第12話
「どういうことだよ?」
ルーチェの言うことが全く理解できなかった俺はすぐさま質問する。
「んー?だってそのモンスターの溜め込むエネルギーに比例して、土に還って植物になるときの規模が決まるんだけど、やっぱり木とかを生やすんだったらそれなりに強いモンスターじゃないといけないみたいなんだよね。このシステムも上の神様に教えてもらったものだからあまり理解はしていないんだ、悪いね!」
「開き直るなよ」
しかし、それはやばいことになった。今普通のモンスターを倒すのに一苦労なのに、そんなのが出てくるってなると、それこそ人類の滅亡が近いかもしれない。
「まあ、大型モンスターに勝つために用意したのがスキルアップってやつなのさ!ちなみに銃は使わない方がいいよ。スキルアップの対象外だし、そのうち銃弾が通らないモンスターも出ちゃうから」
「少し整理させてくれないか……」
あまりにも急な話で理解に時間がかかる。
まず、3週間後に大型モンスターが出現するっていうのはかなりまずい。それもその大型モンスターをスキルアップした力で倒さないといけないって言うんだからかなりの無理ゲーだ。今現在、スキルアップについて知ってるのは、俺がいる駐屯地の人間だけだ。あと3週間でどれほどの戦力を用意できるだろうか。
そしてそんな状況になったのが、人類が破壊した自然を取り戻すためっていうのも、人類の自業自得じゃないか。
「ちなみにひとつ聞いていいか」
「もちろん!なんでも聞いて」
「スキルアップは結局どういう原理なんだ?いきなり力が増えたり武器によって力が変わったり、原理が全く理解できないんだが」
「うーんとね。スキルっていうのはその武器を扱う熟練度かな。君は刀を使っているけど、そんな君がいきなり槍やら弓やらを使ってもいきなり使えるわけないだろう?同じ種類の武器を長い間使っていけば、その分熟練度が上がっていく。それをスキルアップっていうシステムにして君の世界に組み込んだんだ。ちなみに熟練度はモンスターに攻撃を加えた時点で向上していく仕組みになってるから、別にモンスターを倒さなくてもスキルアップは望めるよ」
なるほど、熟練度か。そういうことなら納得がいく。俺が槍を使った時に、力が出なかったのもそういう理由だったんだな。
「ちなみに扱う武器は何種類を想定しているんだ?銃みたいに熟練度が上がらないものも他にはあるのか?」
スキルアップについてこれが一番重要かもしれない。使える武器がわからないと何もできないからな。
「武器の種類は6種類だよ。君が使っている刀、あとは剣、槍、斧、弓、投擲武器だね。君が普段から腰に差しているものも刀の一種の小太刀だと思ったから、上の神様に設定変えてもらって刀に分類したよ」
「いや、これは小太刀じゃなくて、サバイバルナイフなんだけど。短剣とかそういう部類じゃないのか?」
俺がそう言うとルーチェは驚きの表情を見せた。
「ええ!てっきり小太刀だと思ったのに!サムライってやつは刀の他に刃先の短い小太刀っていうのを帯刀しているって聞いたからてっきりあれが小太刀だと思っちゃったよ。今からでもシステムいじれるかな……」
ルーチェはサバイバルナイフを小太刀と勘違いしたいたようだ。あのナイフをどうやったら小太刀と勘違いするのかわからないが。
「ところで、お前は自然が少ないっていうからモンスターを発生させたってことだよな?自然が元に戻れば、モンスターたちはいなくなるのか?」
「そりゃそうだよ。自然が戻ったあとにまた人類が増えていかないと、評価が下がり続けちゃうからね。世界中の森林がある程度増えたら黒い渦は消えることになってるよ。黒い渦が発生するのは周りに自然が少ないところだからね」
「だから、北海道か」
その話が本当だったら、おそらくあの安全地帯と呼ばれる地域は周りに自然が多い田舎の地域なんだろう。日本でもそういった地域はもっとあるかもしれないな。
あの安全地帯みたいに周りが守られているわけではないけどな。
「おっと、もう時間かな。人の意識を呼び出すのに結構力を使っちゃうんだ。そろそろ限界だからまた今度会おう。それじゃあねー」
ルーチェがそういうと俺の意識はそこで途切れてしまった。
◇
再び目を覚ますと、まだ6時前だった。
「なんだったんだ、今のは」
夢かとも思ったが、しかし記憶ははっきりしている。俺はあのルーチェという神様が言っていたことを忘れないようにメモを取ることにした。俺がメモをとっていると、店長が部屋に入ってきた。
「おはよう松藤」
「おはようございます。こんな朝からどこへ行ってたんですか?」
「ランニングだよランニング。体力ばかりはスキルアップでも増えないっぽいからな。ところでなんで朝からメモなんて取っているんだ?」
「今から信じられないと思うような話をしますけどいいですか?」
それから俺は就寝後、神様に意識を呼び出され高田を説明した。世界がモンスターだらけになってしまった理由やスキルアップについての説明も。
店長は信じられないと最初は言っていたが、俺が説明を続けると納得できる点が多かったのか、話を信じてくれた。
「しかし、神様か。まさかあの日の声が神様だったなんてな」
「しかし、どうします。もし本当だとしたら3週間後、世界はとんでもないことになりますよ」
「早崎のところへ行こう。緊急事態だ。叩き起こしてでも話を聞いてもらう必要がある」
俺たちは廊下を歩いていた隊員に早崎さんの場所を聞き、朝はジムでトレーニングしているということを知ったので、俺たちはジムに急いで向かうことにした。
◇
ジムに着くと、早崎さんはウェイトトレーニングをしている最中だった。
「早崎、緊急事態だ」
俺たちの表情が只事ではないと感じたのだろう。早崎さんはすぐにトレーニングをやめて話を聞いてくれた。
「まさか、本当に?」
「でも、あの日の声の説明もつくだろう。誰も気にしちゃいないようだがな」
「討伐隊の募集は1日でも早い方がいいでしょう。本当に3週間後大型モンスターが現れるのだとしたら、ぐずぐずしてる暇なんかないですよ」
「わかった。あとはまかせてくれないか?」
早崎さんはそう言うと、すぐにジムを出て行ってしまった。
これから先どうなるのか、俺には全く予想もできなかった。
3週間後、大型モンスターが出現するようになるまで、かなり腕を磨かないといけないだろうし、忙しい日々になりそうだ。
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