第34話

 隊員達が自分の部屋に戻った頃、俺と新庄は明日の討伐について話し合っていた。

 

「とりあえず明日の予定を立てないとだね。どうする?」


「一番最初だから少し慎重にならないといけないよな。まずは刀部隊、槍部隊、弓部隊それぞれで討伐に向かおう。各部隊に俺と新庄がついて、サポートしつつスキルアップを図りたい」

 

 もちろん部隊全員を連れて行くわけにはいかない。俺と新庄でも支えられる人数には限界があるし、最初はモンスターに慣れてもらうことも必要だと考えた。


「朝からの方がいいよね?どれだけ時間がかかるかわからないし……」


「そうだな、隊員達が朝食を食べたら刀部隊を外に連れて行こうと思う。終わり次第、槍、弓の順番でいいよな?」


「特に順番はどうでもいいからね。早めにスキルアップさせて、自分達で戦えるようになってもらって経験を積んでほしいよね」


 新庄の言う通り、隊員それぞれが戦えるようにならないと戦場で全く役に立たない。


「じゃあ、明日の予定はそんなところだな。明日の朝、食堂に行って弓部隊を集めることにするよ」


「了解。それと、一つ重大なことを忘れていたんだけど……部隊名どうしようか?」


「やば、すっかり忘れていたよ」


 東京支部に配属される人数があまりにも少ないショックで、そんなこと頭から抜け落ちていた。部隊名の募集いつまでだったっけ。


「明日まで申請すればいいんだけど、明日にそんな余裕ないと思ってた方がよさそうじゃない?」


「そうだな……今日のうちに考えておくか」


 そして俺たちは部隊名を考えはじめたが、30分経ってもなかなかいい名前が出てこなかった。俺と新庄にネーミングセンスが全くないということが判明してしまった。

 仕方がないので、俺たちはネットで色々調べることにした。英語辞典やフランス語辞典がネット上にも載っていたので、俺はそこから探していた。


「ねえねえ省吾。これはどうかな?東京ウィナーズ」


「なんでそんな草野球チームの名前みたいなんだよ!もう少しいいやつあるだろ!」


「えー、いいと思ったのになあ」


 その名前のスポーツチーム東京にいくらでもありそうだろ。なんでそれがいいと思えるのかわからないかった。

 そうして俺が再びスマホに目を戻すと、そこに少しよさそうな英単語が載っていた。


「アイディール。意味は……理想、か」


「アイディール?なんかシンプルすぎない?もっとこう派手な名前とかの方がいいんじゃない?」


「派手な名前で東京ウィナーズを出してくるお前の感性が理解できないよ!」


 東京ウィナーズに派手なイメージなんてまったく湧かないだろ!


「アイディールには他にも最高の目標とか模範とするべき姿なんて意味があるらしいぞ」


「おお!単語の意味は今まで出た中で一番良さそうだね!でもなあ、ただの英単語っていうのもなあ」


「なんだよ他に案があるっていうのか?」


 悪くなる未来しか見えないんだが……。


「なんか、チームって感じがしないから……そうだ!複数形にしてアイディールズ!それならいいでしょ!」


「……途端にスポーツチームの感じがしてきたんだけど?」


「それでも東京支部の僕たちはチームだしさ!少しは僕の案も受け入れてくれよー」


 新庄はどうしても〇〇ズのようなチーム名にしたいようだった。まあ部隊名なんてどこかに発表するわけじゃないんだろうし、それでもいいか。


「わかったよ。そしたらアイディールズで申請しておいてくれ」


「やった!それじゃ明日の朝にでも本部に連絡しておくよ!」


 ようやく部隊名を決め終わった俺たちは、すでに消灯時刻を大幅にすぎていたため、すぐに部屋に戻り寝ることにした。

 あまり部隊名にこだわりたくはなかったが、東京ウィナーズなんて名前になるのだけは絶対嫌だった。

 俺はベッドで目を瞑ると、すぐに眠ってしまった。




 翌日。

 俺は少し早く起き、ランニングをして汗を流した。店長のようなハイペースで飛ばすわけではないが、やはり体力をつけておくのに越したことはないので、1時間ほど駐屯地内を走った。

 シャワーを浴び、部屋に戻って読書をしていると新庄も目を覚ました。


「おはよう省吾。ずいぶん早起きだね」


「おはよう。もしかして起こしちゃったか?悪かったな」


「いやいいんだよ。自衛隊の時とは違って起きる時間も決まっていないからゆっくり二度寝してただけさ」


 それから新庄はシャワーを浴びに行った。

 自衛隊っていうのは早起きとかしないといけないのだろうか。前に世話になった駐屯地では割と自由に過ごさせてもらったからその辺はよくわかっていなかった。

 まあ新庄が伸び伸びと生活できているようでよかった。


 新庄がシャワーを浴び終わり戻ってきた頃には食堂もすでに開いている時間だったので、俺たちは食堂へ向かうことにした。


「食堂に刀部隊の隊員が1人でもいるといいんだけど」


 朝からの討伐に向けて早めに刀部隊を集めておきたかったので、食堂に隊員がいないと話もできないと思い心配だった。

 しかし、その心配も杞憂で刀部隊の何人かが一緒に朝食を食べていた。

 その近くの席が空いていたので、俺と新庄はそこで朝食を食べることにした。


「おはよう。昨日はよく休めたか?」


「おはようございます!やはり慣れない運動をしたせいか結構疲れてしまって……あっという間に寝ちゃいました」


 俺が挨拶をすると、刀部隊に所属した岡という隊員が元気に挨拶を返してきた。

 昨日は他の隊員もぐっすり眠れたようだ。


「そうか、しっかり休んでくれて助かるよ。あとでみんなに伝えてほしいんだが、朝食を食べ終わったあと運動場に集まってほしいんだ」


「了解しました。伝えておきます」


 そういうと岡はご飯をかきこんで、すぐに食堂を出て行ってしまった。別に今すぐ伝えに行けとは言ってないんだけどな……。


「俺たちも急いで食べるか」


 俺と新庄も他の隊員が早めに集まってしまうかもしれないと思い、急いで朝食を食べることにした。

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