第3-18話 クロムVS忍者シャドー 前編
『さあ、始まりました第二回戦! 第一試合はクロム選手VSシャドー選手となっております!』
俺はリングに上がる。
忍者服の少年と相対する。
「俺と本気で戦ってほしい。全力で来てくれ」
「もちろんでござる。油断も手加減もせぬ」
俺は剣を構える。
シャドーは懐に手を忍ばせる。
『第一回戦では瞬殺圧勝してしまった両者! 果たして試合の行方はどうなるのでしょうか!?』
『シャドー選手は搦め手主体型。それに対してクロム選手は一見すると正統派剣士タイプですが、解説担当の私をもってしてもまだまだ底が見えません』
『戦闘狂博士でも底が見えないことってあるんですね』
『彼のスキルは特殊ですからね。勝負の行方が予想できない以上、一秒たりとも目が離せない展開になりそうです』
解説担当の戦闘狂博士がやたらスキルについて詳しい理由。
これまでの解説や今の発言から考えると、他者のスキル情報などを知るスキルを持ってそうだな。
その上で勝敗が予想できないとなると、俺がいかに
対シャドー戦で最も警戒しないといけないのは、シャドーが第一回戦で見せた正体不明の奇襲攻撃。
あれの対策をしておかないと、一瞬の隙でやられかねない。
『さて、解説が済んだところで第二回戦、第一試合スタートですッ!!!』
合図と共に、俺は【瞬歩】で一気に詰める!
刃がシャドーに届く直前、シャドーが分身した。
刹那、俺の斬ったシャドーが霧散する。
『シャドー選手、【影分身の術】でかく乱しにきました!』
『【瞬身の術】で速度を上げて緊急脱出しながらの【分身の術】発動。これは使い方が上手ですね』
シャドーの分身体たちはクナイを俺めがけて投擲してくる。
「「「「「【火遁の術】」」」」」
止まらない爆発の連鎖。
俺は躱しながら分身体を斬っていく。
くっ……! 分身体もスキルが使えるのは厄介だな!
【デコイ】も【影分身の術】を見習ってほしい。
「……ん?」
飛び交う爆裂クナイ。
その中に、爆発せずリングに刺さったままのクナイがいくつかあることに気づいた。
攻撃を捌きながら観察すると、そのクナイは高温に熱されているのがわかった。
金属製のクナイの表面が赤くなっている。
【火遁の術】を爆発させずに、クナイを加熱するだけでとどめた……?
でも、なんのために──。
「「「【水遁の術】」」」
新たに生み出された分身体のうちの何人かが、水鉄砲を放つ。
威力を持たないただの水が熱されたクナイに触れた瞬間、【火遁の術】よりもはるかに強力な爆発が起こった。
「うお!?」
俺は即座に【炎属性無効】を発動し、爆発の熱ダメージを無効化する。
煙と爆風が吹き荒れる中、俺は強い殺気を感じ取った。
「上か!」
「【雷遁の術】!」
爆炎の向こうから、シャドーが飛びかかってくる。
俺は迎撃のために剣を振ろうとしたところで、シャドーの持つ小刀が電気をまとっていることに気づいた。
まともに斬り合うと感電してしまうので、とっさに剣を止め回避に移行──。
「ッ!?」
その瞬間、俺の直感が警鐘を鳴らした。
俺は無理やり体勢を崩しながらもその場から飛び退く。
刹那、俺の体を小刀が浅く斬り裂いた。
おまけとばかりに電気が俺の体を
痛みをこらえながら視線を移すと、先ほどまで俺がいた場所に刃を突き立てるシャドーの姿があった。
「……危なかった」
危うく奇襲攻撃を喰らってしまうところだった。
『出たぁぁあ!!! シャドー選手の謎の奇襲攻撃! 怒涛の連撃でクロム選手にダメージを与えました!!!』
『【影分身の術】と【火遁の術】によるかく乱。その隙に水蒸気爆発を利用してクロム選手の視界を遮り目くらまし。上から攻撃すると見せかけて本命の奇襲攻撃を仕掛けたところまではよかったのですが、クロム選手は間一髪のところで躱しました』
『やはり強いですね、クロム選手は!』
俺は素早く体勢を整える。
シャドーは感心したように口を開いた。
「まさか一発で拙者の奇襲に対応するとは……。お見事でござる」
「どうも。それと、奇襲攻撃の正体は見破った。もう通用しないぞ」
「ほう……?」
第一回戦の時と先ほどの奇襲攻撃。
そのどちらも、シャドーの剣筋は下から上へ通り抜けていた。
極めつけは殺気の位置だ。
俺が奇襲攻撃を間一髪で躱せたのはほんのわずかな殺気を感じ取れたからなのだが、その殺気は俺の足元…………そのさらに下から発せられていた。
これらのことから考えると──。
「お前は地面の中を移動することができるんだろ? 【土遁の術】とかたぶんそんな感じの忍術でな」
「……完璧に看破してきたか。あっぱれと言うほかないでござるよ」
これでシャドーの手の内はだいたい把握できてきた。
まだ隠し玉はあるのだろうが、ここからは俺のターンだ!
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