第3話 電話


あの男が逮捕されて、20年が経つ。

20年探し続けたが、あの匂いには出会えない。

確かめたいが、出来ない。



「はあ!!??逮捕!!??」


突然出てきた物騒なワードに思わず独り言が漏れてしまう。

手のひらにじんわりと汗が滲む。



今日は自転車に乗って街を散策。

ラーメンの匂いが鼻に残る。



次の日はまた街で嗅いだ匂いの感想だった。



夢中で日記を読んでいると、音楽が部屋の中で鳴り響いた。

音の出所は、僕のポケットの中だ。

ズボンの尻ポケットに手を突っ込み、スマートフォンを取り出す。


「もしもし?実家の片付けは終わりそう?」


電話を掛けてきたのは妻だった。


「ああ、物は少ないからそんなに大変じゃなさそうだよ。

一人でも何とかなりそうだ。」


「そっか!

あ!お庭の盆栽と、倉庫の片付けも時間がある時にしないとね!」


倉庫の存在を忘れていた。


「そうだね。

もうすぐ夕飯の支度をするだろう?

貴重品類の確認は出来たし、今日はもう帰るよ。」


妻の 了解! の返事を聞いて、電話を切る。

日記は元の場所に戻しておいた。




「倉庫、か、、、。」


玄関の鍵を閉めようとしたところで、電話での妻の言葉を思い出す。

処分に手間が掛かる物がないかだけでも、確認しておいたほうが良さそうだ。

玄関から倉庫の鍵を持ち出し、庭へと向かった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る