銀世界に消える

水原緋色

第1話

 除雪車の音で意識が浮上して、うんざりした。

 防寒具を身に付けスコップを手に持つ。

 軽く掬い上げられる雪を一箇所に集めると小山ができる。砂利混じりで綺麗とは言えない。

 ある程度雪をどけると小山にスコップを刺し、ゴロリと手付かずの雪の上に寝転ぶ。

 空は白と灰色でそれ以外はなくて、人の気配も生き物の気配も何もない。音さえも消えてしまったようで、この静けさが心地いい。

「いみわからん、きしょ」

 似たような言葉がいくつも降り注いで、何度その喉元に手を伸ばしてやろうと思ったか。

 思い出さない方がいいとは分かっていても、耳の奥でこだまして、握った雪を空へ投げた。

「僕は僕だ」

 雑音も僕の声も全部、銀世界に沈み込んだ。

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銀世界に消える 水原緋色 @hiro_mizuhara

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