第3-17話 召喚士テザメアVSアスタロト

『続きまして第一回戦、第四試合! テザメア選手VSアスタロト選手~~~っ!』



 前試合の熱が冷めぬまま、一回戦の最終試合が始まる。


 リングに上がったアスタロトは、【アイテムボックス】から大剣を取り出す。

 対して、テザメアは弓を手にしていた。


 召喚した魔物たちを戦わせるだけじゃなく、自身も積極的に攻撃していく戦闘スタイルなのだろうか?



『テザメア選手は優勝経験のある実力者! 対して、アスタロト選手は初出場です! どちらが勝利するのか予想がつきませんね!』


『テザメア選手の手数をアスタロト選手は捌ききれるのか、そこが勝敗に大きく関わるでしょう』



 リングの上で二人は睨み合う。


「容赦はしないわ。覚悟することね」


「構いませんよ。こちらも手加減致しませんので」


 お互いに宣戦布告したところで、戦いの火ぶたが切って落とされた。



『それでは、第一回戦、最終試合スタートですッ!!!』



 合図の直後、アスタロトを囲むように複数の魔法陣が出現した。


「殺さない程度にりなさい」


 魔法陣からあふれ出る魔物たち。

 そのどれもが最低でもAランク下位相当の強さを誇る。


 だが、アスタロトの敵ではない。


「意外と大したことないのですね」


 猛然と襲いかかってくる魔物たちを、アスタロトは大剣の一振りでまとめて両断する。


「そう言っていられるのも今の内よ!」


 テザメアはさらに追加で魔物たちを召喚する。

 アスタロトは変わらず一太刀で両断していく。



『アスタロト選手が魔物の大群相手に無双しております!』


『テザメア選手が召喚する魔物たちはどれもAランクですので、アスタロト選手の強さは相当なものですね』



 テザメアはらちが明かないと判断したのか、一度に大量の魔物を召喚するのと同時に弓を番えた。


「【ホーミングアロー】!」


 矢が放たれる。


 アスタロトは魔物たちを仕留めながら難なく躱す。

 攻撃に移行しようとしたところで、躱したはずの矢が急旋回して再びアスタロトに迫ってきた。


「追尾する矢ですか。魔物の大群を相手している時にこれは面倒ですね」


 アスタロトは跳躍して躱すと、翼を広げて滞空する。


 再び旋回して戻ってくる矢。

 アスタロトは大剣で斬り落としつつ、そのままテザメアめがけて【斬撃波】を放つ。


「【召喚】──ワイバーン! 私の足となりなさい!」


 【斬撃波】が命中するよりも早く、テザメアはその場から離脱する。

 召喚した飛竜ワイバーンに乗り、空へ舞い上がった。



『テザメア選手、ワイバーンを召喚しました! 空中から弓で狙撃しまくるつもりでしょう!』


『テザメア選手の弱点が機動力の低さだったのですが、ワイバーンに騎乗することでその弱点をカバーしましたね。さらに空中からなら狙撃し放題なので、強みを伸ばすことにもつながります』



 アスタロトは再び地上に降りる。


「【飛翔】できるとはいえ、空中戦における機動力が高いわけではありませんからね。やはり、地に足つけていたほうがしっくりきます」


「なら、すぐにでも這いつくばらせてあげるわ!」


 テザメアは新たに三本の矢を番える。

 そして放った。


「もっと矢の本数を増やしてくださって構いませんよ」


 アスタロトは一歩移動して飛びかかってきた獅子の魔物と【ホーミングアロー】を躱し、駆ける。


「お望み通り追加してあげるわよ!」


 さらに追加で放たれる【ホーミングアロー】。


 アスタロトは無数に飛んでくる矢を躱しながらも、襲い来る魔物の攻撃を往なし斬っていく。


「ガアアアアアアアアアアッ!!!」


 狼魔物が咆哮を上げながら正面から突っこんでくる。


 アスタロトが跳躍して躱すと、両サイドから迫っていた大量の矢が狼魔物を貫いて絶命させた。


 矢はそれでも止まらず、旋回してアスタロトに突撃する。


「このまま躱し続けたところで、大して修行にはならなそうですね。魔物も弱いですし」


 アスタロトは残念そうに呟くと、その場で回転斬りを放ってすべての矢を斬り落とす。


 その瞬間、跳躍した魔物が上空から襲いかかってきた。


 アスタロトは跳躍すると、魔物の攻撃を躱してその背中に足をつける。


「そろそろ終わりにしましょうか」


 アスタロトは跳躍の瞬間に【瞬歩】を発動。


 踏み込んだ魔物が肉片に変わるのと同時に、超速で跳びワイバーンの首を斬り飛ばした。


「なっ!? いつの間に斬ったのよ!?」


 落下するテザメアが叫ぶ。



『ワイバーンが一瞬でやられてしまった~~~ッ! アスタロト選手が恐ろしいスピードで斬りました!!! テザメア選手大ピ~ンチッ!!!』



 なんとか受け身を取って落下ダメージを抑えたテザメアは、新たに巨大な魔法陣を作り出した。


「……奥の手見せてやるわ。出てきなさい、ヒュドラ!」


 魔法陣が光り輝き、五つ首の魔物が現れる。


 ヒュドラ。

 かつて俺たちが苦しめられた怪物。


 それがアスタロトに立ちふさがる。


「障壁にすらなりませんね」


 アスタロトが呟いた次の瞬間、ヒュドラの首が全て飛んだ。



『なんということでしょうッ! アスタロト選手がテザメア選手の奥の手を瞬殺してしまいました~~~ッッッ!!!』



 一瞬呆気に取られていたテザメアは、すぐに正気に戻って矢を番えようとする。


 その時には、終わっていた。

 アスタロトの大剣がテザメアの首につきつけられていた。



『試合終了~ッ!!! 決着です! 勝者はアスタロト選手ゥ~~~ッ!!!』


『優勝経験のあるテザメア選手に圧勝してしまいましたね。いやはや、アスタロト選手はとんでもない強さです』


『圧倒的な強さで試合を制したアスタロト選手、二回戦に進出決定です!!!』



 こうして試合はアスタロトの勝利に終わった。

 第二回戦では、“最強”の悪魔ゼータと戦うことになる。


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