第3-15話 開幕 最強トーナメント!
「ここが魔界国立闘技場かぁ~」
ロバートさんの案内で最強トーナメントが行われる会場にやって来た俺たちは、会場からあふれ出る熱気に思わず感嘆の声を漏らす。
入り口には大量の悪魔たちが列をなしており、最強トーナメントの大盛況っぷりが一目でうかがえた。
「なんか金ぴかのゴージャスな銅像があるけど、あれ何? すごい人?」
ミラが会場の一角を指さしながらロバートさんに尋ねる。
そちらに目を向けると、筋骨隆々ムキムキマッスルな男の銅像が建っていた。
「あれは最強トーナメントで伝説的な偉業を残した人物を讃えるために作られた銅像です」
「偉業ってどんな?」
「記録では百年以上前、最強トーナメント初出場から十大会連続優勝を成し遂げたそうです。それも、十大会すべて無傷での優勝であり、当時魔界で最も強かった悪魔にすら圧勝してしまったとか」
その当時最も強かった悪魔はどれくらいの実力者だったのだろうか?
気になるから聞いてみよう。
「S+ランクの魔物を軽々仕留めてしまうほどの実力だったと伝わっております」
「マジか」
S+ランクを軽々仕留められる実力者にすら圧勝……。
この情報が正しいのであれば、偉業を成した人物はSランクのさらに上……竜王級以上の実力者だったのかもしれないな。
それだけ強ければ銅像も建てたくなるか。
「他にはなんかないの? 人物像とか。創作の参考になるかもだからいろいろ教えてほしいな」
「それが、強かったこと以外は本人が“プロテインマスター”と名乗っていたことくらいしか伝わっていないんですよね。最強トーナメント以外でのプロテインマスターの情報が一切伝わっていないので、今となっては彼が悪魔だったのかすら謎に包まれているんですよ」
「ほえ~、なるほど。謎の強者キャラ書く時の参考にはなったかな。ありがとね」
そんな会話をしているうちに、開会式の時間が近づいてきた。
「じゃ、そろそろ行ってくる」
「いてらー。応援してるからね、アスっち!」
「クロムお兄ちゃんもアスお姉ちゃんもファイトだよ!」
「二人ともありがとうございます。
「ご武運を。大会の様子は仕事が終わった後にでも、
みんなから応援されながら、俺とアスタロトは選手用の受付へ向かった。
◇◇◇◇
闘技場内の様子がでびちゅーぶや魔界中央放送局によって魔界各地へ生放送される中、ついに最強トーナメントが始まった。
『さあ! いよいよ始まって参りました、第444回最強トーナメントっ!!! 果たして今回はどのような激闘が繰り広げられるのか!?
大音声で司会の声が響き渡る。
これから大イベントが始まることへの期待感が、会場全体からひしひしと伝わってきた。
『司会進行・実況を務めさせていただくのは毎度おなじみこの
『ご紹介にあずかりました戦闘狂博士でございます。今回もバチコリ解説させていただきます』
『ありがとうございました。続いて来賓の紹介です。最強トーナメントは今回でなんと444回目の開催となります! 節目を記念して、昨年の魔界全国チアリーディング大賞受賞校、奈落高等学校チアリーディング部の皆さんが応援に来てくださっております! 皆様、盛大な拍手をっ!!!』
会場から拍手が巻き起こる。
控室のモニターには、一糸乱れぬ動きで美しいパフォーマンスを披露するチアリーディング部の姿があった。
『来賓の紹介が終わったところでいよいよ本選出場選手の紹介といきたいところですが、ななななんと! 最強トーナメント運営委員会からサプライズのお知らせです!』
モニター越しに、会場にいる悪魔たちがざわついているのがわかる。
俺とアスタロトが突発参加することはまだ知られていないようだ。
『本選では残念なことに二名の棄権者が出てしまったわけですが、その代わりにスペシャルゲストが参加してくださることになりました!』
俺とアスタロトは選手入場口に移動する。
トップバッターは俺たちだ。
『それではご登場いただきましょう! クロム選手&アスタロト選手ゥゥゥーーーッ!』
拍手喝采が響く中、俺とアスタロトはリングに上がる。
『なんと彼らは人間界から訪れたそうです! 実力は未知数だが、その強さは最強トーナメント運営委員長のお墨付き! 予想外のダークホースとなるかもしれません!!!』
『これは期待に胸が膨らみますね』
俺たちが人間界から来たというところで悪魔たちからどよめきの声が上がったが、続く紹介で一気に治まった。
てっきりブーイングの一つでも来るかと覚悟してたけど、会場を見る限り好意的に受け入れてくれた悪魔のほうが多そうだ。
盛り上がればなんでもいいのだとロバートさんが言っていたが、本当にその通りなのだろう。
『さて、スペシャルゲスト紹介が終わったところで選手紹介といきましょうか! 今年も猛者が集まっております! まず最初に紹介するのはボロンド選手ゥ~ッ! 過去にベストフォー進出歴のある彼、今回こそは悲願の優勝を果たせるのでしょうか!?』
二メートル超えの巨体から頭が二つ生えた、双頭の悪魔がリングに上がってくる。
「敵が誰であろうと、俺たちのコンビネーションでひねり潰すまでよ! 準備はいいな、弟よ!」
「兄ちゃん! 俺、昼寝したい!」
……か、噛み合ってない。
コンビネーション発揮できるのだろうか……?
ちょっと不安になる選手だ。
『続いてニュートソ選手ゥ~ッ! 重力使いで有名な彼ですが、本大会に登場するのは数十年ぶりとなります! 帰還した魔界の物理学者の実力はいかに!?』
スーツ姿の長身男性がリングに上がってくる。
「フッ。敵は我が重力でひねり潰すのみよ」
人間界には重力使いはほとんどいない。
彼の戦い方は参考になるはずだ。
要チェックしておかねば。
『続いてゴウケン選手ゥ~ッ! 予選では一切傷を負うことなく勝ち上がってきました! 果たして彼の城塞ボディを貫通する者はいるのか~!?』
ドシン、ドシンと足音を響かせながら、三メートル超えの筋骨隆々な肉体を誇る巨漢が現れる。
リングに上がると、両拳を激しくぶつけ合わせて叫んだ。
「俺の肉体は不滅だぁぁあああああ!!!」
見るからに強そうだ。
おそらく攻撃と防御に特化した近接パワータイプだろう。
『続いてシャドー・ヤタガラス選手ゥ~ッ! 魔界革命で活躍した四大名家が一つ、ヤタガラス家の次期当主が本大会に初参加してくれました! 予選ではすべての選手を瞬殺してしまったほどの実力者です! 果たしてどこまで登り詰めるのか!? 活躍に乞うご期待ですっ!』
少年のような外見をした小柄な悪魔がリングに上がってくる。
彼は特徴的な黒衣に身を包んでいた。
……おお! あれが“忍者”か!
魔界の歴史について図書館で調べていた時に存在を知ったんだが、忍者ってめっちゃカッコいいよな。
ロマンだよ、ロマン。
「拙者の実力がどこまで通用するのか試させてもらおう」
シャドーはクールに呟いた。
うおおおおお忍者カッケー!
『続いて、七人目の選手はこの方! 過去に優勝経験を持つ魔界一の召喚士、テザメア選手~~~ッ! 彼女が召喚する魔物たちはどれもAランク上位の強敵ばかり! 今回も一方的な蹂躙となってしまうのでしょうかッ!?』
黒いローブに身を包んだ長髪の女性がリングに上がる。
「今回も強者がそろってるわね。とっておきの子を召喚することになりそうだわ」
……召喚士。
それは魔物を召喚して自由に操ることができる人たちの総称だ。
人間界には召喚士と呼ばれている人たちがほとんどいないから、彼女の実力を見るのが楽しみだな。
どんな戦い方をするのだろうか。
『会場がいい感じに盛り上がってきたところで最後の選手紹介をさせていただきます!』
『ようやく本命の登場ですね』
実況の声が響き渡ると、観客たちが一気に静かになった。
期待に満ちた様子で今か今かと待ちわびる。
まるで嵐の前の静けさだ。
最後の選手は大物みたいだな。
どんな悪魔が出てくるのだろうか?
『魔界で彼女を知らぬ者ナシ! 本大会を六連覇中のレジェンドが今回も参戦してくれました! 四大名家の出身にして、『最強』の呼び声高き彼女を倒す者は現れるのかッ!? “【爆裂爆熱拳】”の使い手、ゼータ・ノヴァフレイム選手ゥゥゥ~~~ッ!!!』
「ワアアアアアアッッッ!!!」と、観客席が大熱狂に包まれる。
選手入場口から、一人の悪魔が観客席に手を振りながら歩いてきた。
「どーもどーも! アタシが来たっすよ!」
黒髪ツインテールに、鮮血を思わせるような赤い瞳をした三白眼。
特徴的なギザギザの歯。
赤と黒を基調としたゴシックドレスに身を包んでおり、背中からはコウモリの翼が生えている。
外見は十四歳くらいの美少女だが、強者であることは間違いない。
何気ない動きですら洗練された武術家のソレだ。
「今年はとっても楽しめそうっすねぇ。血祭りにあげ甲斐がありそうっす」
そう言って、ゼータは不敵に笑った。
『以上で選手紹介は終わりになります。続きまして、皆様が今すごく気になっているであろうトーナメント表の発表に移らせていただきます! 皆様、会場に設置されているモニターをご覧ください!』
俺はモニターを見上げる。
そこには、第一回戦の各試合の組み合わせがでかでかと映し出されていた。
第一試合:クロムVSボロンド
第二試合:ニュートソVSシャドー・ヤタガラス
第三試合:ゼータ・ノヴァフレイムVSゴウケン
第四試合:テザメアVSアスタロト
各試合の組み合わせは上記の通り。
どういう結果になるかはわからないが、参加するからには学んで吸収して強くなるための糧にしてやる。
俺は自分の頬を軽くたたいて気合いを入れる。
俺とボロンド以外の選手が控室に戻っていったところで、ついに第一試合が始まりを迎えた。
『降参、場外に脱落、悪魔の死亡orスペシャルゲストに致命の一撃が入ったと判断できた段階で試合の勝敗が決定します! それでは第一回戦、第一試合。クロム選手VSボロンド選手! 果たして勝利はどちらの手に!? バトルスタートですっ!!!』
試合開始と共にボロンドが動く。
「勝つぞ、弟よ!」
「そうだね、兄ちゃん!」
ボロンドはスキルで手元にバトルアックスを生み出し、突貫してくる。
弟の頭が魔法を連続で放ちサポートする。
「魔法で牽制しながら突撃。いいコンビネーションだが──」
俺は【炎装】を発動。
一振り目で魔法を斬る。
続く二振り目でボロンドを斬りながら走り抜けた。
静寂に包まれる観客席。
俺は剣を収める。
それと同時に、ボロンドが倒れた。
『……お……おお……! 第一試合、決着! 決着です! 一瞬で終わってしまいました!』
『解説をする間もなく終わらせてしまうとは……! 第二回戦でのクロム選手の活躍が楽しみですね』
『ええ、そうですね! 本大会、もしかすると過去最高の激戦が繰り広げられるのかもしれません!!!』
実況アナウンスで意識を引き戻された観客たちが、興奮気味に「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! すげえええええええええええ!!!」と歓声を上げる。
俺は大声援を浴びながらリングを後にするのだった。
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