銀世界に消える
水原緋色
第1話
除雪車の音で意識が浮上して、うんざりした。
防寒具を身に付けスコップを手に持つ。
軽く掬い上げられる雪を一箇所に集めると小山ができる。砂利混じりで綺麗とは言えない。
ある程度雪をどけると小山にスコップを刺し、ゴロリと手付かずの雪の上に寝転ぶ。
空は白と灰色でそれ以外はなくて、人の気配も生き物の気配も何もない。音さえも消えてしまったようで、この静けさが心地いい。
「いみわからん、きしょ」
似たような言葉がいくつも降り注いで、何度その喉元に手を伸ばしてやろうと思ったか。
思い出さない方がいいとは分かっていても、耳の奥でこだまして、握った雪を空へ投げた。
「僕は僕だ」
雑音も僕の声も全部、銀世界に沈み込んだ。
銀世界に消える 水原緋色 @hiro_mizuhara
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます