のとあるシーン。
おそらく読者は「響子」と一緒に「手で」「顔」を「覆」って「うー、と悶え」ることになるのです。
そうして最後におりあがったタペストリーは、「幻想的な夕べにぴったり」なプログラムと「夕暮れに紅く染まった白いデザート・プレート」なのでした。
ごちそうさまでした。
◇ ◇ ◇
蜜柑桜様作
『夕紅とレモン味』
Crème de citron dans un verre de chocolat
https://kakuyomu.jp/works/1177354054891052738
シリーズはこちら。
「それでもこの冷えた手が」
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