第3-12話 魔界騎士団長との一騎打ち
「模擬試合の時みたいにデバフかけとくね」
ミラが俺に攻撃力低下・俊敏低下のデバフをかける。
それと同時に馬悪魔は動いた。
「シッ!」
二本の刀で斬りかかってくる。
俺は剣一本で応戦するが、二刀流の相手と戦うのは初めてなので思うように動けない。
身体能力はこちらが上なのに押されてしまう。
デバフで本来の力が出せないというのもあるが、それ以上に馬悪魔に技術で負けているのが大きかった。
絶え間なく続く二刀流の猛攻。
加えて、馬悪魔の剣術は受け流しに重点を置いているようであり、俺の攻撃は簡単に受け流されてしまう。
さらには、受け流しと同時にカウンターまで飛んでくる始末だ。
「強いな……!」
「100年以上、刀一筋で生きておりますので!」
俺の縦振りを、馬悪魔は刀をクロスさせることで受け止める。
お互いの力が拮抗した。
力と技術がぶつかった時、勝つのは必ず技術だ。
力が勝てるのは、技術が意味を成せないほど圧倒的な差がある時だけだ。
俺には“技術”が足りない。
【キメラ創生】のおかげでSランク相当の肉体スペックは手に入ったが、戦いの才を持たなかった凡人の俺はまだまだ弱い。
ゴブリンキングやヒュドラと戦った時のことを思い出せ。
頭を研ぎ澄ませろ!
あの死闘を経て、俺は何段階も強くなることができた。
剣を振るだけの自主トレとは比べ物にならない経験値を得た。
強くなりたいなら、実戦を経験するのが一番だ。
この戦いを通して、俺は今の何倍も成長してやる!
俺は意識を馬悪魔に集中させる。
まずは観察だ。
馬悪魔の動きを、剣術を見極めろ。
「ふんッ!」
馬悪魔は俺の剣を真上に弾き上げるのと同時に、片手で素早く追撃を放ってきた。
俺は背後に跳んで躱す。
すれすれを刀がかすめていく。
「【纏衝突(てんしょうづ)き】!」
距離をとった俺に、馬悪魔は鋭い突きを放つ。
刀の切っ先から放たれた衝撃波が、豪速で飛来する。
俺は剣身で受け止めたが、衝撃で背後へ弾き飛ばされた。
「【斬撃波】!」
連続で斬撃が飛んでくる。
剣でガードするが、衝撃で後ろへ押し出されてしまう。
俺と馬悪魔の距離はさらに開いた。
だが、馬悪魔は追撃してこない。
刀を鞘に納めて、その場にしゃがんだ。
「二刀流【居合】──」
見たことのない構えに俺は警戒心を強める。
来る、間違いなく強力な攻撃が。
「──疾風迅雷」
馬悪魔が消えた。
俺はとっさに剣を振った。
手応えはなかった。
「先手は頂きましたよ」
俺の背後に立っていた馬悪魔が告げる。
直後、俺の体から血が流れた。
「がッ……!」
先ほどの馬悪魔の動き、なんとか目で追うことはできたがとんでもなく速かった。
斬られた胴体が痛い。
完全には対処できず、浅い斬撃をもらってしまった。
「……ハイヒール」
俺は傷を回復する。
あっという間に傷がふさがる。
「回復魔法持ちでしたか。面倒ですね」
俺が回復している間に、馬悪魔はもう一度同じ構えをとっていた。
「二刀流【居合】──」
俺は大きく息を吐きながら構えをとる。
ハイリッヒ流剣術……その中でも、速さに特化した型を使う。
感覚を最大まで研ぎ澄ませろ。
次の一撃ですべて出し切れ。
「──疾風迅雷」
「──閃光斬!」
馬悪魔が消えるのと同時に、俺は剣を振った。
刹那、俺の背後に馬悪魔が現れる。
「……大したものですね。成長速度が羨ましいですよ、まったく……」
馬悪魔が悔しそうに呟く。
胴体を深く斬られた馬悪魔は、がくりと膝をつき倒れた。
「…………はぁ~……」
緊張から解放された俺は深く息を吐く。
極限まで集中していたからか、精神的な疲労がすごい。
すぐにでもピクニックに参加したいところだが、俺は倒れている馬悪魔に近づく。
回復魔法を使った。
「エクストラヒール」
馬悪魔の傷が治る。
「……なんのつもりですか?」
馬悪魔は警戒心を隠さず聞いてきたが、襲ってくる様子は今のところ見られない。
俺が勝ったからか、ようやく対話できそうな感じになった。
「あなたたちに襲われたので正当防衛で反撃しましたが、こちらは戦うつもりはありません」
俺がそう伝えると、馬悪魔はしばし考え込んでから口を開いた。
「……手放しで信用することはできませんね。そこで眠っている巻き角の悪魔を起こしてもらえますか? 彼女は嘘を見破るスキルを持っていますので」
「わかりました」
俺は回復魔法で巻き角さんの眠り状態を治す。
すぐに彼女は目を覚ました。
「ハッ!? 私はいったい何を……?」
「メルさん、【真贋判定】を使ってください」
「あ、はい! 状況がよくわからないけど、騎士団長の頼みなら喜んで使います!」
巻き角さん改め、メルさんがスキルを発動する。
俺はありのままを話した。
突如、人間界と魔界をつなぐワープホールが出現したこと。
俺たちはワープホールを開いた人物とは関係ないこと。
国王様の依頼でワープホールを閉じに来たこと。
悪魔と戦争するつもりは一切ないこと。
できれば悪魔と協力したいこと。
「以上です」
「判定終了。嘘偽りは一切なかったです!」
メルさんがそう告げると、馬悪魔は俺たちに頭を下げた。
「馬耳東風で襲ってしまい申し訳ございませんでした。ここ数日とある事件で慌ただしくなっていたところ、謎のワープホールを発見したとの報告を受けて来てみれば、いるはずのない人間がいたのでてっきり犯人かと思いまして……。本当にすみません」
「その事件ってどんな内容なのですか?」
「魔界転覆罪で封印されていたはずの
「大事件では!?」
何者かによって封印が解かれた
突如現れた人間界と魔界をつなぐワープホール。
不穏な内容から、俺は一つの結論に至る。
馬悪魔もおそらく同じ結論にたどり着いているはずだ。
「その
「十中八九それしかないかと。諜報が得意な悪魔によると、魔界に
これは重要な情報だ。
人間界に戻ったらすぐに報告しなければ。
「……そういえば、自己紹介がまだでしたね。
「俺はクロム、あちらに座っている赤髪の天使がルカ。仮面をかぶっている不審者がミラ。メイド服の女性がアスタロトです」
お互いに自己紹介が終わったところで、ロバートさんが有力な情報をくれた。
「私の
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