第2話 なりたい自分をイメージしよう

まずは目標をイメージすることが大切だ。オレは立場上、一緒に働いている看護師さんたちに「先生、私も英語ができるようになりたいです。どうしたらいいですか?」と尋ねられることがある。彼ら彼女らも英語がうまくなりたいと思っているわけだ。問題は、英語が上達するということのイメージが漠然ばくぜんとしすぎているというところにある。ここを鮮明にイメージすることが最初の1歩だ。


たとえば、病院を訪れた外国人に、「今日はどういったことで受診されたのでしょうか? どういうふうに具合が悪いのでしょうか?」と英語で尋ねる、それも1つの目標だろう。あるいは、青い目の人たちのパーティーに参加して英語で談笑し盛り上がる、それを目標としてもいい。その辺をはっきりさせるのが、具体的目標をイメージする、ということだ。


次に大切なことは日本語そのものだ。何を言いたいのか日本語でもさっぱり分からない、そんな人があまりにも多い。中には、特にしゃべることもない、といった人もいる。確かに日本に住んでいるかぎり、自己主張しなくても快適に毎日が過ぎていくので、何もしゃべる必要がない。


でも、アメリカでは全く状況が違う、というのがオレの経験だ。自分にとって必要なこと大切なことを常に主張し続けないと、普通に過ごすどころか命を落としてしまうことになりかねない。ホントのことだ。先進国のアメリカですらそうなのだから、発展途上国はして知るべし。それが日本以外の国の現実だ。だから、まずは自分の言いたい事を日本語で明確に表現する、そこから英語の習得が始まるのだとオレは信じている。


逆に言えば、自分が日本語で言わない事は英語でも言うはずがない。たとえばオレにとっては、海外のショッピングモールで「このサイズの服で黄色のものはありませんか?」などと店員さんに尋ねる事は一生起こらない。だからそういった表現を英語で覚えるのは時間の無駄だ、そう考えている。


さて、病院の看護スタッフが外国人の患者さんに向かって言うことは定型文だからあまり難しくない。「今日はどうされましたか? それではこの予診票よしんひょうに書いてください。終わったらこちらに持ってきてくださいね」といったところだ。一方、パーティーで盛り上がるとなると、自分からも何か面白い話題を提供しなくてはならない。「昨日、びっくりするような事があったんだ。オレが〇〇していたとき、××が起こってさ。ホントに驚いちまったぜ」みたいな会話。これもある意味、定型文だ。


このようなオリジナルの話題を3つくらいは準備しておくといい。とりあえず日本語で十分だ。ここまでが第1段階になる。たとえ皆さんが日本人社会の中でコミュ障だろうがパリピだろうが、やるべき事は全く変わらない。まずは自分にとって必要な定型文、あるいは他人を楽しませる話題をそれぞれ日本語で準備するということから始めよう。

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