第11話 冒険者登録
「本物の、ドラゴン素材だ……!」
美しい光沢を放つ鱗を始めとしたそれらは、間違いなく本物だった。
ドラゴンなんて図鑑でしか見たことがなかったので、初めて見る本物のドラゴン素材に感動すら覚える。
「これ……もらっていいんですか……?」
ザギーさんたちを襲った魔物は、高く見積もってもせいぜいDランクだ。
ちなみに魔物のランクは、下からF、E、D、C、B、A、S、竜王級、
竜王級は世界に数体しかいない。
それより上の崩星級は伝説上の存在とされている。
邪神級に至ってはお伽噺の存在とまで言われているほどだから、実質的なトップはSランクだ。
ちなみにルカのランクはC-。
Cランクより少し弱いくらいだな。
とにかく、このドラゴンは明らかに高ランクだ。
最低でもBランク以上はある。
お礼としては、明らかに高価すぎる。
そう思ったけど……。
「これは
ザギーさんは俺の考えを見透かしたようにそう告げてきた。
「……そういうことなら、ありがたくいただきますね」
俺はドラゴン素材を受け取る。
もう一度ザギーさんにお礼を言って商会を後にした。
それから数分後。
俺たちは目的地に到着した。
「着いた、冒険者ギルド」
ルカと一緒にギルドの扉をくぐる。
時刻が夕方なのもあって、ギルド内にはそこそこの冒険者がいた。
ギルド内に併設されている食事処(ギルド運営)でお酒や食事を楽しんでいる彼らに用はないので、俺たちは受付に向かう。
「すみません。冒険者登録をしたいのですが」
「冒険者登録ですね。かしこまりました。こちらに記入をお願いします」
受付嬢から差し出された紙に記入する。
といっても、必須項目は名前と得意なことだけで、出身地などの情報は書かなくても問題ない。
必須項目だけ書いてから、受付嬢に渡す。
得意なことについては、俺は回復魔法、ルカは近接戦闘と書いておいた。
「クロムさんとルカさんでお間違えないですね?」
「はい」
「では、少々お待ちください」
というわけで、待つこと数分。
食事処で買ったジュースを飲んでいると、受付嬢が戻ってきた。
「それでは、お二人にはランク認定試験を受けていただきます」
受付嬢は試験について説明を始めた。
まとめるとこんな感じだ。
試験官を相手にどこまで戦えるかでランクを判断する。
試合形式は一対一の真剣勝負。
致命傷となる攻撃と審判が判断したら、そこで試合終了となる。
今日を逃すと次の試験を受けられるのは二日後とのことだったので、俺たちは受付嬢に連れられてギルド内にある訓練場に向かった。
「俺が試験官を務めるライナーだ。よろしくな」
ライナーさんは剣士で、Bランク冒険者とのこと。
感じる威圧感はアイザックほどではないものの、強いのは間違いない。
少なくとも、毛むくじゃらの魔物や魔法陣の時の蛇よりは圧倒的に強い。
「本気でかかってこい」
「言われなくてもそうするよ!」
もう一度試験について説明があった後、まずはルカから戦うことになった。
ライナーさんとルカがそれぞれ構える。
「ほう。素手で来るか」
「これが一番得意だもん!」
ルカが自信ありげに笑う。
「試験開始!」
審判が合図を出した瞬間、ルカが動いた。
腕に炎をまとって、正面から突っこむ。
「早いな!」
「狼だからね!」
ライナーさんは剣で。
ルカは炎の爪で打ち合う。
ルカは自身に炎をまとうエクストラスキルスキル【炎装】と、身体能力を上げる通常スキル【身体強化】。
それらを同時発動することで、Bランク冒険者のライナーさんにも通用するレベルにまで攻撃の威力を引き上げている。
「せいッ!」
ライナーさんが剣を横に振るう。
ルカは地面ギリギリレベルまで姿勢を低くすることで躱した。
からの切り裂き!
ライナーさんの攻撃の後隙をつけるかと思ったけど、
「すげぇ身体能力だな!」
ライナーさんは素早く剣を戻し、ルカの爪を弾いた。
続く攻撃でルカを吹き飛ばす。
「くっ! 速い!」
ルカは訓練場の壁に着地。
そのまま壁を駆ける。
あれは通常スキル【
「変わったスキルまで持ってるんだなッ!」
壁を蹴って飛びかかってきたルカに向かって、ライナーさんは驚きの声を上げながらも剣を振るう。
「ここで決める! ファイアネイル!」
「いいぜ。決着をつけようか!」
ルカの炎の爪と、ライナーさんの剣が激突。
衝撃で砂埃が舞う。
視界が晴れた時。
そこには、ルカの首筋に剣を突きつけたライナーさんが立っていた。
「俺の勝ちだな」
「ルカの負けか……」
二人が言葉を交わす。
それから、試験終了の合図が告げられた。
「高い身体能力に驚くほどの柔軟性。まるで四足獣を相手にしている気分だった」
「狼だもん」
「その年でその強さなのが羨ましいくらいだぜ、まったく……」
Bランク冒険者のライナーさんでも驚くほどの実力を見せてくれたルカは、俺のもとに戻ってくるなり褒めてほしそうにこちらを見てきた。
狼の耳やしっぽがぴょこぴょこ動いているのがなんとも可愛らしい。
「よく頑張ったな、ルカ」
「えへへ」
頭を撫でてあげると気持ちよさそうに目を細める。
「それじゃあ、行ってくる」
「頑張ってね、クロムお兄ちゃん!」
俺はライナーさんと向かい合う。
ライナーさんが放つのは、強者の気配そのものだ。
とても緊張する。
けど、やるしかない。
俺の全力をぶつけてやる!
「試験開始!」
開始の合図が告げられた。
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